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ENDURING FREEDOM

テロ後一週間の記録



Second Day (2001/09/13)


 今日オフィスに行っても、当然アメリカのテロの話題で持ち切りでした。ブリスベン市庁の同僚のいとこが、攻撃されて崩壊したニューヨークの「世界貿易センタービル」に勤めていて、今も行方不明だと聞いて、とても心が痛みました。こちらの報道によると、今回のテロによるオーストラリア人の被害状況は、3人の死亡が既に確認されていて、さらに90人あまりが行方不明だそうです。

 アメリカの友人たちからは、「自分は無事だ。お前の家族は大丈夫か」というようなEメールが数えられないほど来ていました。その中には、「不幸にも知り合いがハイジャックされた飛行機に乗っていた」というショッキングな知らせもありました。またある人からは、「今回の恐ろしいテロがあったからといって、イスラム教徒やアラブ社会全体をテロリストのように言うのは全く間違いだ。ほんの一握りの悪党の仕業なのに、イスラム全体が悪だと思い込むのは絶対にいけない」というメールをもらいました。全く同感です。

 ニュースでは、「ホワイト・ハウス」と大統領専用機の「エアフォース・ワン」も標的だったと報道しています。私の妻のオフィスも、私が所属する世銀のオフィスも、ホワイト・ハウスとは目と鼻の先なので、もしそれが本当だったらと思うと恐ろしくなります。こういう時に、ワシントンの家族のそばに居てやれない自分が本当に悔しいんですが、妻が冷静でいてくれるのと、2歳半と1歳の子供たちは、幼くてまだ何も分からないという事実に救われています。



Third Day (2001/09/14)


 どうやらアメリカは、完全に戦争に突入するようです。報道によると、9割以上のアメリカ人が軍事報復を支持しているとのことです。だけど、誰に対して戦争をしかけるのでしょうか。最大の容疑者と目されているオサマ・ビン・ラデンのテロ・グループは、全部で数千人いて、イスラム諸国数十カ国に潜んでいると言われています。一般市民を巻き込まずに、このグループを壊滅させることができれば理想的ですが、そんなことはできるんでしょうか。

 私が今一番怖れているのは、いわゆる西側先進諸国とイスラム諸国との間の全面衝突に発展することです。そうなると、第三次世界大戦ということになり、それだけは絶対に避けなければなりません。仮にラデン氏の仕業だと判明したとして、彼と彼をかくまっているタリバンに対する報復だけで、アメリカは納得するでしょうか。イラクのフセインはどう出てくるでしょうか。最悪の事態にならなければいいのですが。

 あるヨーロッパの閣僚はこの危機におよんで、「ヨーロッパ人は、皆ニューヨーカーになった気分で、アメリカ人と一体化している」と言っていました。自分もワシントニアンの端くれだし、アメリカは娘たちの国でもあるので、今回のテロには激しい憤りを感ぜずにはいられません。ただ、だからと言って戦争突入を支持できるかというと、正直言って複雑な心境です。子供たちのためにどういう未来を残してやれるのか、そのために我々は今何をすべきか、真剣に考えたいと思います。



Fourth Day (2001/09/15)


 アメリカは「祈りと追悼の日」でした。なぜか深夜に目が覚めて、テレビのスイッチを付けると、ワシントンのナショナル大聖堂での追悼礼拝が、ちょうど始まるところでした。イスラム教、ユダヤ教、キリスト教、それぞれの宗教家が次々と演説をし、宗教の壁を越えた礼拝だということを強くアピールしているようでした。ブッシュ大統領はこの大聖堂でのスピーチで、「アメリカは平和を愛する国だ。しかし、これほどに怒らされたら獰猛にならざるをえない。この戦いは敵のやり方で始まったが、我々のやり方で終わらせる」と言い、敵への警告を発しているようでした。その他、中継を見ていて印象に残ったのは、「復讐ではなく、正義をもって応じる」という言葉でした。正義のために、軍事行動やむなしか。



Fifth Day (2001/09/16)


 今回のテロに対して、オーストラリアは「アンザス条約」という、アメリカとの軍事協定を適用することを決めました。これによりオーストラリアは、NATOに続き、アメリカへのあらゆる軍事支援を約束したことになります。ニュースによると、さっそくオーストラリア海軍の戦艦が中東に向かうそうです。

 今回のようなテロが、オーストラリアでも起こりうるのかということが、こちらでは話題になっています。オーストラリアも移民の受け入れにかなり寛容なため(テロリストが外国人とは限りませんが)、テロリストも紛れ込んでいても不思議はないというわけです。実際、前回の世界貿易センター爆弾テロの際に、逮捕された犯人の電話の記録から、オーストラリアへ国際電話をかけていたという事実が判明し、仲間が潜んでいた可能性があるといいます。いかなる国も、テロの被害を受ける可能性がないとは言い切れないのです。日本だって標的になる恐れは十分あります。だからこそ、国際社会が団結してテロに立ち向かわなければならないのです。日本はアメリカの軍事行動への支持を表明したようですが、日本政府としてはどういう行動にでるのでしょうか。湾岸戦争の教訓から学んでいるのか、しっかり見極めたいと思います。



Sixth Day (2001/09/17)


 週末に、ブリスベン市内のモスクに火炎瓶が2本投げ込まれたり、イスラム学校のスクールバスにいたずらがあったりしたそうです。こういった事件を受けてスーリー市長は、「異なる人種や宗教に対する、この種の反社会的行動は絶対に許されない。彼らもわが街の大事なメンバーなんだ」という声明を発表しました。

 先週のテロがイスラム過激派の犯行だという見方が強まる中、善良なイスラム教徒の一般市民にこのような被害が及ぶのは、本当に心が痛みます。テロリストに対する戦争は「イエス」ですが、イスラムやアラブに対する戦争は「ノー」です。それに、多くの人が混同しているようですが、アフガニスタンとタリバンもしっかり区別しないといけません。タリバンとは、イスラム教の教えを自分たちに都合のいいように解釈している一部の狂信者のグループにすぎず、非合法的に現在アフガニスタンの大部分を支配しているだけです。正確に言うと、彼らはアフガニスタンの政府ではないのです。そこのところをしっかりわきまえて置かないと、多くの無実のアフガン人を巻き込むことになります。ただやみくもに、アフガニスタンを爆撃するようなことだけは、あってはなりません。



Seventh Day (2001/09/18)


 あの悲惨な事件から、ちょうど一週間が経ちました。長かったようでもあり、あっという間だったような気もします。ここ数日の「通信」を読み返しても、我ながら一貫性がないような記述が見受けられます。特に、アメリカの軍事報復に関しては、自分なりにまだ頭の整理が出来ていません。結局自分が賛成できるかできないかは、軍事行動の具体的内容によるところが大きいと思います。

 今月の末にワシントンで開催予定だった、世銀とIMFの年次総会が中止になりました。最大の理由は、テロを恐れたというよりも、警備にあたる警察官やその他のセキュリティ担当者に配慮したためと言えるでしょう。この年次総会の際には、大規模な反グローバライゼーションのデモが予定されていたため、ワシントンの警察のみならず、ニューヨークの警察も動員して警備にあたることになっていました。あんなことが起こったので、日夜働いているワシントンとニューヨークの警察官たちをこれ以上酷使できないし、現在の優先順位は、テロに対する警備だということでしょう。この年次総会の中止は、当然の措置だと思います。

 以前も書きましたが、ブリスベンでは10月6日から9日まで、コモンウェルス首脳会議というのが行われます。かつてのイギリスの植民地だった国々を中心に、コモンウェルスを構成する約60ヶ国の大統領や首相が、ここブリスベンに集まります。エリザベス女王も来る予定です。大規模なデモが心配されていますが、こちらの方は今のところ予定通り開催するということです。平和的なデモなら結構ですが、テロの標的にならないことを祈っています。



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