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GLOBAL PERSPECTIVE

世銀に学ぶ公共事業審査
〜効果や公平性に厳格〜




<自治のすがた〜海外事情(東奥日報2001年4月4日)より>

 日本でも公共事業の見直し論が注目を浴びているようだが、私が勤務している世界銀行は発展途上国の公共事業に融資を行うのが主な業務の一つである。途上国の経済発展と貧困の削減を目指して行われる公共事業融資の仕組みはどんなものなのか、その事業前審査と事業後の評価に絞って述べてみたい。日本の自治体が公共事業を行う際の参考になれば幸いである。

経済分析義務付け

 途上国側が主導して融資対象となる公共事業案件の詳細計画が策定され、それに基づく事業実現性調査が完了すると、世銀側が融資の是非を決定するアプレイザルと呼ばれる審査が行われる。この審査において世銀側が特に注意を払うのは、その公共事業の経済的効果、持続可能性、社会的公平性の三点である。経済的効果とは簡単に言うと、その事業後に想定される経済効果を金銭的に定量化し、事業にかかる建設費用と維持管理費を基に算出される経済リターン率の数値で判断するものである。世銀ではこの数値が10%から15%以上であることが融資決定の分岐点であることが多い。経済効果が金銭的に定量化しにくい下水処理場のような案件の場合(処理場建設に伴う河川の水質改善効果は定量化が難しい)にも、複数の計画案の費用と受益者数などを勘案し費用対効果を比較するなどの経済分析が義務付けられている。

 持続可能性とはその事業が将来とも問題なく持続的に運営される見込みを意味し、主に環境的、財政的、組織的持続可能性に分類される。世銀の場合、ほとんどの土木公共事業に環境影響評価の実施が義務付けられており、環境に悪影響を及ぼす恐れがある事業には計画の変更かその悪影響を緩和する施策の同時実施が求められる。財政的な面では、事業実施主体となる自治体の財政状況が、当該事業実施後の維持管理費負担に将来とも堪えられるかを審査する。それに伴い例えば水道事業の場合には、住民の負担能力を考慮した新たな水道料金体系の設定などのアドバイスがなされる。組織的な面では、事業担当自治体の技術的事業運営能力を審査し、多くの場合組織のリストラや技術面での支援措置が提案されたり、事業運営監視のための指標が導入されたりする。

 次に社会的公平性であるが、その事業が一部の特定の集団にだけ恩恵を与えず、貧困層や社会的弱者である女性や子どもを対象にしているかなどを審査する。

5〜10人で数週間

 以上のような条件をすべて満たして初めて融資が決定される。世銀のこのような事業審査は、経済や環境、財政、都市経営、その他個々の事業に応じたいろいろな専門家からなる5人から10人のチームによって数週間かけて実施される。事業実施後には、この審査とほとんど同じような項目でエバリュエーションと呼ばれる詳細な評価が行われ、途上国側の事業実施が成功であったか、世銀側の審査や助言が適当であったかが客観的に分析される。

慶長寿彰(八戸市出身、世界銀行本部勤務)



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