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スポーツ(1)





「野球は言葉のスポーツ」 [NEW]

著者・発行伊東一雄・馬立 勝  中公文庫 2002
感動度☆☆☆☆実用度☆☆☆
娯楽度☆☆☆☆ファッション度☆☆☆
感 想この本は、1991年に中公新書から出版された「野球は言葉のスポーツ」の改訂・復活版です。実は、もう10年近くこの本を探していたのですが、最近たまたまこの復活版の存在を知り、アマゾンで取り寄せたのです。そのため、この本を手にしたときは、長い片思いが実ったような気持ちになりました。内容も、期待通りでした。

この本は、メジャー・リーグを題材にした、名言や迷言の宝庫です。選手や、監督、審判、記者、球団経営者、さらにはアメリカ大統領までが、野球に対して気の利いた一言を発しています。「(野球で)最も面白いのは8対7の試合だ」というよく知られた言葉は、元々ルーズベルト大統領の言葉だったということも、この本で知りました。そういう名言の紹介と共に、メジャー・リーグの数々の歴史や多くのエピソードが掲載されていて、かなり勉強にもなりますよ。野球好きには本当にたまらない一冊です。



「文武両道、日本になし」

著者・発行マーティ・キーナート  早川書房 2003
感動度☆☆☆実用度☆☆☆
娯楽度☆☆☆☆ファッション度☆☆☆☆
感 想なかなか挑発的なタイトルですが、「世界の秀才アスリートと日本のド根性スポーツマン」という副題も付いています。著者は日本在住のアメリカ人スポーツ・ジャーナリストですが、この本は日本のスポーツ界、教育界の問題点を鋭く突いた好著です。キーナート氏がこの本を書くきっかけになったのは、「海外では、一流のスポーツ選手から医者や弁護士に転身した『秀才アスリート』が数多く存在するのに、なぜ日本には一人もいないのか」という疑問でした。彼は、「その理由は、日本というシステムが子供達の『文武両道』の芽を摘み取ってしまっているからだ」と言うのです。

キーナート氏の言う「文武両道」とは、甲子園に出て東大に入ったというようなレベルのことではありません。オリンピックでメダルを獲ったり、プロの一線級で活躍しながら、医師や弁護士のように学位を必要とする知的専門職に就いている人のことです。この本にはそういうスーパー人間がたくさん出てきます。少し例を挙げると、かつて広島カープで活躍し外科医になったゲイル・ホプキンス氏(アメリカ人)、神戸製鋼のラガーマンから弁護士になったイアン・ウィリアムズ氏(オーストラリア人)、スピードスケートの金メダリストで医師かつ人道活動家のヨハン・オラフ・コス氏(ノルウェー人)などなどです。

でも、この本に出てくる人の中で僕が一番凄いと思ったのは、ビル・ブラッドリー氏です。彼は東京オリンピックで金メダルを獲得したアメリカのバスケットボール・チームのキャプテンで、オリンピックの後はNBAからの誘いを蹴って英国オックスフォード大学に留学しました。そこで二つの修士号を取得した後アメリカに戻り、NBAのスター選手になったのです。引退後はアメリカの上院議員に選ばれ、かつ三つの有名大学で教鞭をとっていたそうです。ちなみにこのブラッドリー氏は、2000年の大統領選挙の民主党予備選でゴア氏に敗れました。

日本人でも、松井やイチローがメジャー・リーグを引退したあと、あるいはサッカーの中田が引退したあと学位を取り直して医者や弁護士になるなんて、そんな時代はやってくるんでしょうか。長谷川滋利あたりは、何かやってくれそうな気もしますけど。



「イエロー・サブマリン」

著者・発行山際淳司  小学館文庫 1992
感動度☆☆☆☆実用度☆☆
娯楽度☆☆☆☆ファッション度☆☆☆☆
感 想山際淳司の爽やかな野球小説です。「サブマリン」とは野球では下手投げ投手のことなので、「イエロー・サブマリン」という題名は「日本人の下手投げ投手」という意味です。高校を出たばかりの下手投げ投手が単身渡米し、マイナー・リーグから這い上がってメジャーを目指すという僕好みの内容です。この小説は1992年に産経新聞で連載されていたんだそうです。1992年というとまだ野茂が渡米する前ですから、山際氏の先見の明には恐れ入ります。この本の主人公は、野茂というよりマック鈴木のメジャー入りの経緯にとても似ているような気がします。もしかしたら、マックはこの連載を読んでいたのかもしれませんね。

この本に出てきた勇気をもらえる言葉を少し引用しておきます。
「チャンスはいくらでも、どこにでもあるものだ。あとはそれを自分の手で掴もうとするか、否か。それだけだ。」
「この国(アメリカ)はチャンスをものにした人間たちがつくりあげてきた。どんな人種であれ、努力すれば報われる。」



「敗因の研究」

著者・発行日本経済新聞運動部  日本経済新聞社 1999
感動度☆☆☆☆実用度☆☆☆☆
娯楽度☆☆☆ファッション度☆☆☆
感 想題名のとおり、敗れたスポーツ選手への取材からその敗因を求めようという、なかなかの本でした。日本スケート界初の金メダルと期待されながら惨敗に終わった、サラエボ五輪の黒岩彰や、リレハンメル五輪で団体金メダル確実と思われながら、「世紀の大失敗ジャンプ」で足を引っ張ったスキージャンプの原田雅彦など、数々の「敗北のドラマ」が描かれています。「敗れた事実を真摯に認め、その分析とともに自らを鼓舞して再構築する」姿勢は、スポーツばかりではなく、人生そのものにとって必要なんだと思います。黒岩はカルガリーで銅メダル、原田も長野で団体金メダルと、それぞれ名誉を挽回したのも、きちんとした「敗因の分析」があったからこそでしょう。ちなみに私は、昔よく、この黒岩彰に似ていると言われていました。



「熱球」

著者・発行重松 清  徳間書店 2002
感動度☆☆☆☆☆実用度☆☆☆
娯楽度☆☆☆☆ファッション度☆☆☆☆
感 想久々に「いい小説だなあ〜」と思える本でした。重松氏は、「現代の家族の姿を描くこと」を大きなテーマにしているということで、数年前に直木賞を受賞した「ビタミンF」を読んだ時も、「いい味を出してるなあ」と思いました。で、この「熱球」もお薦めです。母を亡くした主人公は、年老いた父が一人で暮らす故郷に、都会での仕事を辞めて娘と二人で戻ってきます。田舎町の故郷では仕事もなく、母校野球部のコーチをします。妻は、ボストンに留学中でメール家族。そんな家族の暮らしを、ユーモアと感動を織り交ぜながら綴っています。優柔不断な主人公、故郷に残した年老いた親、そして余りにも無口な父、とても論理的で時々厳しいけど、本当はとても理解のある妻、一人前の口をきく娘など、主人公が38歳で同年齢ということも手伝って、何か、まるで僕自身のことのように、この「熱球」にのめり込んでしまいました。「家族って何?」、「故郷って何?」ということを改めて考えさせられる名作です。



「悪魔のパス 天使のゴール」

著者・発行村上 龍  幻冬舎 2002
感動度☆☆☆実用度☆☆
娯楽度☆☆☆☆ファッション度☆☆☆☆☆
感 想W杯開催中の今が旬、村上龍のサッカー小説です。いろんな人の野球小説は今までに何度も読みましたが、サッカーを題材にした小説はこれが初めてでした。イタリアのセリエAで活躍する夜羽冬次(やはねとうじ)という日本選手が出てきますが、これは明らかに中田英寿をモデルにしていますね。著者は「あとがき」で、「夜羽冬次と中田英寿は、サッカーがうまいところと野菜が嫌いなところ以外は全然別です」と一応断わってはいますけど。

さてストーリーは、ヨーロッパ各国のサッカー・リーグで、EU以外の出身選手が薬物で次々に殺されるというスリリングな内容です。この「アンギオン」という薬物は、運動能力を極度に高めるが、試合後に死ぬ怖れがあるという危ないものです。この薬で夜羽冬次が狙われるかもしれないという展開ですが、結末はここに書かないほうがいいでしょう。夜羽冬次が所属する「メレーニア」と「ユヴェントス」の最後の一試合の模様に約100ページを費やし、選手の動きなども詳細に書かれています。好きな人には、これぞサッカー小説の醍醐味といったところかもしれませんが、「サッカーより野球」の僕にとってはちょっと退屈な試合の描写でした。だって、「左サイドからゴール前にクロスが上がった」と言われても、どっちからボールが飛んできたのか、今ひとつビジュアル的にイメージできません。こういう場合、どっちから見て左なんでしょうか?これが野球なら、「打球は右中間真っ二つ」と言われれば、「ああ打球はあのあたりに飛んだのか」とすぐさまイメージが浮かんできます。これを機会にもうちょっとサッカーも勉強しようかな...。



「球は転々宇宙間」

著者・発行赤瀬川隼  文春文庫 1984
感動度☆☆☆☆実用度☆☆☆☆
娯楽度☆☆☆☆☆ファッション度☆☆☆
感 想これもかなり前に読んだ本ですが、最近読み返してみてもやはり面白かったです。「野球」と「地方の時代」という私の好きな二つのテーマを扱っているので、面白くないはずがないのです。「異相の主は、管理社会ののっぺらとした地肌からニキビのように吹き出ている活力だ。今こそ、空疎なスローガンより実行を。そして、異相の怪童よ輩出せよ」、という異色記者の文章に刺激されたコミッショナーが、プロ野球を企業から市民に取り戻すために大改革を断行するという話です。現在のJリーグの理念とも通じる改革なのですが、この本はJリーグ発足よりかなり前に書かれています。大リーグ人気におされがちな、今の日本のプロ野球の改革にも大いに参考になると思います。こんなコミッショナー出てきませんかねえ。解説者の言葉を借りると、「走者一掃の三塁打的後味さわやか」な野球小説です。なお、吉川英治文学新人賞受賞作だそうです。



「適者生存」

著者・発行長谷川滋利  ぴあ 2000
感動度☆☆☆実用度☆☆☆☆
娯楽度☆☆☆ファッション度☆☆☆
感 想エンジェルスのメジャーリーガー・長谷川投手の本です。派手さはないが、メジャーリーグの日本人投手の中で、一番コンスタントに結果を出しているのは、この長谷川ではないかと私は思っています。この本には、そこんところの秘密がいっぱい詰まっています。「超一流にはなれなくとも、長く一流であり続けることはできる」、「新しい環境で生き残るには、常に周りに自分を適応させる適者でなければならない」などなど、ベースボールだけではなく、日常の仕事や生活にも参考になることが書かれていると思います。セット・アッパーという重要な役割を、日本の野球界に広めたのも、長谷川投手の功績が大きいと思います。通訳がいらない程英語ができるという彼には、是非将来は、メジャーリーグ初の日本人監督を目指してもらいたいものです。


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