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第6章 スパイス王国の食文化




6.スパイス王国の食文化

 外国に行って、その国に馴染めるかどうかは、多分にその国の食事が自分の口に合うかどうかにかかっている。そういう意味では、インドネシアの食事は日本人にとって受け入れやすいものであろう(もっとも、ジャカルタには日本料理店も多いが)。インドネシアの代表的料理ナシゴレン(焼き飯)、ミゴレン(焼きそば)、サテー(串焼き)は、辛さを除いては日本のそれらとほとんど変わらない。この国の料理は全般的に味が濃く、辛いものは滅法辛く、甘いものは滅法甘い。しかし、この辛さと甘さはとても相性がよく、極辛の料理のあとの甘いマンゴー・ジュースは格別である。スパイス王国インドネシアでは、どんなレストランに入っても、どこの家庭の食卓にも必ず「サンバル」と呼ばれるチリソースが置いてあり、何にでもこれを付けて食べる。私もインドネシアに行くたびにこの「サンバル」を買って帰ることにしている。日本にいてもインドネシアが恋しくなると、よく六本木の「ブンガワン・ソロ」や、新宿の「インドネシア・ラヤ」などに出かけてインドネシア料理を楽しむのだが、こちらの味は日本人向けのせいか幾分本場とは異なるようだ。

 最初にインドネシアを訪れて以来、「何故インドネシアには太った人がいなくて、スリムな人が多いのだろう」ということが、私の最大の疑問であった。貧しい食生活のせいなのか、宗教上の制約もあって肉は低カロリーの鶏肉を主に食べるせいなのか、暑いから発汗量が多いからなのか等々、私なりにいろいろと考えていたのであるが、最近ようやくもっともらしい答えを見つけた。彼らが好んで食べる唐辛子やチリに含まれるカプサイシンという物質が、脂肪を分解しエネルギーに変える働きがあるらしいのだ。実際の要因はもっと複雑なのであろうが、この国の料理の辛さもインドネシア人が痩せている理由のひとつになっているのではないかと私は思う。最近は日本でも激辛ブームであるが、ダイエットにはスパイスをたっぷりときかせたエスニック料理がいいかもしれない。唐辛子に代表されるスパイスには、肥満防止効果の他にも、胃液の分泌を増加させて消化作用を促し食欲を増進させるといった薬理効果や、腐敗菌の増殖や病原菌の発育を抑制する防腐・抗菌効果などもあり、正に熱帯の食生活には欠かせないもののひとつであると言えよう。

 それからインドネシアと言えばトロピカル・フルーツを忘れてはいけない。独特の臭い(下水道を通ってきたカスタードに例えられる)のために持ち込み禁止のホテルがあるという果物の王様ドリアンや、女王マンゴスチンからパパイヤ、バナナ、パイナップル、マンゴー、ランブータン等々、果物好きの人にとっては天国である。道を歩いていると、冷やした果物を売り歩く行商人をよく見かける。フレッシュな果物も最高だが、バナナをヤシ油で揚げたピサンゴレン(バナナの天ぷら)もお薦めである。これなら日本でも手軽に作れそうだ。

 私はケンタッキー・フライドチキンが好きで、日本でもよく利用するのだが、インドネシアのケンタッキーでは驚くなかれ何とライスが食べられる。インドネシアでも、都市の繁華街を中心にファースト・フードのレストランが多く見られるが、マクドナルドは人気がなく、ケンタッキーが流行っているそうである。その理由は、ハンバーガーはご飯のオカズにならず、フライドチキンはオカズになるからだという。なるほどケンタッキーでは、チキンをオカズにしてご飯を食べている人々が多い。やはり、私たちと同じ米が主食のアジア人なのである。このあたりは親近感を感じて何とも嬉しくなってしまう。日本のケンタッキーではライスを売ってはいないが、おそらく他のアジアの国々にもこのようなケースがあることだろう。西洋で生まれたファースト・フードが、アジアのニーズを受け入れているということが、非常に興味深く感じられた。最近日本のマクドナルドの新メニューとなった、チキン・タツタとも通じるものがある。

 さてその米を作る田んぼであるが、ジャワやバリでは山の斜面に段をなす棚田が多く見られる。私も、ジャカルタからバンドンへ向かう列車の中から、美しい棚田を目にすることができた。天国への階段のように上へ上へとどこまでも延びる棚田は、正に大地を利用した芸術と言えよう。限界に近いまでのこのような土地利用を見ると、人間の開拓能力の偉大さを感じざるを得ない。安定した降雨パターンと肥沃な火山灰土壌が、この棚田に適した条件だという。だが、このような究極の土地利用や、二期作・三期作をも可能にさせる自然条件にもかかわらず、インドネシアは爆発を続ける胃袋を、自国の農業だけで支えるには至っておらず、大量の米を輸入している。今後、人口増加の抑制とともに、米の生産性を高めることが是非とも必要となってくるであろう。(第6章終わり)

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