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世界銀行職員  慶長寿彰




2003年6月8日に放送された、NHK「地球ラジオ」でのインタビューです。「地球ラジオ」という番組内に、海外で活躍する日本人を紹介する「にっぽんチャチャチャ」というコーナーがあり、そのコーナーに出張中のスリランカより電話で出演しました。


Q:慶長さん、私たち世界銀行という名前は聞いたことがありますが、具体的にどんな業務をしているところなのか、まずそこからお話いただけますでしょうか?

A:世界銀行は国連の専門機関で、皆さんが利用されている一般の銀行とは全く違います。主な業務は、発展途上国と呼ばれている貧しい国々の発展をお手伝いするための資金を貸し出しす事です。第二次大戦後、1945年に発足しました。


Q:日本もお世話になっているんでしょうか?

A:日本は今では世界銀行にお金を拠出する側になっていますが、日本も戦後の復興期に世界銀行からお金を借りて、いろいろな物を建設したという過去があります。代表的なものは、東海道新幹線、首都高速道路、黒部ダムなどが世界銀行の協力で作られました。


Q:そうだったんですか。それでは、慶長さんがその世界銀行でお仕事をするようになったのは何故でしょうか?

A:学生時代に訪れたインドネシアで貧富の格差を目の当たりにし、「世界の不公平を正す為に自分も何かしたい」と強く心に思ったことです。その時が初めてのいわゆる発展途上国と呼ばれる国への訪問でしたので、スラム街などを訪れてかなりショックを覚えました。生まれた国が違うというだけで、このような不公平は何かが間違っていると思い、自分に何かできないだろうかと考えるようになりました。


Q:世界銀行で、慶長さんが担当されているお仕事はどのような内容ですか?

A:世界銀行はいろんなプロジェクトにお金を貸し与えていますが、私はずうっと都市問題や地方自治を専門にやってきています。途上国の都市が環境問題などを自分達で解決できるように、途上国の自治体の強化育成などのお手伝いを主にやっているのです。最近は、これに加えて、内戦や紛争後の戦後復興の仕事も増えてきました。


Q:これまで慶長さんがお仕事で訪れた国で、印象に残っている国などはありますか?

A:仕事でいろいろな国に行きますが、印象に残っているのはアフリカではエリトリア、アジアではブータンですね。エリトリアへは、エチオピアとの戦争終結後に戦後復興の仕事で、かなり前に行きました。ブータンへは、地方都市開発のプロジェクトで、ごく最近行きました。共に小さな国ですが、とても勤勉で誇り高い国民性にはびっくりさせられました。日本から見れば貧しい国に見えるかもしれませんが、こうした国々で一般の人々と接していると、心の豊かな人が多く、経済的な豊かさと精神的な豊かさは全く別だなあと感じることも多いです。仕事では途上国政府の役人との交渉が中心になりがちですが、首都にいて政府を相手にしていただけでは見えないこともありますので、なるべく現場で住民達との触れ合いを持つように心がけています。


Q:どんな国で、どんな思い出がありますか?

A:結構、不思議な体験というか、恐い体験もいくつかあります。パキスタンで誘拐されかけたこともありましたし、バングラデシュのガンジス川というとても大きな川のど真ん中で、乗っていたフェリーが座礁したということもありました。その座礁事件は、ちょうど川底が土砂の堆積で浅くなっていたのと、あの国のフェリーには人や車を詰め込めるだけ詰め込むので、フェリーの重量がオーバーして沈み気味だったために起こったんだと思います。ご存知のようにガンジス川の下流はとても川幅が広いので、その川の真ん中にいると、右を見ても左を見ても川岸が見えません。結局、レスキュー隊が来るまで3時間も川の真ん中にいました。まるで、タイタニック号のような体験で、本当に恐かったです。


Q:慶長さんは現場主義を実践されて、現地でも様々な地方に足を運び、いろいろ見て決断をなさるということですから、そういった危ない体験もいろいろあるんでしょうね。

A:これ以上ないように祈っています(笑)。


Q:普段は、アメリカの首都ワシントンDCの世界銀行本部でお仕事をされている慶長さんですが、今はスリランカにいらっしゃるんですね。

A:そうです。今はスリランカから話しています。


Q:今回のスリランカでのお仕事はどの様な内容でしょうか?

A:スリランカでは、北部を中心に政府軍と少数民族のタミール人勢力が20年近く紛争を続けています。昨年ようやく停戦合意が成立しましたが、再びその停戦合意が暗礁に乗り上げ、現在は恒久平和を成し遂げられるか、再び内戦状態に逆戻りするかの大事な正念場なのです。今回スリランカに来ているのは、和平プロセスがうまく行った場合の、内戦で荒廃した地域の復興を支援するためです。最近ではアフガニスタンやイラクの戦後復興が話題ですが、スリランカもまた内戦終結と戦後復興のために国際社会の支援を必要としています。


Q:戦後の復興を必要としているそういった国々に、私達も何らかの協力が必要なのですね。

A:そうですね。ひとつは、日本にいる方々にも、もっとそういう国々の事情に関心を寄せていただければなあと思います。


Q:世界各地を飛び回ってお忙しい慶長さんですが、今後の抱負を聞かせて頂けますか?

A:抱負というか、世界銀行が目指しているのは、世界中から貧困を撲滅させることです。貧困がなくなれば、今世界の各地で起こっている紛争もかなり減るはずです。そういうことに、少しでも自分が貢献できたらと思います。要するに、自分達が生きているこの世界をもっと良くしたいということです。まるで現実離れした理想論に聞こえるかもしれませんが、理想を掲げて、その理想に少しでも近づくようにという気持ちを持って、微力を注いでいきたいと思います。


Q:今後のご活躍をお祈りします。そして、どうか安全で、と付け加えたいと思います。どうも有難うございました。

A:こちらこそ有難うございました。 (2003年9月掲載)



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