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GLOBAL PERSPECTIVE

バングラデシュ
砒素汚染対策・水供給プロジェクト

〜緊急かつ持続的最適解の模索〜




<世界銀行東京事務所ニューズレター(2001年4月号)より>

 バングラデシュでは1億2千5百万人という日本とほぼ同じ人口の約90%以上が飲料水を地下水に頼っています。その貴重な地下水の多くが地層中から自然に抽出した砒素成分に深刻なほど汚染されていることがわかったのは、90年代も半ばになってからです。現在ではバングラデシュ全64地方区のうち実に59区で汚染が判明し、2500万人から7500万人の健康が脅かされています。

 バングラデシュ政府の要請を受け、世銀は1998年に総額4400万米ドルあまりの「バングラデシュ砒素汚染対策・水供給プロジェクト」を緊急承認しました。プロジェクトの主な内容は、国内の全井戸を対象にした井戸水の砒素濃度の検査(スクリーニング)、汚染度の高い地域への代替となる水供給システムの構築、砒素汚染とその対策に関する正しい知識の普及、安全で持続的な水供給の自主運営を目指した地方自治体や住民組織の強化・育成、それに長期的な砒素汚染対策構築のために必要な調査研究などです。砒素の汚染濃度の分布は極めて不規則で、安全な井戸から数メートルしか離れていない井戸で高濃度の砒素が検出されたり、一旦安全だとされた同じ井戸から数ヶ月後に砒素が見つかったりという例が後をたちません。全井戸に対するスクリーニング、しかも定期的にそれを繰り返すことが不可欠だとされる所以です。このスクリー二ングひとつを取ってみても、検査に必要な砒素検出キットを大量に調達し、村々ごとに担当のNGOや自治体職員に研修を施し、データを採取し、住民に情報提供を行うことは非常に手間と時間のかかる作業であり、スタートから2年以上が経った今もプロジェクトの実施は当初の計画より大幅に遅れています。残念ながら試行錯誤の域を出ていません。

 さらに深刻な問題は地下水に代わる代替水源の不足です。生活雑廃水や産業廃水の垂れ流しにより、川や池といった表流水の多くは砒素よりも危険なほど水質汚濁が進んでおり、雨季には洪水をもたらす雨水も年中通じて利用できる水源とはなり得ない。研究機関や民間業者が開発を競っている砒素除去装置にしても、除去の確実性、コスト面、維持管理の容易さといった点を全て満足させるには今のところ決定打に欠けるようです。結局、一見遠回りのようですが、村々あるいは街々で地下水、表流水、雨水の最適な組み合わせを住民とともに模索する以外に、有効な打開策を見出せていません。

<慶長寿彰(けいちょう としあき):94年世銀入行。東アフリカ局、アジア技術環境局を経て現在南アジア局インフラ課の上席都市環境専門官。本プロジェクトの前タスク・リーダー。主に都市開発、水供給、環境セクターを担当。>



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