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GLOBAL PERSPECTIVE

「日米リーダーシップ・プログラム」
参加報告




 2001年7月29日から神戸を主会場に行われた「日米リーダーシップ・プログラム」に参加してきました。このプログラムは、ニューヨークに本部のある米日財団が主催しているもので、日米双方から20人ずつ各界の若手リーダー(28〜42歳まで)を集めて一週間合宿をし、二国間関係や様々な国際問題に関する議論をしながら友情を育み、将来の日米関係の発展に寄与しようというものです。去年のシアトル会議に続いて今年の神戸が2回目で、以降姉妹都市でもあるシアトルと神戸で毎年交互に行われる予定だそうです。2年続けての参加が義務付けられており、今年のアメリカからの参加者は原則として去年の参加者と同じで、今年の日本からの参加者は新規に選ばれたメンバーでした。来年は、日本からの参加者は今年のメンバーと同じで、アメリカからの参加者はまた新たに募集するそうです。このように毎年半分の参加者を入れ替えることにより、2年で40人の相手国側参加者と知り合えるのです。

<参加者の顔ぶれ>

2001年の日米リーダーシップ・プログラム 今年の日本からの参加者の顔ぶれは、私の他に、航空自衛官、IT関連企業の管理職、神戸市職員、通産省(現経済産業省)からWTOへの出向者、大阪大学大学院助教授、ソニーの社員、トヨタの社員、日銀からIMFへの出向者、神戸女学院大学専任講師、労働団体の職員、読売新聞記者、外務省からOECD日本政府代表部への派遣職員、兵庫県職員、自治省(現総務省)から京都市への出向者、玉川大学専任講師、富士通総研シニアコンサルタント、IBM社員、ニューヨークにあるUBSペインウェバーの社員、電通総研の研究員、そして民主党の参議院議員という構成でした。このうち女性は4人でした。一方アメリカ側の参加者は、銀行のIT担当者、メイン州の州議会議員、デンバー大学の学部長、半導体協会の部長、作曲家、上院議員の補佐官、預金保険公社の職員、国会図書館のチーフ、国際NGOの幹部、ワイオミング州の財団職員、スタンフォード大学のカリキュラム担当者、コンサルタント会社の社長、食品会社のブランド担当者、アーカンソー州リトルロック市のアシスタント・シティマネジャー、アメリカ陸軍中佐、セサミ・ストリートを作っている会社の副総裁、米日財団の職員、国際渉外弁護士、中学校の校長先生というメンバーで、女性はこのうち7人でした。

<プログラムの内容>

 プログラムの主な内容は、各トピックに応じた著名な講師による講義やプレゼンテーションがまずあり、その後質疑応答や小グループに分かれてのディスカッションをするといったものでした。今年のトピックは、「日本の歴史と文化」、「日本の政治」、「日米経済関係」、「環境問題」、「教育問題」、「家族・ジェンダー・宗教」、「IT」などなどでした。アメリカ側の参加者20人のうち約15人が日本訪問は初めてということもあり、前半は「日本」についての大学の先生による長い講義が多く、日本人の私としては、もう少し講義を短くしてディスカッションに時間を割いた方がよかったのではないかと思いました。それ以外では、一般的に政治の話が半数を占めました。一番盛り上がったのは、自民党の衆議院議員・河野太郎氏、東京大学教授の田中明彦氏、それにコロンビア大学教授のジェラルド・カーティス氏の三人による「新政権下の日米関係」と題したパネル・ディスカッションでした。その他に講師陣としては、元駐日アメリカ商工会議所会頭のグレン・フクシマ氏、無所属の衆議院議員で兵庫県選出の山口つよし氏、自由党衆議院議員で最近田中真紀子外務大臣に論戦を挑んで有名になった達増拓也氏、インターネット・ショッピング「楽天」社長の三木谷浩史氏、東京大学名誉教授の本間長世氏、日本国際交流センター会長の山本正氏などが続々と登場しました。会議以外にも、夜を中心に「社会活動」の方も充実しており、カラオケ、利き酒、温泉体験、盆踊り、京都観光などなど、アメリカ側からの参加者には「日本の夏」を満喫してもらえたことでしょう。

<ヤスクニ参拝>

 会議の概要を少し紹介したいと思います。盛り上がったパネル・ディスカッションでは、まず河野太郎氏が終わったばかりの参議院選の様子を生々しく語ってくれました。今では有名になってしまった田中真紀子外務大臣の「候補者はどなたですか事件」や、選挙戦の応援演説における小泉首相の恐るべき集客能力などをユーモラスに話していました。日本政治の専門家カーティス教授は、「靖国参拝問題を巡って、小泉首相は数週間後に重大な局面を迎える。参拝を強行すれば中国や韓国の反発で外交問題に発展するし、あれだけ頑固に主張していた参拝を中止すれば、首相の言動が信用されなくなる。そもそも靖国参拝などということを口にするべきではなかったのだ」と述べていました。あとでアメリカ人の参加者数人から、「ヤスクニ神社とは何なのか」と尋ねられました。このパネル・ディスカッションでのパネリスト三人に共通していた意見は、小泉内閣が果たして構造改革を実行できるのかどうかということはちょっと予想不可能だということでした。田中教授は「現在の日本がやらなければいけない改革とは、いかなるひとりの首相やひとつの内閣では到底できない性質のもので、まだまだ何年もかかる」というようなことを言っていました。その後のディスカッションでも、アメリカ人から「果たしてコイズミは日本の改革に成功すると思うか」と聞かれて、私の答えはこの田中教授の意見に近くて、「小さないくつかの改革には成功するかもしれないが、大きな改革は無理かもしれない」というものでした。

<米軍基地問題>

 やはり現代の日米関係は、この問題を抜きにしては語れないようです。小グループでのディスカッションで、米軍基地問題も取り上げられました。私が「この問題に関しては、ふたつのイッシューを区別して考えるべきだ。ひとつは、米軍の日本への駐留が本当に必要かどうかということ。そしてもうひとつは、仮に必要だとしても米兵による犯罪の多発にどう対処するかということ」と言うと、あるアメリカ人は「そんなことを言っても、兵士というのは人を殺す訓練を受けた集団だ。そういう兵士たち、特に若い兵士たちが祖国を離れ家族を離れて基地の中で暮らすとなると、ある程度の犯罪が起きるのはあたりまえだ。自分だって基地のそばには住みたくない」と切り返してきました。これに同調するアメリカ人もいましたが、中には「犯罪を当然視するなんて、そんな意見は無責任極まりない」というアメリカ人もいてホッとしました。結局、米兵による犯罪という単発的な事件に左右されることなく、冷戦後の極東地域の安全保障を再検討することにより、本当に日本に米軍の駐留が必要なのか、必要だとすればどの程度の規模が妥当なのかを決めるべきだ、という当たり前の意見に収斂しました。まあ、この当たり前の再検討が、全然実行されていないのですが。

<京都プロトコール>

 今最もホットな話題で、地球温暖化の抑制を目指した「京都プロトコール」を巡るディスカッションもありました。ご存知のように、アメリカのブッシュ政権はこの京都プロトコールからの脱退を決めています。ブッシュの言い分は、「アメリカは地球環境問題には人一倍関心を持っているが、この京都プロトコールは全く機能しないから批准しない」というものです。私が「現在の京都プロトコールが機能しないというならば、その内容をどのように変えれば機能するのかということをアメリカ政府は世界に示すべきだ」と述べると、多くのアメリカ人も頷き、「全くその通り。帰ったらブッシュに話しておくよ」と言ってくれました。

<家族の定義>

 アメリカでは、家族の定義というものが急速に変わってきているらしい。あらゆる結婚のうちの約半分は離婚に終わるし、同性のカップルにも扶養手当や健康保険などのベネフィットが適用になるケースが増えるなど、様々な家族の形態が社会的に認められるようになってきているということです。ちょっとびっくりしたのは、「アメリカでは、黒人男性の約3分の1が過去に何らかの犯罪を犯したか、現在刑務所に服役中のどちらかで、こういう状況では黒人女性はまともな結婚相手を見つけることが極めて難しい」という黒人参加者の発言でした。これはかなり深刻な社会問題だと思います。私は、「日本人の高学歴女性も結婚相手探しに苦労しているらしい。日本人の男性は自分より低学歴の女性を好み、女性は自分より高学歴の男性を好むので、結果として日本人の高学歴女性と低学歴男性はあぶれてしまう」という以前何かで読んだ説を披露しました。このトピックの後半の議論は、仕事と家庭とのバランスに話題が移り、日本の大企業から参加した中堅社員が「毎日うちに帰るのは午前2時だ」と言うと、アメリカ人は全員信じられない様子でした。こういうことを聞くと、自分も日本に帰るのはもう無理かなあと思います。

<日本の選挙キャンペーン>

 ゲスト・スピーカーで登場した山口つよし氏(無所属)と達増拓也氏(自由党)の二人の衆議院議員が、日本の選挙キャンペーンについて似たような話をしてくれました。この二人は、いずれも小沢一郎氏に気に入られて外交官から政治家に転進したそうです。山口氏は、「最初の選挙で2万軒の家庭を訪ねたが落選。3万軒訪ねれば当選するという小沢氏の言葉を信じて、2度目の選挙では自転車で3万軒を訪問して当選を果たした」そうです。達増氏は、「選挙戦では一日に3千人の有権者と握手をしないといけない。ある時は、田んぼの向こうにいるおばちゃんに握手をしようとして慌てたら、転んで足を骨折した」と言ってました。私は山口氏への質問で、「将来政治家になることも考えていたのですが、選挙で3万軒も訪問しなければならないということを知って落胆しています。次の選挙でも3万軒訪問するのですか」と聞くと、「次もできるだけ多くの家庭を訪問する。有権者との実際の触れ合いが民主主義の基本だ」というようなお答えでした。達増氏へは、「現在の小泉首相の人気は凄まじいですね。一方、あなたのボスである小沢さんの人気は、以前に比べてかなり衰えたように感じます。この二人のリーダーの違いは何ですか」とちょっと意地悪な質問をしました。達増氏の答えは「小泉さんは、政策の話をこちらが聞いても、うまくはぐらかして国民がもっと関心のあるような別の話題にすり替えてしまう。それが彼の手法です」というもので、小沢さんのことについては触れてくれませんでした。

<その他の名言>

 その他の講師の方々の、印象に残ったいくつかの言葉を紹介したいと思います。「日本のコーポレート・ガバナンス(企業統治)は最近変化の兆しがあって、企業の役員会に、ある国の元大統領(これは、おそらくフィリピンのアキノさんのことでしょう)など外部の人材を登用するようになってきた。しかし、役員の構成が変わっても、実際のガバナンスの変化はまだ顕著ではないようだ」というのは、グレン・フクシマ氏。「楽天」の三木谷氏は、「三木谷でもできたんだから自分にもできるんじゃないかという勇気を、起業家を目指す人たちに与えたい」と語っていました。日本国際交流センターの山本氏は、日本社会を変える六つの勢力として、(1)NGOやNPOなどの市民団体、(2)女性、(3)若手政治家、(4)地方自治体、(5)海外に住む日本人、(6)日本に住む外国人、を挙げていました。私も海外に住む日本人として、日本に向けた情報発信を今後も続けていきたいと思います。

<プログラムの改善点>

 最終日に、今後のこのプログラムの改善点について話し合いました。参加者の構成について、現在ワイオミング州に勤めているアメリカ人から「出身地域のバランス」にもっと配慮してはどうか、という意見がありました。なるほど、アメリカ側の参加者は首都ワシントンDC周辺からの参加者が最も多く、ニューヨークやカリフォルニア州の大都市からの参加者も結構おりました。しかし、ワイオミング州、コロラド州、アーカンソー州、メイン州からの参加者もあり、改善の余地があるとはいえ、結構いろいろな所から来ているなあというのが、私の印象でした。日本側は、私を含めて数人の海外在住者を除くと、他の全てが首都圏か関西圏からの参加であり、こちらの方はもっと積極的に「地方のリーダー」を発掘する必要性があるのではないかと感じました。

 私は、参加者の「ジェンダー・バランス」にももっと配慮すべきではないかと指摘しました。特に日本からの女性参加者が20人中たったの4人というのは少なすぎました。雑談の時に話題になったのですが、日本からの参加者にいわゆる官僚が多いということを言う人もいました(私も国際公務員という官僚のひとりですが)。もっと民間人を増やすべきだというその人は、「ジェンダー・バランス」にも考慮すると、民間人の女性を増やせばいいので、JALかANAの国際線スチュワーデスを参加させるのが手っ取り早い解決策だと、半分冗談で言っていました。「参加者のジェンダー・バランスはあまり気にならなかったけど、講師陣にひとりも女性がいなかったのにはとてもがっかりした」と言っていたアメリカ人女性もいました。

<終わりに>

 今回幸運にもこの「日米リーダーシップ・プログラム」に参加でき、大変充実した一週間を過ごさせていただきました。あらためて、米日財団の関係者、講師の方々、そして一緒に参加した仲間に感謝したいと思います。個人的にも日米双方に新たなネットワークができ、とても有意義でした。例をあげると、参加していたメイン州の州議会議員さんとは、これを機にメイン州と青森県の新しい交流プログラムを何かスタートさせよう(メイン州と私の出身地青森県は姉妹関係にあります)と、約束しました。また、リトルロック市のアシスタント・シティマネジャーとは、私の専門が地方自治で、最近も地元の新聞に「アメリカのシティマネジャー制度」について書いたことから、これからも情報交換をしようと話し合いました。日本から参加の仲間とも、今後とも公私ともに連携を取り合いたいと思っています。来年8月のシアトルでの会議で、新たな20人のアメリカ人若手リーダーに会うのが今から楽しみです。最後になりましたが、講師の方々の発言内容など、もしかしたら聞き間違いなどで不正確な点があるかもしれません。その際は、文責は一切私にありますのでご理解ください。

2001/08/16 夏休み中のワシントンDCにて 慶長寿彰


2001年の日米リーダーシップ・プログラム



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