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BRISBANE 通信(October 2001)



緊張のフライト (2001/10/01)


 毎年何十回と乗っている飛行機ですが、今回ブリスベンからワシントンに来るフライトは、あんな事件があった後だけにやはり緊張しました。ブリスベンから成田へのJALも、成田からワシントンへのANAも、機中で「この飛行機がハイジャックにあったら、自分はどういう行動をすればいいのか」と、ついつい考えてしまいました。それぞれ成田とワシントンに何事もなく着陸した時には、かなりホッとしました。

 飛行機でこんなに緊張したのは、いつ以来でしょうか。そう、あれは4〜5年前です。出張先のパキスタンのカラチ空港から、確か中東のドゥバイかアブダビへのガルフ航空の便でした。もう離陸も間近で、機体のドアが閉まる寸前でした。ちょうど私の真後ろに座っていたアラブ人が、突如するするとドアから逃げ出してしまったのです。それからが大変でした。もしかしたら、爆弾でも仕掛けて逃げたのかもしれないということで、機内はかなりパニックになりました。乗客は自分の荷物を再度確認するように言われ、乗員は、座席の下やらキャビンの中やら不審物を探しました。結局何も見つからなかったということで、飛行機は2時間遅れで離陸したのですが、あの時は本当に着陸するまでずうっと緊張していました。

 パキスタン航空に初めて乗ったときも、強烈な印象がありました。まず離陸前には、アラーの神へのお祈りがあります。そして着陸前のアナウンスは、「当機はまもなくイスラマバード国際空港に着陸します。インシャアラー」、とこんな感じです。「インシャアラー」とは、イスラム教徒が非常によく使う言葉で、「アラーの神のご加護があれば」という意味です。だから例のアナウンスは、「アラーの神のご加護があれば、当機は着陸します」という意味です。これを聞くと、無事に着陸してほしいので、アラーの神がご機嫌を損ねないようにと、にわかイスラム教徒になって祈らざるを得ない心境になります。



コモンウェルス首脳会議も中止 (2001/10/04)


 ブリスベンで10月6日から9日まで行われる予定だった、「コモンウェルス首脳会議」も中止になりました。僕がブリスベンを発った先週の金曜日の段階では、まだ開催すると言っていたのに、直前になっての中止決定です。この会議は、イギリスの旧植民地諸国を中心に、コモンウェルスを構成する約60ヶ国の首相や大統領が一同に会する首脳会議だったのですが、やはりアメリカで起こったテロの影響は避けられなかったようです。テロの標的になるのを恐れたということもありますが、それよりも、現在の各国首脳の優先事項はテロ対策で、米軍の軍事行動がいつ始まるかわからないこの時期に、自国を留守にできないということのようです。イギリスのブレア首相が参加しないのであれば、もし開催されたとしても、首脳会議自体は形骸化してしまったでしょう。

 これで、先週末に予定されていたワシントンでの世銀・IMFの年次総会に続いての中止です。来年早々にせまったソルトレークの冬季五輪は大丈夫でしょうか。それにしても、このような大きな会議の直前になっての中止は、ホテルや関連業者にとって、大きな痛手のようです。各国首脳は、ホテルのキャンセル料とか払うんでしょうか。今週末のブリスベンは、どこもホテルが安いかもしれませんよ。



総選挙は11月10日 (2001/10/06)


 オーストラリアの総選挙の日程が11月10日に決まりました。下院150議席全議席と、上院76議席のうち半数が争われるそうです。ハワード首相率いる与党連合(自由党+国民党)に、野党・労働党が挑みます。今のところの評判では、最近のアフガン難民のオーストラリアへの寄港を断固として拒否したことや、アメリカのテロ事件後、集団自衛権を謳ったアンザス条約を迅速に発効させたことなどでリーダーシップを発揮した、ハワード首相の人気が高まっていると言われています。これに対し労働党は、経済や雇用など国内問題に有権者の目を向けさせようとしているようです。ご存知のように、オーストラリアは選挙での投票が義務であるため、棄権者には罰金が課せられます。そのため投票率は、常に百パーセントに近いそうです。私がオーストラリアに来て初めての選挙になるので、いろいろ注目してみたいと思います。ちなみに、ブリスベンのスーリー市長、クイーンズランド州のビーティ知事ともに労働党所属です。国政と地方のねじれ現象が起きている形ですが、ブリスベンは労働党が強いのかもしれませんね。



ブリスベンに無事戻りました (2001/10/10)


 ワシントンから先ほどブリスベンに戻りました。戦争が勃発した中で、飛行機に乗るのもちょっとイヤな感じでしたが、それ以上に、こんな時に家族をワシントンに残してくるなんて、それこそ後ろ髪を引かれる思いでした。今回の9泊10日という短いワシントン滞在は、いわば緊急一時帰国でした。世界中のいろんな機関に出向している世銀の正規職員の中で、家族と離れ離れなのは僕だけだそうです(単身赴任なんて、やはり日本人の発想なんでしょうか)。そこであんなテロがあったので、世銀側が心配してくれて、少しでも家族と一緒にいられるようにと旅費を出してくれたのです。当然、ブリスベン市庁側の暖かい理解があってこそのことです。あらためて関係者に感謝したいと思います。

 ワシントンからの帰路は、ダレス国際空港、成田空港ともセキュリティ・チェックが厳しくなくて心配になりました。特にダレスはずさんでした。ゲートに入る前に、「手持ちのラップトップは、手荷物のX線検査の際に起動してください」と言われたのですが、X線検査のところでは何も言われずスルーパスでした。迷彩服の軍人さんが銃を持って睨みをきかせていただけでした。このX線検査というのは、どうも改善の余地がかなりあるような気がします。結局、X線に映し出された物を人が目で判断するので、人的ミスが起こる可能性はかなり高いでしょう。それ以上に、特にアメリカの空港は、どうも真面目に検査をしているX線検査員が少ないような気がします。彼らは飛行機に乗らないので、たとえ飛行機がハイジャックに遭っても自分の命には影響がないからと考えるのは穿ち過ぎでしょうか。できれば、実際に飛行機に乗る人にX線検査の荷物チェックをやってもらえば、危険物を探す真剣さが増すのではないでしょうか。成田空港のセキュリティ・チェックは、テロが起こる前の通常と何ら変わりのないものでした。往路で経験した、手荷物の2度にわたるX線検査や、搭乗口での抜き打ち荷物検査はありませんでした。あれは、アメリカ行きの飛行機だったからだそうです。テロの標的は、アメリカだけではないと思うのですが。とにかく、ダレスも成田も、もう少しセキュリティをしっかりするべきだと思いました。

 話は変わりますが、ワシントン・成田間のANAでも、成田・ブリスベン間のJALでも、カップ麺のうどんを食べました。味はイマイチでしたが、それぞれネーミングが面白いので紹介します。ANAの方は「とびっきり・おうどん」で、JALの方は「うどんですかい(うどん de SKY)」でした。個人的には、JALのネーミングの方が好きです。



夏風邪 (2001/10/11)


 ブリスベン市のプールは、10月9日がプール開きだったそうです。ということで、そろそろ夏本番といった感じのブリスベンですが、私は風邪をひいてしまいました。実は、ワシントンから成田に向かうANAの中で発熱したので、これはブリスベン風邪ではなくて、ワシントン風邪です。ANAの機内でスチュワーデスさんに「バファリン」をもらって以来、熱が下がったり上がったりを繰り返しています。そうそう仕事を休んでばかりいられないので、今日はオフィスに行きましたが、明日はどうしようかな。



病は気からストレスから (2001/10/15)


 金・土・日に渡って、激しい頭痛と嘔吐を伴う高熱に一人もがき苦しんでいました。どうやら単なる風邪などではなかったようです。土曜日にブリスベンで初めて病院に行ったのですが、予約をしてその時間に行ったのに、1時間も待たされ、その揚句は問診と薬の処方だけでした。聴診器も当てず、熱も計らず、扁桃腺も見ないなんて、ちょっと不思議でした。そのお医者さんいわく、咳や鼻水がないのでインフルエンザではないだろうし、嘔吐があっても下痢がないので食中毒でもないだろうということで、結局病気の原因はわからずじまいでした。よっぽど、解熱注射の一本でも打ってくれれば楽になるのになあと思いました。私が思うに、どうやらこの病気は9月11日以来のストレスに原因があるような気がします。それと、強行軍でワシントンに行って帰って来た疲労と、時差ボケによる睡眠不足、片道合計約23時間という長時間フライトでの緊張が重なっての発病だったのではないでしょうか。そういえば、ワシントン・ポストにも、あのテロ事件以来、ストレスから病気になる人が多いと出ていました。今日は比較的気分も良く、大分快復しましたが、全快までにはあと1日か2日かかりそうです。全快後はストレスに負けない身体にするために、もう一度鍛えなおそうと思います。それにつけても、にっくきはテロリストなり。



党首ディベート (2001/10/16)


 オーストラリアは、11月10日の総選挙に向けた選挙キャンペーン期間に突入しました。日曜の夜、自由党党首で現首相のハワード氏と、野党労働党党首のビーズリー氏の、党首同士のディベートがありました。ちなみに今回の選挙戦でのこの二人のディベートは、この一回限りの予定だそうです。

 このハワード首相とビーズリー氏は、見た目が実に好対照です。ハワード氏は、綺麗に禿げあがった頭が印象的で、眼鏡をかけたいいお爺ちゃんという感じです。一方、ビーズリー氏の方は、頭はロマンス・グレー、体格はプロレスラーのようにガッチリしていて、60代前半のハワード首相より大分若い感じです。政治以外なら、まずほとんどの場合でビーズリー氏の勝ちでしょう。

 以前も書きましたが、最近は、不法移民に対する断固とした態度を貫いたハワード首相の人気が上がっていて、政権交代はないのではないか、というのがもっぱらの見方でした。しかし、日曜のディベートでは、ビーズリー党首の健闘が光りました。実績を強調するのみのハワード首相に対して、ビーズリー氏は、教育や国境警備、さらにはアボリジニとの和解問題などに関するハワード政権の政策のミスをデーターを交えて鋭く指摘し、労働党政権ならどのように変えるかを根気よく語っていました。最後にコーディネーターが、「もう一度投票日前にディベートをやりませんか」と仕向けたところ、ビーズリー氏は「もちろんやりましょう」と即答したのに、ハワード首相は「今日のディベートで充分だ」と逃げました。今回のディベートは、一貫して「攻めのビーズリー・守りのハワード」だったような気がします。翌日の新聞によると、視聴者のうち3人に2人が、やはりビーズリー氏がディベートで勝利したと評価したそうです。さて、この党首ディベートは、ハワード首相率いる与党絶対有利と言われている選挙戦をどのように左右するのでしょうか。選挙戦の序盤にディベートが行われたというタイミングも、微妙に影響するかもしれませんね。



オージー・ビーフと田子牛 (2001/10/20)


 先月の末、ブリスベンからワシントンに行く途中に、成田の串焼屋さんに入りました。そこでは、牛タンをはじめ、あらゆる「牛もの」が、メニューには載っていても今は扱っていないということでした。機内で読んだ日本の雑誌でも、テロ関連の話題の次に多かったのは、「狂牛病」のことでした。日本でも狂牛病の牛が発見されて、その原因は「肉骨粉」と呼ばれる輸入飼料らしいということでした。ある辛口評論家は、「恐いのは狂牛病ではなくて、農水省の無策だ」と書いていました。安全という消費者の利益ではなく、風評被害を食い止めようとしたりという農家の利益を優先させる国や政治家の態度に対する批判もかなりありましたね。帰りの成田では、空港ターミナルにあるマクドナルドに、「日本マクドナルドの牛肉は、全て安全なオーストラリア産の牛肉です」という張り紙がありました。全国チェーンの牛どん屋さんや、仙台の牛タン屋さんなんかは、どうしているのでしょうか。商売あがったりかもしれませんね。

 全日空で読んだ「翼の王国」という機内誌の9月号に、青森県田子町(たっこまち)の「にんにく」についての6ページにわたる巻頭特集がありました。田子は、私の故郷・八戸に近接する青森県南部の町で、にんにくの産地として世界的に有名です。その特集の中に、「にんにくと田子牛はクサイ仲」という1ページがありました。それによると、田子のにんにくがおいしいのは、和牛「田子牛」のフンをにんにく畑の土壌作りに使っているためだそうです。また、田子牛はエサとして田子のにんにくを食べていて、その効用のため健康でおいしい牛として育つんだそうです。まさに自然の「ギブ&テイク」による「クサイ仲」ですね。田子には、そのにんにく料理と田子牛のステーキが食べられる「ロッジ・カウベル」という宿泊施設があるそうです。狂牛病騒動の中、ステーキの売上はどうでしょうか。私も今度八戸に帰ったら、「ロッジ・カウベル」まで足を伸ばしてみたいと思います。その時までには、狂牛病騒動も一件落着となっていればいいのですが。



オーストラリアの外国語教育 (2001/10/21)


 ロビンとデイビッドの娘、9歳のジェシカは、小学校で日本語を習っているそうです。1から10までの正しい日本語の発音を、僕に確かめていました。「seven」は、「なな」か「しち」か。これはどちらでもいいのだと教えましたが、どういう場合に使い分けるのかを聞かれても答えられませんでした。「five」は、「ご」か「ごーお」か。これは一応、「ご」だと答えましたが、なかなか難しい質問ですよね。確かにゆっくり数える場合は、「いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお」、と伸ばして発音する時もありますから。皆さんなら、何て答えますか。こういう意外な質問にもうまく答えなければならないなんて、日本語の先生になるのも大変なんでしょうね。

 オーストラリアでは小学校のうちから、英語の他に8つの外国語の中から最低ひとつ習うそうです。その8つとは、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、日本語、インドネシア語、中国語、韓国語だそうです。でもどの外国語を習うかは、教える先生がいるかどうかなどにより学校側が決めるそうで、今のところ生徒の側には選択権はないそうです。デイビッドは、「言葉を覚えるよりも、外国語を習うことによって、世界にはいろいろな言葉を話すいろいろな文化があるということを、小さい頃から意識することが重要なんだ」と言っていました。同感です。



週末はヴェニスで朝食 (2001/10/22)


ブリスベン川  私が住んでいるアパートのすぐそばに、「ヴェニス」という名のちょっといい感じのレストランがあります。ブリスベンでの週末は、大抵この「ヴェニス」でゆったりと朝食をとることから始めます。いつも、ブリスベン川に面したこのレストランの窓辺の席に座り、朝日にきらめく川面を眺めたり、川からの爽やかな風に当たりながらの朝食です。とても優雅な気分に浸れる、ブリスベンで一番好きなひと時です。朝食が終わっても、ラッテやティーをおかわりして、そのままのんびり読書をしたり、新聞を読んだりして過ごすこともあります。

 こちらの典型的な朝食は、ベーコン・エッグにトースト、それに決まって「焼きトマト」が付いてきます。私はこの「焼きトマト」があまり好きではないので、いつも最初に食べてしまいます。それに引きかえ、オーストラリアのベーコンはおいしいですね。アメリカのカリカリに焼いたベーコンは苦手だったのですが、こちらのベーコンはやわらかくてハムに近いです。パンもアメリカのものよりふわふわしていて、日本の食パンに近い感じのものが多いですね。でも本当は、白いご飯に味噌汁っていう朝食が恋しいんです。



犬に1日2時間運動させる条例 (2001/10/23)


 最近こちらで話題になっている、新しいクイーンズランド州の条例です。それによると、飼い犬は1日に必ず2時間以上運動させること。違反者は、罰金1500ドルとなっています。

 この条例に対して、いろんな批判が近頃の新聞に載っています。まず、1日に2時間の運動という規定は全く科学的根拠がなく、無意味だというもの。犬の必要な運動時間は、個々の犬の種類や体格、健康状態によってマチマチなはずで、一概に2時間とは決められないはずだという主張です。同感ですね。でも私が思うにこの条例の一番の問題は、その罰則規定を執行することが極めて困難だろうということです。だって、犬に「昨日は何時間運動したの?」って聞くわけにはいかないでしょう。犬は「ワン」とは吠えても、「ツー」とは答えられませんからね。それとも、この条例の違反者を取り締まるために、「犬のおまわりさん」でも雇いますか。



ブリスベンの強い陽射し (2001/10/24)


 私はいつも徒歩で通勤しています。私のアパートから職場のブリスベン市庁までは、大体15分くらいですが、最近はスーツを着て歩いていると汗ばむようになってきました。特に、亜熱帯ブリスベンの朝の陽射しはとても強く、日なたでは朝から暑いんです。夕方は不思議と涼しくなりますが。

 メール・マガジン「豪州かわら版」の亜希さんによると、オーストラリアの紫外線の強さは日本の2〜6倍だそうです。そのため、オーストラリアは皮膚ガンの発症率が世界一で、年間1200人ほどが、皮膚ガンが原因で亡くなるということです。ブリスベンの小学校では、登校の際にサングラスをかけるように指導したり、サングラスが制服の一部になっているところもあるということです。私が思うに青い目の白人というのは、その他の人種に比べて、皮膚も目も紫外線に弱いんじゃないでしょうか。アメリカでも、よくサングラスをかけている子供を見かけました。ワシントンで真夏の太陽の下、ソフトボールをやっていた時も、ほとんどの白人はサングラスをかけてプレーしていました。よく、「サングラス無しでボールが見えるの?まぶしくないの?」と聞かれましたが、その度に「瞳が黒いからまぶしくないんだ」と答えていました。科学的にはどうなんでしょうか。



オーストラリアとニュージーランド (2001/10/26)


 あるパーティーで会ったブリスベン市庁のオレンジ局長は、ニュージーランド人でした。その日全身黒尽くめの服装で現れたオレンジさんは、パーティーそっちのけでテレビに噛り付いていました。彼が見ていたのは、ラグビー。ニュージーランドのナショナルチーム「オール・ブラックス」とオーストラリアの対戦でした。自国の「オール・ブラックス」を応援するために、全身黒でまとめて来たのです。

 ラグビーでもいいライバル同士のオーストラリアとニュージーランドは、地理的に近いこともあって、様々な分野で密接な間柄にあるようです。同僚のラルフは、ニュージーランドは多少オーストラリアより生活水準が低くて、そのためにニュージーランドからオーストラリアへ移り住む人も多いんだと言っていました。気をつけていると、ブリスベン市庁にも、結構ニュージーランド国籍の人がいます。確か日本では、外国人は公務員の管理職になれないというのが、霞ヶ関の見解ではなかったでしょうか。ところがブリスベン市庁では、幹部にも外国人がいて、前出のオレンジ局長の他に、IT関連の最高責任者「チーフ・インフォメーション・オフィサー」のアランもニュージーランド人です。ただ、どこの国籍の人でもいいということではなくて、ニュージーランド人は特別扱いなんだそうです。オレンジ局長は私に、「もしブリスベン市庁に正規職員として残りたいのなら、オーストラリアかニュージーランドか、どちらかのパスポートを取得しなさい」、と言っていました。う〜ん、それもいいかもしれませんね。



豪州選管からのパンフレット (2001/10/27)


 11月10日に投票が行われるオーストラリアの総選挙も、選挙戦が終盤に入ってきました。数日前に、郵便受けに「ELECTION・2001」というオーストラリア選管からのパンフレットが入っていたので、これを少し紹介します。

 まず表紙をめくると、「投票日は11月10日、投票時間は午前8時から午後6時まで、投票は義務ですので棄権者には最高50ドルの罰金」などと書かれています。それと、「あなたの選挙区のどこの投票所でも投票できます」とも書いてあります。確か日本の選挙は、投票所が指定されていますよね。極めつけは、「このパンフレットの外国語版を欲しい人は、以下に電話してください」と、15カ国の言葉と連絡先が記入されていることです。その言葉とは、アラビア語、広東語、クロアチア語、ギリシャ語、イタリア語、クメール語、マケドニア語、北京語、ポーランド語、ポルトガル語、ロシア語、セルビア語、スペイン語、トルコ語、ベトナム語です。ということは、オーストラリアの選管は、英語も含めて少なくとも16の言葉でこのパンフレットを作っているということです。さすがに多文化・多民族主義の国だと、感心してしまいました。

 このパンフレットには、投票用紙の記入の仕方も説明されています。去年のアメリカ大統領選挙の時は、穴を開ける方式の投票用紙が話題になりましたよね。日本は候補者の名前を直接記入する方式ですが、オーストラリアの投票用紙というか投票方式は、このどちらとも異なります。下院と上院でも違うのですが、下院ではその選挙区に立候補している候補者全員に、自分が当選させたい順に番号をつけるのです。例えば、自分の選挙区で4人の候補者が立候補している場合は、投票用紙の候補者名の横にあるマスに、自分が好きな順に1から4までの番号を記入するのです。だから集計もちょっとやっかいです。一人の候補者が有効投票数の過半数で「1」を獲得すれば、文句なしに当選です。しかしそれ以外のケースでは、「1」を獲得した数が最も少なかった候補者がまず失格になり、その失格候補が獲得した票数は、その候補の投票用紙で「2」を獲得した他の候補者の票に加算されます。この集計方法を誰かが過半数を獲得するまで繰り返すのです。例えば、有権者数が6万人の選挙区で、A、B、Cという3人が立候補したとします。「1」を獲得した数は、それぞれAさんが1万5千、Bさんが2万3千、Cさんが2万2千だったとしましょう。これで、Aさんがまず脱落します。次にAさんに「1」をつけた1万5千人の投票用紙を再度調べて、Aさんを一番にした人のうち、6千3百人がBさんに「2」をつけ、残りの8千7百人がCさんに「2」をつけたということにします。このそれぞれの票数を最初に「1」を獲得した票数に加算すると、Bさんは2万9千3百票、Cさんは3万7百票となり、Cさんが過半数の3万を超えたのでCさんの当選となります。

 ちょっと複雑ですが、分かっていただけたでしょうか。この例では、一番多く「1」を獲得したBさんが当選できないという逆転現象が起こっています。このような投票・集計方式では、組織票などが機能しにくいのではないでしょうか。当選するには、「1」だけでなく「2」も多く獲得しなければならないため、幅広い有権者を対象にした政策が必要になると思うからです。もし日本でこのような方式を採用したら、今の政界の勢力図がガラリと変わるかもしれませんね。

 ちなみにオーストラリアの上院は比例代表制で、政党に投票するか、候補者に投票するかを有権者が選択できるようになっています。候補者に投票する場合は、こちらもやはり順位記入方式になっています。



夏時間の終わりと始まり (2001/10/28)


 アメリカでは今日で夏時間が終わりです。家族のいるワシントンとの時差は、今まで14時間だったのが、これからは15時間になります。また少し、電話がしにくくなりました。

 逆にこちらオーストラリアでは、今日から夏時間(正式には、 Daylight Saving Time と呼ぶ)の始まりです。しかしオーストラリアでは、州ごとに夏時間を採用するかどうかが異なるんです。ブリスベンのあるクイーンズランド州では、この夏時間を採用していません。何年か前に州民投票をやり、夏時間を採用しないことが決まったそうです。課長のマークは夏時間の採用に賛成したけど、彼の奥さんは、「まだ明るいうちに子供を寝かせるのは難しそうだ」、という理由で反対したそうです。

 オーストラリアの同じ東海岸にあっても、シドニーのあるニュー・サウス・ウェールズ州と、メルボルンのあるビクトリア州では夏時間を採用しています。そのため、今まではブリスベンと同じ時間だったシドニーとメルボルンは、今日から時差1時間となります。ブリスベンのお隣、同じクイーンズランド州の観光地ゴールド・コーストでは、シドニーやメルボルンと取引があるビジネス界や、これら大都市からの訪問客の利便性を考える観光産業を中心に、自主的に夏時間を採用する動きがあるそうです。勝手に時計を1時間早めて、ビジネスの時間帯をシドニーとメルボルンに合わせるという訳です。州政府は黙認する構えのようです。こんなのも、ちょっと面白いですね。



Shopping's Better Than Sex (2001/10/29)


 最近ブリスベンの街で見かける、ちょっと危ないフレーズです。えっ、「ショッピングはセックスよりいいわ」だって。これは、ブリスベン中心街にある「クイーン・ストリート・モール」という、ショッピング・モールのキャッチ・フレーズです。おそらく、この夏のテーマなんでしょう。

 「クイーン・ストリート・モール」は、歩行者専用の2ブロックにわたる青空モールです。青空モールと言っても、アーケードやオブジェ形式のひさしが所々にあり、まあ雨が降ってもまず大丈夫です。緑はあまりありませんが、水の流れるアートやベンチがあちこちにあります。モールの両側は、当然ファッションと飲食を中心にしたデパートやお店が軒を連ねていますが、モールの道の中央にも、露店に近いレストランやカフェがいくつかあります。それに、ミニ・ステージが二つあり、昼休み時間にはミニ・コンサートや、大道芸人のパフォーマンスや、何かの演説などをしょっちゅうやっています。

 このモールを歩いている若い女性たちは、ファッショナブルな人がとても多いです。最近は暑いので露出度も増してきて、おへそや肩や背中を出している半裸の女性たちで溢れています。こういう大胆な格好でショッピングを楽しんでいるオージー・ギャルたちを見ていると、上記のキャッチ・フレーズのようにショッピングとセックスを比べるというのも、まんざら的外れでもないなあと思えてきます。ある人が、「都市の中心市街地というのは、市民の主張の場であり、民主主義には欠かせない」と言っていました。ブリスベンの「クイーン・ストリート・モール」のように、自分のファッションや芸や意見を主張できる「都市のステージ」が、元気な街には必ずありますよね。



ブリスベンか、ブリスベーンか、それが問題だ (2001/10/30)


 今日のブリスベンは最高気温が36℃で、とても暑い一日でした。アパートに帰ってきてからも暑かったので、この夏はじめてクーラーをオンにしました。これから暑い日が続きそうです。

 さてそのブリスベンですが、日本の新聞では「ブリスベン」ではなくて「ブリスベーン」となっているはずです。まあ、ブリスベンが日本の新聞に登場することは、滅多にないかもしれませんけど。以前、故郷の地元紙「東奥日報」にブリスベンのことを書いた際(「自治の姿・海外編」を参照ください)、「日本の新聞では、海外の地名のカタカナ表記は統一することになっている」と聞かされました。私の記憶が正しければ、確か共同通信社が地名表記の主導権を握っているとか。そもそも、英語や外国語の発音を正確にカタカナで表記するのは不可能でしょうが、英語の発音に近いのは「ブリスベーン」ではなくて、「ブリスベン」の方です。だから私は、いつも「ブリスベン」と書いているのです。

 それでは何故日本では、「ブリスベーン」と伸ばして書くのでしょうか。おそらく、ブリスベンに来たこともない誰かが勝手に決めたんでしょうね。発音記号的に言うと、「ブリスベーン」よりも「ブリスベイン」です。ただ、アクセントが「リ」にあるので、おしりの「イン」はほとんど聞こえないんです。だから結局「ブリスベン」というカタカナ表記が、一番英語の発音に近いということになります。「ブリスベ」でもいいくらいです。英語でうまく発音するには、「リ」に思いっきりアクセントを置いて、あとは尻すぼみするようにあいまいに言えばいいんです。



喋るエレベーター (2001/10/31)


 私の職場のあるビルのエレベーターは、喋るんです。当然英語ですが、「5階です。上にまいります」とか、「2階です。下にまいります」とか。機械が昔デパートにいたエレベーター・ガールの代わりをしています。地上階に着くと、特別に「右はアン・ストリート、左はショップです」というアナウンスが加わります。何階に着いたかは、エレベーター内の電光表示の数字を見ればわかるし、上に行くか下に行くかは、赤いランプが点灯するか緑のランプが点灯するかで分かるので、個人的にはこういったアナウンスは全く不必要だと思うんですが。

 ちなみにオーストラリア英語では、アメリカ英語の「エレベーター」のことを、イギリス英語と同じく「リフト」と言います。これは有名な話ですよね。地上階も、アメリカ英語の「ファースト・フロアー(1階)」ではなくて、「グラウンド・フロアー」です。アメリカや日本での2階が、こちらでは1階になり、1階が地上階となります。まあ、これもよく知られたことですけど。オーストラリアに来た当初は、恥ずかしながら、地上階に行こうとしてしばしば1階のボタンを押してしまったものです。よく分からないのが、私の職場のビルには1階と2階の間に「Sフロアー」というのがあることです。最初の頃、この「Sフロアー」とは何なのかということを、いろんなオーストラリア人に聞いたんですが、結局誰も知らなかったので、そのうち聞くのをあきらめてしまいました。これもイギリス式なんでしょうか?誰かイギリスかオーストラリアに詳しい人で、この「Sフロアー」のことがわかる人がいたら、是非教えてください。「S」は何かの頭文字だと思います。気になりだすと、夜も眠れないんです。



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