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GLOBAL PERSPECTIVE

大リーグ・イチロー観戦記




<Toronto Bluejays vs Seattle Mariners (5/6/2001)>

 アジア太平洋都市サミットに参加するために訪れたシアトルで、ボルチモア以外では初めての大リーグ観戦をしてきました。マリナーズは現在、イチローと佐々木の活躍もあってア・リーグ西地区でぶっちぎりの首位独走です。実はサミットへの参加を決めた3月上旬にこのチケットをインターネットで購入したために、非常にいい席でした。ピッチャーの球筋とライトのイチローの動きがとても良く見える、一塁ベースのすぐ横の内野席でした。チケットを注文した時点では、大リーグ一年目のイチローが5月までスタメンをはずされないくらいの成績を残しているだろうかと、半信半疑でした。私はイチローを良く知らないのです。イチローは日本で7年連続の首位打者だったそうですが、計算してみるとイチローが初の首位打者を獲得した年の8月に私は日本を離れています。そして次の年に野茂がアメリカにやって来て大活躍したのです。あの当時、野茂の活躍には本当に励まされました。アメリカ中の多くの日本人がそんな気持ちだったと思います。

 シアトル・マリナーズの本拠地セイフコー・フィールドは大リーグ特有の天然芝のとてもきれいな球場でした。大リーグの球場は日本の球場と違ってバックネット以外はフェンスがないのです。日本だったらファールボールが危ないとか、球場に降りて来てしまうふとどきなファンがいるとかという理由で問題になりそうですが、見る側にとってはフェンスがないっていうのは非常に見やすいですね。相手がトロントのブルージェイズだったのでまずはカナダの国歌から始まりです。とてもメロディーのきれいなバラード調の落ち着いた曲でした。次はアメリカ国歌。あのアメリカ国歌っていうのはスポーツの前に聞くのにとても効果的なんじゃあないでしょうか。何か、歌詞といいメロディーといい体の中の熱き血を鼓舞させられますよね。そう思いませんか。

 晴天ながら肌寒いデーゲームのプレイボールは午後一時半を過ぎたあたり。さて一回の裏、先頭のイチローは3球目の低めスライダーを低いライナーでレフト前に運びいきなり出塁。2番マクレモアの時に二塁盗塁を試みるも、たまたま一塁寄りにそれたキャッチャーの送球が滑り込んでくるイチローにタッチしやすい位置に来て、タッチアウト。マクレモアはこの時空振りしたので、私はエンドランがかかっていたと読んでます。イチローに関しては見せ場はこれだけでした。変化球を初回にヒットされたブルージェイズのピッチャー・カーペンターは、以降イチローに対しては真っ直ぐで押し続け、第二打席はサードフライ、第三打席はピッチャーゴロ、第四打席は変わった左のプレサックに対して合わせただけのセンターフライでした。イチローは守備でも見せ場はありませんでした。試合はブルージェイズの打線が爆発し、ドジャーズ時代に野茂を攻守にわたって何度も助けたモンデシーの特大ホームランなどで、11対3で圧勝しました。イチローは8回表の守備からベンチに退き、佐々木の出るゲーム展開ではないこともあって、私はその時点で夕方からのアジア太平洋都市サミットの開幕レセプションに備えるために球場を後にしました。

 それにしても、シアトルでのイチローの人気は凄まじい。打席に入る時の拍手と喚声の大きさは、マリナーズのスターである3番のエドガー・マルチネスを既に超えてダントツでした。隣に坐っていたアメリカ人のおっさんは、イチローが打席に入るたびに熱狂して「イチロー、イチロー」と吼えまくっていて、彼は「イチローはあらゆる記録を破るだろう。彼は特別な選手だ。」と話していました。実は球場外でも、私が日本人であるとわかるとホテルの人までがイチローの話題を出してきました。そしてアジア太平洋都市サミットでも、シアトル市の代表でプレゼンしたチャコイアンIT局長は、「グローバリゼーションがイチローの輸入を可能にした。」とプレゼンの中でイチローの写真を使って言っていたし、今回のサミットのホスト役であるシアトルのシェル市長は、イチローのサインボールをステージ上でパネリストの広島市の秋葉市長に手渡していました。

 しかし、私には少し気になることがありました。試合中のイチローに元気がなかったのです。かなり疲れていると感じました。攻守交替の際の守備位置とベンチとの往復も実にチンタラと走っていたし、各イニングの守備の始めに行う肩慣らしのキャッチボールが、センターのキャメロンまで届かないことが多くありました。大リーグは日程と移動が厳しいので、開幕から一ヶ月あまり経ちちょうど疲れが出る頃でしょう。ここを乗り切れば、オールスター出場はまず間違いのないところでしょう。

 最後になりますが、試合当日の地元紙シアトル・タイムズにこんな記事が載ってました。日本のプロ野球から大リーグに有名選手が流れているために、日本のプロ野球の人気が落ちているという記事です。その記事は、その背景には若い選手は変わってきているのに、監督やコーチが旧態依然の封建的な押し付け体制を変えていないという事実があると分析しています。日本の野球に詳しいホワイティング氏の「日本の監督やコーチは、選手を軍隊の新兵のように扱っている。」というコメントと、日本の元ヤクルトの青島健太氏の「自分が小さい頃は巨人の選手になるのが夢だった。日本の今の子供たちはヤンキースやマリナーズの選手になりたがっているんじゃないか。でも、それは悪いことじゃない。」というコメントが載っていました。私としては、野球に限らず、イチローや野茂のように世界の舞台で自分の実力で勝負できる日本人がもっと増えてほしいと願っています。

2001年5月11日 慶長寿彰



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