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最終章 いつかまたインドネシアへ




9.いつかまたインドネシアへ

 インドネシアの最大の魅力は、何と言っても素朴で暖かいインドネシア人である。彼らは人の心を引きつける不思議な力を持っている。初めて会った人でもなぜか懐かしく思えてしまう、そんな感じがする。私も今ではインドネシアに多くの友人ができ、彼らとは一生つきあっていくことになるであろうし、またそう願っている。JICAのプロジェクトに参加していたインドネシア大学の学生達は、「自分はインドネシアの大統領になるから、お前は日本の総理大臣になれ。そうすれば日本とインドネシアはすばらしい友好関係を築ける」とすごいことを言っていた。彼らは超エリートだから、その可能性があるのかもしれないが、こっちの可能性は限りなくゼロに近い。でも平和なんていうのはそんなものかもしれない。この地球上にひとりでも多くの友人を増やすことが、平和に一歩近づくことになるのかもしれない。

 屈託のないインドネシア人は、子供も大人も実によく笑う。そして本当に人懐っこい。JICAのプロジェクトで貧民街の家を一軒一軒まわってアンケートをお願いした時に、何度も「ジュースを飲んでいかないか」と誘われた。カメラを向けると大急ぎで服を着替えてきたおばさんもいた。裸足で新聞を売る男の子も、行商のおじさんも、皆本当に素晴らしい笑顔をしていた。どんなに貧しくても、汚れた服を着ていても、彼らの笑顔は「物の豊かさ」の陰でいつの間にか日本人が忘れてしまった「心の豊かさ」の表れである。

 それからインドネシア人は実によく喋る。彼らの最大の楽しみは、集い、語らい、そして歌うことである。彼らの会話はユーモアに満ち溢れ、これこそがシンプルで真に人間らしい娯楽なのだと私は思った。とかく日本人は高級志向で、娯楽の質までを求めたがる。いい服を着て高級なレストランや洒落たバーへ行かなければいけないような錯覚をしている。ビデオやファミコンがなければ楽しめない。しかし彼らは、友人が集まると何時間でもお喋りをし、よく笑い、ギターに合わせて歌い続ける。私は何度もこんなパーティーを経験したが、本当の楽しさとはこういうものなのだと実感した。

 今年はインドネシア国際観光年(ヴィジット・インドネシア・イヤー)である。インドネシアは今、石油に代表される限りある天然資源による外貨獲得から、その豊かな自然を売り物にして、国をあげて観光産業への脱皮を図ろうとしている。バリ島を中心に、この国を訪れる日本人も多いことだろう。旅の感動は、決して土産物を買い漁ったり、現地で羽目をはずしたりすることなどではなく、異なる文化との出会いであり、その文化に育まれた人々との出会いである。それは、自分の文化を見つめなおす唯一の機会であり、新しい自己の発見でもある。私は幸運にもインドネシアのあちこちで、豊かで素朴な人情とエキゾチックな文化に触れ、旅の感動を味わうことができた。目を閉じれば、ガムランの調べとともに彼らの人懐っこい笑顔が思い浮かぶ。あの最高の笑顔を探しに、いつかまたインドネシアへ。(最終章終わり)

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