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随筆・ノンフィクション(1)





「判断力」 [NEW]

著者・発行奥村 宏  岩波新書 2004
感動度☆☆実用度☆☆☆
娯楽度ファッション度☆☆☆
感 想この筆者によると、今の日本の混迷状態は、政治家や経営者やジャーナリストや学者に判断力が欠けていることに起因しているとのことです。政治家は自分で判断せずにアメリカに判断を任せ、ジャーナリストや「御用学者」は権力志向で権力にすり寄っていると言うのです。こういう指摘は、かなりの部分で当たっているような気がします。

それでは、どうすれば判断力がつくのでしょうか。この点についても筆者は触れていますが、「新聞などを自分でしっかり考えながら読むこと」とか「他人と論争をすること」など、あたりまえの意見が多かったようです。結局、判断力をつけるには、その個人の人生においてどういう修羅場でどういう判断をしてきたかという経験がモノを言うんでしょうね。いつも他人に判断を任せていたのでは、判断力がつく訳はないのです。優れた判断力を持ったリーダーよ、輩出せよ。



「男の引き際」

著者・発行黒井克行 新潮新書 2004
感動度☆☆☆実用度☆☆☆
娯楽度☆☆☆ファッション度☆☆☆
感 想この本は、スポーツ界、芸能界、ビジネス界、政界などの9人の男の様々な引き際について考察したものです。ボロボロになるまで完全燃焼した野球の江夏と相撲の寺尾、東京地検特捜部から「さわやか福祉財団」に転身した堀田力、惜しまれながらも引退したドリフターズの荒井注などの引き際が描かれています。一番好きだったのは、普賢岳噴火後の島原市復興に奔走した元島原市長・鐘ヶ江氏の引き際でした。鐘ヶ江市長は四期目へ立候補する予定でしたが、思わぬ対立候補が立候補したことで、街を二分する選挙を回避し、復興の空白期間をつくらないために自らの立候補を取りやめたのです。その他1969年のいわゆる「黒い霧事件」で、永久失格としてプロ野球を追放された池永正明の話も興味深かったです。

著者によると、潔い引き際を飾った男たちに共通するのは、「迷いが無いこと」だそうです。引退や転身、早期退職など、長年の自分の持ち場から身を引くことを決めるのは、かなり難しい判断を強いられます。しかし、結局は自分で決めるしかないのです。「登る勇気より下る勇気」と言われるように、タイミングを見極めて、辞めるときはできれば惜しまれて辞めたいものです。さて、僕の引き際はいつになるのだろうか。



「生涯最高の失敗」

著者・発行田中耕一  朝日新聞社 2003
感動度☆☆☆実用度☆☆☆
娯楽度☆☆☆ファッション度☆☆☆☆
感 想「質量分析」でノーベル化学賞を受賞した島津製作所の田中さんの本です。三部構成になっていて、第一部は田中さんが自分の今までの人生について語っています。第二部は「ノーベル化学賞受賞記念講演」の講演録、第三部はその講演に引き続いて行われた山ェ一眞氏との対談になっていますが、この二部と三部は専門的な化学の話が多くて非常に難しい内容でした。田中さんによると、もうこれ以上やさしく「質量分析」について説明できないので、この本を出版することによって講演依頼やマスコミの取材が減って、仕事に専念できるようになればいいと願っているそうです。

それにしても、企業に勤めるエンジニアがノーベル賞を受賞したのは異色ですが、コツコツと地道に実験に取り組んでいた田中さんのような人に脚光が当たるのは他人の僕でも嬉しくなります。田中さんは実験だけでなく、お見合いもコツコツと20回以上を経験し、ようやく今の奥様との結婚に至ったそうです。何事もコツコツと経験を積む。何かを確実に手に入れるには、それに勝る手法はないのかもしれません。



「40歳を過ぎたら、好きなことをやれ!」

著者・発行今泉正顕  三笠書房 2002
感動度実用度☆☆☆
娯楽度ファッション度
感 想成田空港の本屋で目に付いたので、つい買ってしまった本です。僕も40歳になったので、題名に惹かれてしまったという訳です。飛行機の中で読んでしまいましたが、はっきり言ってこの本を読むにはちょっと早すぎたと感じました。「老人」より「朗人」になれとか、老後の養生訓とかが載っていて、「おいおい、僕はまだそんな年じゃないぜ」というのが率直な気持ちです。題名にある「好きなことをやれ」という話よりも、「老後に備えよ」という話のほうが多かったような気がします。でも「備え有れば憂いなし」ということで、40代から老後への備えを始めた方がいいのかもしれませんね。この本に出てきた「40代から人間的魅力を高める心構え」というのを、以下に少し引用しておきます。

「春風をもって人に接す」
「肩書きでつきあうのをやめる」
「吾以外皆師也〜上の世代からも学び、下の世代からも学ぶ」
「些事ゆるがせにすべからず」
「自己観照を忘れるな」
「バランス感覚〜海のことだけではなく、山のことも考える」



「怒りのブレイクスルー」

著者・発行中村修二  集英社 2001
感動度☆☆実用度☆☆
娯楽度☆☆ファッション度☆☆☆
感 想世界で初めて「青色LED(発光ダイオード)」の開発というブレイクスルーを成し遂げ、「21世紀の天才」、「日本のエジソン」などと呼ばれる中村修二氏(現カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)の書き下ろしです。自らを「世間知らずの変人」と呼び、趣味は「考えること」、成功の秘訣は「孤独と集中」と言うだけあって、ちょっとクセの強い本です。「百人の秀才より、ひとりの天才を生む教育を」という訴えには共感しますが、できれば「孤独の天才より、理解される天才」であって欲しいと思いました。それとこの本は、彼がアメリカの大学で教鞭をとるようになってから一年くらいで書かれていますが、アメリカを賞賛し日本をこき下ろす彼の記述は、ワシントンに8年近く住んでいた僕から見れば、かなり「バランス感覚」に欠けるように感じました。まあ、天才とはそういうものなのでしょうか。



「単独発言」

著者・発行辺見 庸  角川書店 2001
感動度☆☆☆実用度☆☆
娯楽度☆☆☆ファッション度☆☆☆☆
感 想ご存知、「もの食う人びと」でノンフィクション大賞を受賞した辺見氏の最近の発言集です。「私はブッシュの敵である」という帯につられて、成田空港の本屋で買ってしまいました。ブッシュのアフガン報復攻撃の裏には「人種差別」があるとし、かくも多くの国々がこの報復攻撃を支持していることに疑問と不満を投げ掛けています。「米国の側につくのか、テロリストの側につくのか」というブッシュの問いに対しては、「今こそ国家ではなく、爆弾の下にいる人間の側に立たなければならない」と、威力ある言葉の武器で真っ向勝負を挑んでいます。後半は、国家による情報統制や死刑制度に話題を移しますが、終始一貫して「国家による暴力」へ警笛を鳴らしています。「メディアが絶賛するような政権ができても、必ず悪口を書く。それが私のような作家の責務だし、表現者の根性というものだ」というスタンス、かなりシビレます。こういう物書き、絶対に必要ですよね。その根性をずっと忘れないでほしいです。



「出発点」

著者・発行大橋巨泉  講談社文庫 2001
感動度☆☆実用度☆☆☆
娯楽度☆☆☆ファッション度☆☆
感 想成田空港の本屋で目に付いたので、つい買ってしまいました。民主党から参議院議員に当選したばかりの、自称「反権力者」のエッセイ集です。4〜5年ほど前に週刊誌に連載していたものを編集したようです。だからちょっと新鮮さに欠け、期待はずれでした。ただ、夏はカナダのバンクーバー、冬はオーストラリアのゴールドコーストに暮らすという巨泉のセミ・リタイア生活は、理想の老後として参考にしたいです。50歳を過ぎたら健康第一で、「転ぶな、風邪ひくな、義理を欠け」という教えも、是非将来実践したいですね。本の後半は、ゴルフの話題が多いので、ゴルフをやらない私には退屈でした。さて参議院議員として、優雅なセミ・リタイア生活と健康第一主義を捨ててまで、国政に打って出た巨泉の行動に注目です。私自身、民主党には一時期大変期待していたのですが、最近はかなり見放しています。



「龍平の現在(いま)」

著者・発行川田龍平  三省堂 1996
感動度☆☆☆☆☆実用度☆☆☆
娯楽度☆☆ファッション度☆☆
感 想ご存知、東京HIV訴訟原告の川田龍平さんの闘いの記録です。結婚前(確か5年くらい前)に、妻に薦められて読みました。この本は、「社会を変えるのは、政治や行政の主導のみでなく、マスコミや一般人を巻き込んだ市民運動こそが重要であり、その市民運動のうねりを起こすのは、ほんの一握りの人々の強い意志である」ということを僕に教えてくれた本です。責任ある市民として、自分でも何かできることはないかと、常に問い掛けるきっかけを与えてくれた本でもあります。



「MADE IN JAPAN」

著者・発行盛田昭夫  朝日文庫 1990
感動度☆☆☆☆実用度☆☆☆☆
娯楽度☆☆ファッション度☆☆
感 想これも大分前に読んだ、ご存知ソニーの盛田氏の本です。オリジナルは英語で書かれ、世界30ヶ国で読まれたそうです。そういえば、バングラデシュの本屋でも、この本の英語版を見つけたことがあります。盛田氏は、ソニーの海外進出の経験から、日米の経営理念の違いを詳細に分析し、遠慮なくストレートに綴っています。「ビジネスを成功させるのは、理論でもなければ計画でもなく、ましてや政府の政策でもない。それは人間なのだ」、「リスクを承知で社員を雇うからには、彼らを雇用し続ける責任が経営者側にはあると思う」、「人間とともに仕事をするには、理論より理解を優先させるべき」、などなど名言が盛りだくさんです。私の経験からもアメリカ式経営は、しばしば合理的すぎて、社員を単なる労働力としてみる傾向があると思います。盛田氏の言うように、人間として扱ってほしいですよね。



「デモクラシーの論じ方」

著者・発行杉田 敦  ちくま新書 2001
感動度☆☆☆実用度☆☆☆☆
娯楽度☆☆☆ファッション度☆☆☆
感 想「日本の民主主義はアメリカに押し付けられたもので、国民自らが勝ち取ったものではないために、日本には民主主義が根付かないのだ」、とよく言われますよね。理由はともかく、私も日本の民主主義が未熟であり、さらに一層の「民主主義の民主化」を進める必要性を、最近とみに感じています。という訳で、この本読んでみました。「議会に集約される以外に、人々の多様な議論や活動が行われている時にだけ、デモクラシーは生きている」という言葉通り、デモクラシーの様々な問題点を様々な切り口から、A氏とB氏が議論するという対話形式の珍しい本です。そういう意味では、内容ばかりでなく、形式もとてもデモクラティックな本です。ただ、議論ばかりで、結論が出ていないため、ちょっとフラストレーションが溜まるかもしれません。多くの場合、私の意見はA氏のそれに近いような気がしました。たまたま、ネット上で見つけた本ですが、結構おすすめですよ。


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