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LOCAL PERSPECTIVE

「地方分権に競争原理の導入を」




 昨年の国会では地方分権推進関連法案が成立し、日本も地方分権の実現に向けてようやく一歩を踏み出そうというところであろうか。地方分権を巡っては既に様々な議論がなされているが、それでは具体的に「どのような地方分権を実現するのか」という点はなかなか見えてこない。私は、現在の日本のように中央依存体質が極めて強い国においては、地方分権を実現するプロセスをもっと重視すべきであると思う。以下に、競争原理とインセンティブの導入により、地方自治体の行政能力の強化や地方行政の透明性の向上、住民の政治意識の醸成にも寄与しうる地方分権の実現プロセスを簡単に述べてみたい。

 地方分権の原則は、地域の問題はその地域で解決しようということである。霞ヶ関は自治体の能力不足を懸念するが、民主主義の原則の下に選ばれた首長や地方議会であれば、彼らの失敗する自由も認めるべきだと思うし、行政能力は権限を与えられて初めて付いてくるものであろう。分権の受け皿としてよく話題にのぼる市町村合併については、確かに複数の市町村が合併すれば住民あたりの首長、地方議員、役人の数が減り、規模の経済により住民サービスの効率は向上する。ただ合併はサービスの質や効果、行政能力といったものとは直接関係がなく、合併のみを分権の前提条件にするのは大きな疑問である。

 私は自治体の規模に関わらず、住民の関心度が高く、行政能力がある分権志向の自治体に対して優先的に権限と財源を移行する「競争型」の分権プロセスを提案したい。様々な客観的定量指標の導入により、各指標の到達度を自治体間で競わせ、到達度の総合点がある一定のレベルに達した自治体に対してのみ分権を実施するのである。指標の到達度は公表するので、中央官僚の裁量によりモデル自治体を指定するという従来のやり方とは異なり、自治体の総合点を客観的に判断できるので、自治体の能力不足を理由に分権に抵抗する霞ヶ関に対しても説得力を持つ。競争原理とインセンティブの導入により、住民の政治意識を醸成し、自治体の能力向上にも寄与するものである。自分の身近な問題は自分達で解決したいと願う分権志向の住民は、首長や地方議会、役所に圧力をかけて、指標の到達度を監視するであろうし、あるいは自らの行動で指標の到達度を上げることもできる。要するに、頑張っている自治体には権限と財源を与えて、意識の低い自治体は現状のままというシステムを構築するのである。税収を上げる努力をしない自治体に報酬を与えるような地方交付税制度や、官官接待と陳情合戦の原因になる補助金制度といった現在のシステムから、競争型インセンティブ方式への移行が必要なのである。

 それでは具体的にはどういう指標の導入が望ましいのか。私は

「情報公開度」
「住民参加度」
「女性登用度」
「地方自立度」
「サービス効率度」
「地方メディア発展度」 などを提案したい。

 まず「情報公開度」であるが、これは情報公開条例の制定や、地方議会や各種審議会の議事録などの公開の程度により全国の自治体の格付けが可能であろう。

 「住民参加度」は、過去数回の地方選挙での投票率や、都市計画決定などの際の住民参加のしくみや実効性などにより判定する。

 「女性登用度」は地方公務員の役付き職員のうちの女性の割合、地方議会議員や各種審議会委員の女性の割合によって評価できる。

 「地方自立度」は自治体の歳入に対する地方税収の割合によって判断するが、大事なのは絶対値で比べるのではなく、過去数年間でのこの割合の伸びにより「自立度」を判断することにより、地方税収を上げるインセンティブを与えることである。

 「サービス効率度」は住民当たりの各種サービスに関わる支出で判断するが、これも過去数年の伸び率を採用することにより、サービス効率を増すインセンティブになるし、合併した自治体はこの指標の到達度が高くなることが予想される。

 「地方メディア発展度」は、分権による地方レベルの汚職増加に対処するには地方メディアの育成が不可欠である、という観点にたち、独立した地方メディアの本社数などにより判定する。

 このような各種指標により自治体を客観的に点数評価し、総合点がある一定に達した自治体から分権を実施するのである。

1999年春 慶長寿彰



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