フロントページ慶長の本棚過去の本棚>ノンフィクション
慶長の本棚

随筆・ノンフィクション(2)





「八戸の安藤昌益」

著者・発行稲葉克夫  八戸市・八戸の歴史双書 2002
感動度☆☆☆実用度☆☆
娯楽度☆☆ファッション度☆☆☆
感 想今年の夏休みに訪れた故郷八戸の本屋で買った本です。ようやく読み終えましたが、学術的な記述や古文的な表現が多くて、僕にとっては難しすぎました。安藤昌益は、秋田で生まれ八戸で花を咲かせた偉大な故郷の先人です。医者そして思想化として、エコロジーや男女平等など、当時としては極めて先駆的な発想の持ち主でありました。印象に残ったのは、「直耕」という昌益独自の概念です。これは、「最も人間的な生き方とは、直接生産者である『直耕の衆人』の勤労生活である」という考え方です。ここで「直耕」とは農耕作業を典型としますが、広く社会的に有用な労働行為全般を意味するそうです。昌益に言わせると、これと対極にある諸悪の根源が「不耕貪食」の権力者です。何か、今の時代に通じるところがありますね。日本の政治屋どもに聞かせてやりたいです。さて、安藤昌益は元禄16年(1703年)の生まれというから、来年の2003年でちょうど生誕三百年ということになります。八戸では何か記念イベントでもあるんでしょうか。是非何かやってほしいですね。



「忘れられない女(ひと)」

著者・発行金 賢姫  文春文庫 1997
感動度☆☆☆☆実用度☆☆
娯楽度☆☆ファッション度☆☆☆
感 想「李恩恵先生との二十ヶ月」という副題がついているこの本は、僕の妻が数年前に読んだものだそうで、家の本棚に眠っていました。大韓航空機爆破事件の実行犯で元死刑囚の金賢姫が、日本人化教育の先生であった李恩恵こと田口八重子さんとの思い出を綴った手記です。北朝鮮に拉致された田口さんが、絶望の中でも何とか生きようとする姿勢が金賢姫の目を通して描かれていて、言葉にはできない怒りと悲しみを覚えます。生存者の帰国など、北朝鮮による日本人拉致事件の新たな展開がある一方、李恩恵こと田口八重子さんは死亡したと伝えられました。それが偽りであり、何とか生きていてほしいと祈らずにはいられません。金賢姫によると、拉致被害者は日本人ばかりでなく、数多くの外国人たちがいて、彼らは北朝鮮で苦痛の日々を送っているといいます。金賢姫は、「北朝鮮の非人間的な蛮行が白日の下にさらされ、一日も早く彼らが救援されることを期待している。第二、第三の李恩恵が出てこないように、私達はこの問題の解決に向けてともに闘わなければならない」と述べています。



「連戦連敗」

著者・発行安藤忠雄  東京大学出版会 2001
感動度☆☆☆実用度☆☆☆
娯楽度☆☆ファッション度☆☆☆
感 想日本が生んだ世界的建築家・安藤氏の東大大学院建築学科での講義録です。安藤氏の作品だけでなく、世界中の著名な建築家の作品が講義の題材となっています。大学院の講義だけあって建築の技術的な記述は結構難しかったですが、建築と都市、建築と環境問題などのテーマは僕の専門とも重なる部分が多いので勉強になりました。世界中の設計コンペで連敗をしながらも、敗戦の中からも何かを学びとって再び次の闘いに挑むという安藤氏の姿勢は、見習うべきものがあります。設計する際には実際に必ず現地に足を運び、現場の立地条件や周辺環境、社会風土を熟知するという彼の徹底した現場主義の精神も、参考にしたいと思います。「旅こそが唯一の教師」、「自分の進むべき道は自分で見つけるしかない」、「厳しくともやっていくという強い意志を持て」と学生達へのメッセージもたくさん出てきます。ちなみに、安藤氏の最も気に入っている言葉は、大建築家ルイス・カーンの「創造とは逆境の中でこそ見出されるもの」だそうです。



「日本人の苗字」

著者・発行丹羽基二  光文社新書 2002
感動度☆☆実用度☆☆☆
娯楽度☆☆ファッション度☆☆☆
感 想この本は、日本人のいろいろな苗字の由来などを研究した本です。「30万姓の調査から見えたこと」という副題がついており、日本にはおよそ30万の苗字があるということです。さて、何故この本を買ったかというと、「慶長」という自分の苗字の由来が分かるかもしれないと思ったからです。いつ出てくるか、いつ出てくるかと目を凝らして読み進みましたが、結局、「慶長」という苗字は出てきませんでした。がっかり。この前電話帳で調べたら、「慶長」という苗字は故郷の青森県八戸市に60軒くらいありました。八戸には「長慶天皇」ゆかりの国宝なども残っているので、その天皇にあやかった苗字なのかもしれないという噂もあります。まあ、今は思いっきり平民ですが。

この本によると、日本の苗字の八割くらいは、地名から起こったものなんだそうです。だから、「田」や「川」や「山」のつく苗字が多いんですね。本書に出てくる長い苗字をいくつか紹介すると、「左衛門三郎(さえもんさぶろう)」、「次五右衛門(じごえもん)」、「八月一日宮(ほずのみや・ほずみや)」、「十二月朔日(しわすだ)」なんていう苗字が実際にあるそうです。ちなみに、フィギュア・スケートの村主章枝(すぐり・ふみえ)さんの「村主」というのは古代からの古い苗字で、元々は渡来人グループの長を表していたそうです。



「日本村100人の仲間たち」

著者・発行吉田 浩  日本文芸社 2002
感動度☆☆実用度☆☆☆
娯楽度☆☆☆ファッション度☆☆☆☆
感 想成田空港の本屋でたまたま見つけたんですが、この本は「世界がもし100人の村だったら」の日本版です。日本がもし100人の村だったら、「カラーテレビは99人の家にあります」とか、「携帯電話は75人が持っています」とか、「パソコンは50人が持っています」とかとか、副題の通りに「統計データで読み解く日本のホントの姿」がうかがえます。携帯電話やパソコンって、そんなに普及しているんですね。驚きです。面白かったのは、「村人の8割はライオンの髪型をした村長さんが大好きですが、村の有力者たちは村長さんの言うことを聞きません」という記述です。この本が出版された時は、ライオン村長さんも8割の支持率だったんでしょうが、最近は5割くらいですかね。

実はこの本を見つけて、ちょっと悔しい思いをしました。「世界がもし100人の村だったら」という本を読み終えてから、そのうちに時間を見つけて統計データを調べ、「日本がもし100人の村だったら」というのを自分なりに書いてHPで公表しようと本気で思っていたからです。同じ事を考える人はいるもんですね。こうなったら、「オーストラリアがもし100人の村だったら」っていうのを書いてみようかな。



「ルネッサンス〜再生への挑戦」

著者・発行カルロス・ゴーン  ダイヤモンド社 2001
感動度☆☆☆実用度☆☆☆
娯楽度☆☆☆ファッション度☆☆☆☆
感 想ベストセラーになっているという日産の社長兼CEO、カルロス・ゴーン氏の書き下ろしです。彼の生い立ちから、経営のプロとしてのミシュラン、ルノー、日産での仕事振りが窺える作品です。読んでいると、「クロス・ファンクショナル」と「優先順位」という二つのキーワードが頻繁に出てくることに気づきます。要するに、企業が危機に瀕している時には、明確な優先順位を設定し、部署ごとの縦割りではなく分野横断的なアプローチが必要だということでしょう。このことは、何も企業経営だけではなく、国の運営や自治体の経営にも当てはまりそうです。ゴーン氏はフランス国籍を持つブラジル生まれのレバノン系だということですが、ビジネスにおける彼の成功の秘訣は、こうした異文化体験にも基づいているような気がします。ともあれ、国籍にかかわらず、ゴーン氏のようなプロ中のプロを日本の企業ももっと抜擢するべきでしょうね。できれば政府の閣僚ポスト等にも、こういう人を抜擢して欲しいです。最後にこの本からの引用をひとつ。「神は人間に耳を二つ与えたが、口は一つだけしか与えなかった。」つまり、人の話を聞くことに、話すことの倍の時間をかけろという意味だそうです。



「言(ことだま)霊」

著者・発行井沢元彦  祥伝社 1995
感動度☆☆実用度☆☆☆
娯楽度☆☆☆☆ファッション度☆☆
感 想これまたKAZUさんにお借りした本です。「なぜ日本に、本当の自由がないのか」という副題がついていて、その答えとして、「それは日本人が『かく言えば、かくなる』という言霊信仰に縛られているからだ」という井沢氏の説が展開されています。「言霊」をキーワードにしながら、日本史や現代社会の様々な問題を論じていて、読み物としては非常に面白かったです。言霊信仰の世界では、「雨が降れ」と言って本当に雨が降ったら、「お前が変なことを言うから、雨が降ったじゃないか」と非難されるというのです。「この会社は倒産する」というような不愉快な予測は受け入れられないので、会社を救うための対策が真剣に議論されない。そういう社会では言論の自由が存在せず、従って民主主義もあり得ないという訳です。

読み終えて何故かスッキリしない後味の悪さが多少残りました。というのは、どうもそういう日本の問題が、言霊信仰だけに支配されているとは思えない(思いたくない)からです。もしかしたら、僕もこの言霊の魔力に気づいていないだけかもしれませんが...。でも、「雨が降れ」と言って本当に雨が降ったくらいで本気で人を非難するのは、よっぽどの変人だけですよね。普通の日本人は、それくらいで非難したり非難されたりしないと思いますよ。


過去の本棚(ジャンル別一覧)を見る



Local & Global〜地方公務員から転身した国際公務員のサイト
( http://www.keicho.com )