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WASHINGTON 通信(October 2002)



一日早く帰国 (2002/10/14)


 スリランカのコロンボからバンコックと成田を経由して、昨日ワシントンに戻りました。実は予定より一日早い帰国でした。ワシントン界隈ではご存知のように無差別連続射殺事件が起きているので、家族のことが心配で、少しでも早く帰れる便に急遽チケットを変更したのです。そのせいで、帰路はバンコックの空港に2時間半、成田のホテルに15時間いただけで、あとは合計20時間以上をたて続けに三つの飛行機の機内で過ごしました。疲労困憊。

 昨日、日曜日の成田空港はいつものことですが、とても混雑していました。でも昨日の混雑はタダモノではなかったんです。出国審査場への入り口は、成田では今まで見た事もないくらいの長い列ができていました。長い列が一度折れ曲がって、また別の方向に蛇行していたので、文字通り「長蛇の列」と言ったところです。あんなに長い列を見たのは、昔の後楽園球場の巨人戦に並んでいた人たちの列以来でした(東京ドームではなく、後楽園球場というところが古いかも!)。なんか、日本は連休で(いつから体育の日が月曜日になったんだろう?)、それで海外に出かける人が多くて混んでいたようなんだけど、ともあれ、もうあんまり成田空港は利用したくないですね。特に週末は避けるようにしよう。



コロンブスの卵スープ (2002/10/16)


 ワシントンDCの正式名は、Washington District of Columbia(ワシントン、コロンビア特別区)といいます。その名前の「ワシントン」の方は、当然アメリカ合衆国初代大統領のジョージ・ワシントンから来ていて、一方、「コロンビア」とは、アメリカ大陸の発見者クリストファー・コロンブスに因んでいるということです。ちょっと勉強になったでしょ。

 アメリカでは昨日10月の第二月曜日は、そのコロンブスが1492年にアメリカ大陸を発見したことを記念する祝日でした。その名も「コロンブスの日」です。このコロンブス、ヨーロッパからの移民たちにとっては偉大な英雄かもしれませんが、コロンブスがこの大陸を発見する以前からこの地に住んでいた所謂アメリカン・インディアン(ネイティブ・アメリカンとも言う)たちにとっては、侵略者という側面もあるのです。昨日もそんな新聞記事が載っていました。

 話は飛びますが、コロンブスと言えば「コロンブスの卵」ですよね。三省堂国語辞典(第五版)によると、「コロンブスの卵」とは、「コロンブスが卵の端を割って立てて見せた故事から、気が付きそうで気が付かない事実」のことだそうです。「コロンブスの日」だから卵、というわけではなかったのかもしれませんが、昨日我が家のランチに「卵スープ」が出てきました。これは英語では「Egg Drop Soup」といいます。「コロンブスの日」を記念して、参考までに卵料理の英語名を以下に書き留めておきます。僕自身、卵料理は大好物なのですが、ちょっと高めのコレステロールが気になるので、最近はあんまり食べないようにしています。

・Egg Drop Soup (とき卵のスープ)
・Scrambled Egg (いり卵というよりも、スクランブル・エッグ)
・Fried Egg (目玉焼き)
・Sunny Side Up (片面焼きの目玉焼き)
・Over Easy (両面焼きの目玉焼きで黄身はやわらかめ)
・Over Hard (両面焼きの目玉焼きで黄身はかため)



一箇所に佇まず、素早くジグザグに動く。 (2002/10/17)


 ワシントン界隈で起こっている無差別連続狙撃事件は、本当に恐ろしいです。月曜の夜にまた犠牲者が出ました。これで10月2日以来、死者が9人で、重傷者が2人です。いずれも遠距離から弾丸一発で仕留め、車で素早く逃げ去るというプロの手口です。誰が何のためにこんなことをしているのか。テロリストなのか、単なる精神異常者なのか。いずれにしても、一刻も早い犯人逮捕を願っています。

 月曜の夜に女性が撃たれたのは、ワシントン郊外のヴァージニア州フェアファックスにある「ホームデポ」という日曜大工用品や家庭用雑貨を売っている大型店の駐車場でした。この場所は、僕の住んでいるヴァージニア州アーリントンとは目と鼻の先で、実際、僕もこの「ホームデポ」には何度も何度も訪れたことがあります。本当に背筋が寒くなります。

 撃たれた11人のうち、4人はガソリン・スタンドで給油中でした。その他に多いのは、ショッピング・モールや大型店の広い駐車場で撃たれるケースです。見通しのいい、広めの空間が危険みたいです。車にガソリンを入れたり、買い物をしたりという普通の生活行動が、今や命がけなんです。僕も火曜日にショッピング・モールに出かけ、そしてガソリン・スタンドで給油をして帰ってきましたが、車をとめて車から出る瞬間は、本当に恐かった。思わず辺りを見回してしまいました。車にガソリンを入れている時間が、なぜかとても長く感じました。これはハッキリ言って、かなりのストレスです。ワシントン近辺では、なるべく外出を避けている人も多いみたいですし、そして、ほとんどの学校では、外遊びや屋外での体育は控えているようです。

 昨日のワシントン・ポストには、安全のためのヒントが載っていました。訳して以下にコピーしておきます。

・屋外では動き続ける。動いていれば命中する確率は減る。
・屋外では一箇所に佇まず、素早くジグザグに動く。
・屋外で一箇所に留まる必要のある時は、なるべく暗い所を選ぶ。
・屋外で立っている必要のある時は、何かの物陰に隠れ、身を低くする。
・屋外では周囲によく注意を払う。



悲しみにさよなら (2002/10/19)


泣かないでひとりで 微笑んで見つめて
あなたのそばにいるから♪
夢にまで涙があふれるくらい
恋は壊れやすくて
抱きしめる腕の強さでさえ何故か
揺れる心をとめられない
でも 泣かないでひとりで 微笑んで見つめて
あなたのそばにいるから♪

 今回の出張の際、全日空の機内オーディオで、安全地帯のこの曲を聴きました。確かこの曲が流行っていたのは大学生の頃だったので、もう15年以上は前の歌です。かなり好きでカラオケでもよく歌った思い入れのある曲だったので、機内で目を閉じて聴いていると懐かしさでジーンときてしまいました。この「悲しみにさよなら」以外にも、今回の出張中はJALではアリスの「秋止符」、シンガポール航空では松田聖子の「風は秋色」などを楽しみました。

 飛行機の機内オーディオというと、以前は僕にとって日本の最新ヒット曲を仕入れる貴重な場でした。全日空では「サウンド・プラネット」、JALでは「Jポップ・ナウ」などのコーナーでじっくりと流行の歌を聴き、いいなあと思う曲は成田のCD屋で買ったりしていました。実際、数年前までは、出張などで日本に立ち寄るとCDを買い漁っていたものです。1994年の夏に日本を発ったとき、巷ではミスチルの「イノセント・ワールド」が流行っていました。それから数年間は、機内オーディオのおかげで、日本の新人歌手や最新ヒット曲をフォローできていたのです。たまに日本に帰ってカラオケで最新曲などを歌うと、「ワシントンにいるのにどうしてそんな歌を知ってるんだ?」と驚かれたものです。でも、それも「シャ乱Q」くらいまででした。それ以降は本当にさっぱりです。皆こうしてオジサンになっていくんでしょうね。ちょっと悔しいけど、まあいいや。

 という訳で、ここ数年は機内オーディオを聴くパターンがすっかり変わってしまいました。最新のヒット曲を聴いても知らない歌手の知らない曲ばかりなので、面白くないのです。もう、そういう歌を新しく覚えようというガッツがなくなったのかもしれません。そこで最近機内では、もっぱら「Jポップ・クラシックス」とか「ジャパニーズ・オールディーズ」というコーナーの懐かしい歌を中心に聴いています。そこで「悲しみにさよなら」や、「秋止符」に再会するというわけです。次の出張でもどんな懐かしい歌に出会えるか、ちょっとした楽しみになっています。



ワールド・シリーズ初出場初安打 (2002/10/22)


 ワールド・シリーズが始まりました。今年はアナハイム・エンジェルスとサンフランシスコ・ジャイアンツの対戦で、いずれもワイルド・カードからプレーオフを勝ち抜いての進出です。ワイルド・カードとは、各リーグ3地区で地区優勝できなかったチームのうち、一番勝率が高かったチームにプレーオフの最後の椅子が与えられるという制度です。要するにエンジェルスもジャイアンツも、ペナントレースでは勝てなかったけれど、プレーオフという短期決戦をうまく戦い勝ち抜いてきた敗者復活組なのです。

 ご存知のように、ジャイアンツにはあの新庄がいます。土曜日のワールド・シリーズ第一戦、相手投手が左腕ということもあって、新庄は9番指名打者でスタメンに抜擢されました。僕もテレビで見ていましたが、なんかワクワクしました。その新庄、第一打席は空振りの三振でしたが、第二打席で見事に右中間へのクリーン・ヒットを放ちました。第三打席も結構いい当たりのサード・ゴロでした。以前は伊良部がヤンキースでベンチに入っていましたが、日本人が実際にワールド・シリーズに出場したのは今回の新庄が初めてだということです。おまけに初安打。「記録はイチロー君にまかせて、僕は記録より記憶に残れば」という新庄ですが、「ワールド・シリーズ史上、日本人初安打」という記録にしっかり残りました。まあ、本当はこういうのに国籍を持ち出したくはないんですが...。

 実は、大リーグに来てからの新庄の打席を生中継で見たのは、今回が初めてでした。アメリカにいると言っても、ワシントン界隈では、隣町のボルチモア・オリオールズの試合は毎試合テレビ中継がありますが、それ以外はあんまりやりません。だから、イチローや新庄や野茂の試合をテレビで目にすることは、ほとんどないのです。彼らがプレーオフやワールド・シリーズに出てくれないと、見られないのです。日本では、こういう日本人選手が出場する試合は、ほとんど衛生放送で生中継するようですね。羨ましいです。アメリカの大リーグなのに、アメリカでは見られずに、日本にいた方が見られるとは皮肉なものです。ということで、今後のワールド・シリーズで新庄の打席に注目してみます。第2戦は欠場しましたが、まさか、これっきりっていうことはないでしょうね。状況にもよりますが、次は一発を狙ってほしいです。



51万7千4百22分の一 (2002/10/23)


 ワシントン界隈で起こっている無差別連続狙撃事件は、犠牲者が増えつづけています。日曜の夜に一人が撃たれ重体、そして今朝また一人が銃殺されました。今朝の事件は、これを書いている時点では、まだ一連の狙撃事件と同一犯人によるものかどうかは断定されていませんが、手口から見てほぼ間違いないという報道がなされています。そうなると犠牲者は13人で、そのうち10人が亡くなっています。ワシントン近郊では、学校を閉鎖するところもでてきました。今日の警察の記者会見によると、「犯人あるいは犯人グループは、明らかに全ての年齢、全ての人種、全ての性別、全ての職業の人たちを殺そうという意図があり、またそうする能力も持っている。皆さん、くれぐれも気をつけてください」ということでした。

 しかし一方で、過剰反応になってはいけないということを言う人も多くいます。ワシントン・ポスト紙によると、この犯人に撃たれて死ぬ確率は、51万7千4百22分の一なんだそうです。そんなのまず起こりえないじゃないか、という訳です(僕にとっては、これは結構高い確率に思えますが)。狙撃犯を怖れるあまり、日課のジョギングをやめたりして不健康になったり、恐怖心によるストレスから健康を害したりと、そっちのリスクの方が大きいんだから、恐怖心を捨てようというのです。さらに、アメリカでは年間130万人が紫外線による皮膚ガンを発症し、7千8百人が亡くなるそうですが、太陽に当たる方が、この狙撃犯よりリスクが高いらしい。あるいは、アメリカ人は年間7千6百万人が食中毒に罹り、そのうち5千人が亡くなるので、食中毒の方が怖いんだというのです。どうですか。こういう記事を読んで、「なあんだ、皮膚ガンや食中毒よりリスクが低いんじゃあ、狙撃犯なんか怖くないよ」と思えますか。僕はやっぱり狙撃犯の方が数百倍も、いや数億倍も怖いです。こんなの理屈じゃないってば。



フリーランスのテロリスト (2002/10/25)


 どうやらワシントンの無差別連続狙撃事件の容疑者が捕まったようです。犯人は二人でした。主犯格が元軍人で、やはりかなり射撃のプロだったようです。もうひとりが、その元軍人の養子で17歳の若者です。この二人は、車の中で寝ていたところを捕まえられたそうで、緻密な計画犯と思われていたのが嘘のような間抜けな逮捕劇でした。これを聞いて、今まで捕まらなかったのは犯人の知恵のせいではなく、警察の捜査に問題があったからではないかという気がしてなりません。この犯人たちとアル・カイーダとの関係は明らかになっていませんが、一説によると、主犯の男はオサマ・ビン・ラデンに共鳴しており、いわば、フリーランスのテロリストなんだそうです。こういう男が世界中にごろごろいるかと思うと、暗澹たる気分になります。フリーランスのジャーナリストや、フリーランスのアナウンサーならいいですが、フリーランスのテロリストなんてやめてほしいです。

 ともあれ、今回の逮捕で僕のストレスのレベルも多少は下がりました。特に、子供たちが外で遊べるようになるのは良かったです。それと、ハロウィンの前に事件が解決して何よりでした。これで出張にも行けます。でも、依然としてアメリカがテロの標的であることには変わりがないので、気を緩めないようにしないと。



身の細る思い (2002/10/29)


 ワシントンは肌寒い日々が続いています。秋が深まっているというか、既に初冬と言ってもいいかもしれません。ワシントンの木々の緑も大分色づいてきました。暦の上でも、アメリカは昨日から冬時間に突入しました。これで、日本とワシントンとの時差は1時間増えて、14時間ということになります。

 去年の冬は亜熱帯のブリスベンで過ごしたので、こんなに寒いのはかなり久しぶりの感じがします。2年ぶりの本格的な冬ということになるんですね。その2年の間に腰周りに脂肪が付いたようで、先日、手持ちの冬物のズボンがほとんど穿けなくなっていることを発見しました。早急に冬物のスーツを何着か買わないとなりません。肥満は心臓ばかりか、家計をも圧迫するんですね。それにしても、忙しさとストレスで身の細る思いをしているのに、どうして太るのだろうか。



ハロウィンと蜘蛛男 (2002/10/30)


 今年もハロウィンの季節がやってきました。ハロウィンとは、子供が変装して近所の家々を訪ね、「Trick or Treat?(何かくれなきゃイタズラするよ)」と言って、お菓子やキャンディをもらい歩くという変なイベントです。僕には、いまだにこのハロウィンというお祭りがそもそもどういう意味を持っているのか、勉強不足も手伝ってよく分かりません。まあ、うちの娘達は、お菓子がもらえるので喜んでいますが。

 ハロウィンというと必ず思い出すのが、あの「服部君事件」です。もうひと昔以上も前のことですが、確かあれはこんな事件でした。ルイジアナ州に留学していた服部君という日本人学生が、ハロウィンの晩に変装してある家を訪れました。服部君を強盗か何かだと勘違いしたのか、その家の住人は「Freeze(止まれ)」と叫んで、近づいてくる服部君を制止しようとしました。しかし、その制止を聞かずになおも近づいてくる服部君を、銃で撃ち殺してしまったのです。そして、アメリカの陪審制度がこの発砲者を無罪にしたという、まあ、そんな内容だったと思います(もし、記憶違いがあったら御免なさい)。今から振り返っても、どうも納得できない事件です。でも、考えようによっては、とてもアメリカらしい事件だったと言えるような気もします。

 さて、先週末には、娘達を連れてハロウィン・パーティーに二つ出かけました。今年は長女が子猫、次女はてんとう虫に変装しました。我が娘ながら、なんて可愛いんだろうと思いました。妖怪や幽霊のようなちょっと恐い格好をしている子供たちも結構いるんだけど、変装はやっぱり可愛い格好をした方がいいですよ。あの日、服部君はどういう格好をしていたんだろうか。ちなみに、今年一番多く目にしたのが、「スパイダー・マン」の格好です。映画の影響なんでしょうね。



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