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帰ってきた BRISBANE 通信
(September 2003)



ブリスベンに恋をして (2003/09/02)


 昨夜遅く懐かしの豪州ブリスベンに着きました。ここブリスベンには2001年の5月末から一年間住んでいました。ブリスベンを発ったのが2002年の5月30日ですから、ほぼ一年三ヶ月ぶりに戻ってきたことになります。見るもの全てが懐かしいです。今回は「国際リバー・シンポジウム」に参加するためのブリスベン来訪ですが、ブリスベンに戻って来たかったからこのシンポジウムに参加した、と言った方がいいかもしれません。

 ブリスベンは今、季節的には冬の終わりから早春へと向う頃です。今日は晴れたり曇ったりの一日で、日中の最高気温は22〜23℃くらいでした。時おり晴れ間がのぞくと、陽射しは結構強いものがありました。街には既にノースリーブや半袖の人があふれていますが、まだ薄手のコートを羽織っている人も少なからず見かけました。

 昨日、ブリスベン空港に着いた時もとても懐かしいなあと思いましたが、今朝ブリスベン川沿いの遊歩道を散歩していたら、懐かしさを通り越して切なさが胸に込み上げて来ました。この想いは何なんだろう。初恋の人に久し振りに会ったような感覚です。僕はブリスベンという街に恋をしていたのかもしれません。

ブリスベン川の花火 故郷の八戸や、もう10年近く住んでいるワシントンに対しても確かに愛着はありますが、それはどちらかと言うと、家族愛に近い感情です。でも、僕のブリスベンに対する気持ちは、異性に対する恋心に近いものがあると今日気づきました。たった一年住んだだけでしたが、特別な想いが僕の中で芽生えていたのです。それは、川や緑といった都市の自然、フレンドリーで人生をエンジョイする暖かい人々、アジア的な物と西洋的な物が融和する価値観、口に合う食事と酒、晴天率の高い気候などなどを総合した街の魅力が、僕の感性とぴったりくるからかもしれません。ブリスベンで恋をしたのなら問題ですが、ブリスベンに恋をしたのですから、きっと妻も許してくれることでしょう。



前ブリスベン市長のスーリーさんと再会 (2003/09/03)


 今日のブリスベンは暑かったです。日中は陽射しが強く、おそらく気温は30℃近くまで上がったんじゃないでしょうか。言っておきますが、ブリスベンは南半球だから日本とは季節が反対ですよ。

 さて、今日はいろいろと懐かしい方々に大勢お会いしました。その中で一番嬉しかったのは、スーリー前ブリスベン市長との再会でした。スーリーさんは今年の5月に市長を退任されたと聞いていたので、今回は会うチャンスがないだろうと思っていたのです。ところが、そのスーリーさんも僕が参加している「国際リバー・シンポジウム」に参加していたのです。このシンポジウムは、彼のイニシャチブで始まって毎年この時期にブリスベンで開催されます。今年が6回目ですが、市長職を退いてもなお、知識欲と行動力は旺盛なようです。

ブリスベン市庁舎 そのスーリーさんと、かなり長い間、立ち話をしました。スーリーさんは市長をやめて何をやっているのかと思ったら、「国際河川財団」というのを立ち上げたそうです。市長時代のネットワークをフルに活用して基金を集め、世界の河川や水問題のために使うのだそうです。何とまあ、素晴らしいことを。引く手あまたのスーリーさんのこと、市長後の選択肢はいろいろあったはずなのに、まだまだ社会のために、世界のために、そして環境のために働きたいということでした。

 スーリーさんの今日の言葉を書き留めておきます。彼はこんなことを言っていました。「政治家やリーダーなんていうのは、やがて変わるんだよ。市長だって自分がやめれば、誰か新しい人が来る。でも、そうした時に、重要な政策やプログラムが持続できないと困るんだ。人が変わっても、継続できるシステムを作りたい。それがこの財団なんだ。」

 今日スーリーさんと再会して彼と話ができただけでも、今回ブリスベンに来た甲斐があったというものです。彼が目指している「持続可能なシステムづくり」は、河川や水問題だけではなく、あらゆることに応用できるはずです。是非参考にしたいと思います。



変わるブリスベン、変わらぬブリスベン (2003/09/04)


 一年三ヶ月ぶりにブリスベンにやってきて、ブリスベンの街が少し変わっていました。僕が住んでいた頃にはなかった新しいビル、新しいカフェやお店をいくつか発見しました。いくつか紹介すると、僕が勤めていたブリスベン市役所のビルの下にあるシティ・プラザに、「Red Crane(赤い鶴)」という名の日本食ファースト・フード店が進出していました。もし僕がいた頃にこれがあったら、ランチはここをよく利用していたことでしょう。その他、クィーン・ストリート・モールの北側入り口にあって、僕がよく買い物をしていたコールズという食料品店とターゲットというスーパーがなくなっていました。その辺りのかなり広い一画は、「クィーンズ・プラザ」という名の一大ショッピング・センターになるらしく、ただ今工事中でした。ブリスベン川を走る高速フェリー乗り場の「リバー・サイド・センター」も、昔はただの船着場という感じでしたが、立派なフェリー・ターミナルに生まれ変わっていました。

 街の変化ばかりでなく、人や組織の変化もありました。昨日書いたようにブリスベン市のリーダーは、スーリー市長からクイン市長へとバトンタッチしました。僕が主に籍を置いていたブリスベン市都市経営局の上下水道課も、既に存在しません。その部署は、より統合的な水行政を展開するために河川課と合併し、水管理課となったのです。それから、僕が毎週のように通っていたアデレード通りの和食屋「おしん」の板前さんも転職しました。よく朝食を食べたブリスベン川沿いの「ヴェニス」の気さくなおばちゃんは、一年三ヶ月でずい分とスマートになっていました。こういう変化があると、やっぱり時の流れを感じますね。

 その一方で、あの頃と変わらないブリスベンもありました。よく晴れた青い空と、冬なのに暑いくらいの気候。強い陽射しにきらめくブリスベン川。水しぶきに薄っすらと虹を従えて進む高速フェリーのシティ・キャット。街中でゴミをついばむアイビス。露出度の極めて高い服を好むオージー・ギャル達。久し振りに聞くと妙に耳に心地よいオージー英語。朝食に必ず出てくる焼きトマト。そして、どこまでもフレンドリーなブリスベンの人々。これらは全くあの頃のままでした。変わるブリスベンと、変わらぬブリスベン。街がいくら変わっても、いつまでも変わって欲しくないものがあります。



あの頃のように (2003/09/05)


 ブリスベンの空港で書いています。これから、ニュージーランドのオークランドと成田を経由してワシントンまで帰ります。

 今回のブリスベン滞在に際しては、ホテルは迷わずマリオットに決めました。シティのはずれでブリスベン川沿いにあるマリオット・ホテルは、僕が住んでいた高層アパート「アドミラルティー・タワー」の真向かいに建っているので、ノスタルジックな気分に浸るには絶好のロケーションだったのです。参加した「国際リバー・シンポジウム」の会場は、僕が勤務していたブリスベン市役所のお隣にある「カールトン・クレスト・ホテル」でした。ですからこの三日間は、クィーン・ストリートをまっすぐ歩いて通い、アデレード・ストリートをまっすぐ歩いて帰ってきました。まるで、アパートからブリスベン市役所へ通っていた、あの頃と同じようにです。

 そればかりではなく、今回のブリスベン滞在中、努めてあの頃の軌跡を辿ってみました。あの頃と同じように、「ヴェニス」で朝日にきらめくブリスベン川を眺めながら朝食を食べ、あの頃と同じように、マイヤー・センターの「ザラファズ・コーヒー」で世界一美味しいカプチーノを飲み、あの頃と同じようにブロードウェイの「スモー・シティ」でランチを食べました。あの頃のように、リバー・サイドのオープン・カフェバー「Opus」で生牡蠣とオージー・ワインを堪能し、ホテルのカフェでは、あの頃のように好物のパッション・フルーツを頬張りました。あの頃のように、和食屋「おしん」では世界で一番美味しいビール「カスケード」で喉を潤し、オーストラリア産の日本酒「豪酒」で締めくくりました。あの頃のように、「H」は「エイチ」ではなく「ヘイチ」と発音し、「breakfast」ではなく「brekky」と言ってみたりしました。

ブリスベン川 それにしても、ブリスベンはどうしてこんなに暖かいのでしょう。気温ではなく、人々のことです。友人たちや昔の同僚ももちろんそうでしたが、普通の人々が暖かいのです。あの頃よく通っていたカフェやお店の人々が皆僕のことを覚えていて、長々と立ち話をしてくれるのです。みんな親友にでも再会したように、大げさなほど感激してくれるのです。「ヴェニス」のおばちゃんは、「絶対にまた戻っておいで。旅行ではなく、移民しちゃいなさい。オーストラリアは広いから、あなたの家族を受け入れることなんてたやすいわよ」と言ってくれました。僕のアパートの管理人だったレオンさんが今も管理人をしていて、「このアパートの窓から見える絶景を忘れないように」と、最近撮影したというブリスベン川沿いの景色が写った写真をくれました。

 思えば、このホームページを立ち上げたのもブリスベンでした。だから、ブリスベンはこのホームページの故郷だとも言えるでしょう。あの頃のように、初心を忘れず謙虚な気持ちで、これからもこのサイトを続けていきたいと思います。




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