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WASHINGTON 通信(April 2003)出張から帰って来て以来ワシントンは暖かい日が続いていたのに、この週末はかなり冷え込み、冬に逆戻りといった感じでした。3月30日の日曜日は、ワシントンでも一日中雪や霙が降ったり止んだりしていました。きのう31日の月曜日も、時おり雪が舞っていました。 3月末の雪というと、僕にはちょっとした思い出があります。あれは忘れもしない小学校5年生に進級する前の春休み、3月28日でした。その日、我が家は横浜から八戸に引越しする日だったのです。その日は、関東地方には珍しい春のドカ雪で、僕の記憶が正しければ数十センチは積もったはずです。引越しの日の雪ということで、イルカの「なごり雪」の歌詞にぴったりでした。その日は朝方横浜を出てから「はつかり」で八戸に着くまで、何かとても哀しくてずうっと泣きじゃくっていたのを覚えています。 さて、そんな「なごり雪」の降る中、メジャー・リーグが開幕しました。野茂の完封と、松井のタイムリー・ヒットという日本人選手大活躍の幕開けでした。松井の試合は僕もテレビで見ていましたが、松井はかなり気負っているなあという印象を受けました。それは、ヒットを打った初打席も、凡打になったその他の打席も、ほとんど初球に手を出していたからです。まあ、二試合目の今日もヒットが出たので、大丈夫でしょう。早いうちに一発が出てほしいですね。そうすれば、気分的にもっと余裕を持って打席に入れるはずです。それにしても、野茂はすごい。今年の彼の活躍も松井以上に楽しみです。野茂と松井の開幕戦については、「みだしなみ英語」にも載せておきましたので見てください。「みだしなみ英語」のページは、何か「メジャー・リーグ解説」みたいになってきましたが、なるべくベースボールに片寄らないようにしようと思っています。 「March Madness(三月の狂気)」という言葉をご存知でしょうか。これは何も、三月に戦争を開始した某大統領のことではありません。アメリカで毎年三月に行われるNCAA・全米大学バスケットボール選手権大会を取り巻く熱狂のことを言うのです。この全米大学バスケットボール大会は、メディアの注目度も、ファンの熱狂度も、日本で言うと甲子園の高校野球と同じくらい盛り上がります。という訳で、「三月の狂気」と呼ばれているのです。今年も四月に入って、この大会もクライマックスを迎えています。あとは今週末に行われる準決勝と決勝を残すのみとなりました。今年は前評判が高かった僕の母校であるオクラホマ大学は、準々決勝で格下のシラキュース大学に敗れてしまいました。 さて、甲子園など日本のスポーツ大会では、準々決勝に残った8チームを「ベスト・エイト」、準決勝進出の4チームを「ベスト・フォー」という言い方をしますよね。僕が知る限り、アメリカ英語では(少なくともNCAAでは)こういう言い方をしないようです。上位16チームは「Sweet Sixteen」、準々決勝進出の8チームは「Elite Eight」、そして準決勝進出の4チームは「Final Four」と呼ばれます。お気づきかもしれませんが、「Sweet」の「S」と「Sixteen」の「S」、「Elite」の「E」と「Eight」の「E」、「Final」の「F」と「Four」の「F」が一致していて、ちょっとした語呂合わせのようになっているのです。そういえば、冒頭で触れた「March Madness」も「M」で始まる言葉の組み合わせです。アメリカ人も、こういう文字遊びが好きなのかもしれません。 東アジアを中心に流行している謎の肺炎「SARS」はとても恐いですね。人が自由に国境を越えて移動する時代ですから、このような病気が急速に地球規模で拡大する可能性は否定できません。カナダのトロントでも死者が出たようですが、アメリカでは死者は出ていないようです。4月1日現在、アメリカでSARS感染と疑われているのは69人だそうで、この中には僕の住んでいるバージニア州の3人も含まれています。 このSARSの影響で、アジア各国は観光客が激減していると聞きます。妻の職場にいるベトナム系アメリカ人のトゥリさんも、今年の夏に日本を含めた東アジア観光を計画していたそうですが、既にキャンセルしたと言っていました。「日本は大丈夫みたいだから、日本だけでも行ったら?」と勧めたら、「まさか日本は感染者の数を隠してはいないだろうね」と言われてしまいました。トゥリさんによれば、「中国やマレーシアなどは、観光産業への悪影響を考えて患者数を下方修正して発表している」そうです。それにしても、中国や香港、シンガポールなど感染者数の多い国々と日本との人の行き来を考えると、日本で感染者が出ていないというのを疑問視する気持ちは分かるような気がします。 僕のアジア方面への次の出張は、6月くらいになりそうです。いつもはシンガポールかバンコックを経由して南アジアまで行くので、それまでにこの病気の流行が下火になることを願っています。さもなければ、次回はルートを変えてヨーロッパ経由で行くことになるかもしれません。とりあえず、今は肺炎よりも花粉症で苦しんでいます。はっきり言って、とても苦しいです。 ホワイトハウスの裏側、ペンシルバニア通りの歩道には、長年ある商売をしている小父さんがいます。東欧かどこかからの移民と思われるその小父さんの商売とは、写真屋さんです。ポラロイド・カメラで写真を撮ってくれるんです。しかも、大統領と一緒にです。 とは言っても、本物の大統領と写真を撮ってくれるはずがありません。その小父さんの大切な商売道具は、大統領の等身大写真パネルなのです。この等身大写真パネルと並んで写真を撮ると、出来上がった写真は、ちょっと見ただけでは本物の大統領と一緒に写っている様に見えるのです。そりゃあ、よ〜く見るとすぐ写真パネルだってばれちゃいますけど。うまい商売を考えたものです。 クリントン政権の時代は、この小父さんはクリントンとヒラリーの二人の写真パネルを使っていました。先日、ホワイトハウスの裏を通りかかって気づいたのですが、この小父さんの商売道具がひとつ増えていました。等身大写真パネルが、二つから三つに増えていたのです。そのうちの二つは、ブッシュ大統領とファースト・レディのローラ夫人のパネルでした。現在はブッシュ政権ですから、これは当然ですよね。そしてもうひとつはと言うと、何とクリントン前大統領の写真パネルでした。ブッシュ政権になって数年が過ぎても、まだクリントンさんの写真パネルを使っているということは、それだけクリントンさんと写真を撮りたがる観光客が多いということを物語っているような気がします。彼の人気はまだ衰ていないようです。現在のホワイトハウスの主は、自分の住居のすぐ裏で行われているこの商売のことを知っているのでしょうか。 母校のオクラホマ大学に毎年少額を寄付していると以前書きましたが(2003年2月3日の「ワシントン通信」を参照ください)、最近その大学からお礼状のカードが届きました。そのカードには、「今日あなたが蒔いた種は、明日の収穫になる」と書かれていました。いい言葉ですね。早速、頼まれていたある会合への僕のメッセージに引用させていただきました。 先日メジャー・リーグ通算100勝をあげたドジャースの野茂も、種を蒔いた一人だと思います。しかも彼の蒔いた種は、彼自身に収穫をもたらしたばかりではなく、彼に続いた日本人選手にも大きな恩恵を与えたと言えるでしょう。イチローの首位打者も、松井の満塁ホームランも、パイオニアとしての野茂がいなければ実現しなかったかもしれません。これから何人の日本人選手がメジャー・リーグで花を咲かせるか分かりませんが、それは野茂の蒔いた種のお陰なのです。僕自身も、何か小さくてもいいから種を蒔き続けたいと思います。 今週の火曜日、4月22日は「アース・デイ(地球の日)」でした。アース・デイについては今まで何度も耳にしたことがありましたが、あまり気にかけたことはありませんでした。でも今年のアース・デイは、例年よりちょっとだけ意識させられました。 その理由のひとつは、長女が「何かリサイクルできるものを幼稚園に持っていかなければならない」と言うのです。4歳の子供がリサイクルという言葉を習って、既に地球の環境のことを幼稚園で勉強しているかと思うと、この星の未来について少しは希望が持てそうな気もしてきます。長女には、空になったミネラル・ウォーターのペットボトルを持たせてやりました。 このアース・デイは、今でこそ全世界で様々な環境関連のイベントが行われる日になりましたが、どうやら発祥はここアメリカらしいです。1970年の4月22日、公害防止や自然保護などをテーマに、全米で大規模なデモが行われたことがきっかけだそうです。ですから、今年で34回目のアース・デイということになります。 火曜日の朝、通勤の地下鉄の駅で、「Everyday is Earth Day(毎日がアース・デイ)」というプラカードを持った活動家を見かけました。全くその通り。年に一回ではなく、毎日毎日、このかけがえのない地球のことを考えて生活をしなければいけないんだと思い知らされました。 最近のワシントン・ポストの紙面は、新型肺炎SARS関連の記事一色という感じです。昨日も今日も一面トップの写真は、全員がマスクを付けた中国人の群集でした。一面ばかりではなく、国際面は当然SARSの記事がかなりの部分を占めているし、地方面も、そしてスポーツ面までもSARS関連のニュースがトップです。今日はそのうち、地方面に出ていた記事を紹介します。 それは、中国の孤児院に近々養子をもらいに行く、ワシントン郊外に住むカップル話題でした。「SARS感染のリスクを冒しても、この時期に中国に行くのか」というのがテーマになっていました。実は、やはり最近中国に養子を引き取りに行ってきた別のアメリカ人女性が、SARSに罹ったという事実があるのです。今日の新聞に載っていたカップルは、念のためマスクと消毒用のアルコールを持っていくが、予定通り中国行きを決行するということです。そのカップルは、「もし自分の子供が火災のビルの中にいたら、どんなことがあっても火の中に飛び込んで子供を助けるでしょう」と話していました。自分の養子をSARSの危険から救うためにも、一刻も早くアメリカに連れて帰りたいということのようです。その気持ち、何か分かるような気もします。 アメリカでは、結構養子をもらう人が多いんです。時々、同性愛のカップルが養子をもらうことの是非が話題になったりもします。去年一年間で、外国からアメリカに養子に来た子供は2万人を超えるそうです。その中では何故か中国からの養子が一番多く、5053人もいます。僕の娘達が通う幼稚園にも、アメリカ人のところに養子に来た中国人の女の子がいて、次女と同じクラスです。 昨日の続きです。昨日のワシントン・ポストのスポーツ面に載っていた、SARS関連記事を紹介します。もうお分かりかもしれませんが、メジャー・リーグ(MLB)のブルージェイズが本拠地としているカナダのトロントについてです。トロントは、アジア以外では一番SARSの被害が深刻で、先週WHOがトロントへの渡航自粛勧告を出しました。そこで、MLBはトロントで試合を行うべきかどうかというのが、ひとつの大きな関心事になっていたのです。MLB機構側は、とりあえずトロントでの試合は予定通り行うという決定を下し、その代わり、トロントを訪れる選手達に対してSARS対策の指針を発表しました。その指針の中味はというと、(1)トロントでは人ごみには近づかない、(2)トロントでは公共交通機関を利用しない、(3)ファンへのサインは避けるか、自分のペンを使用する、などといったものでした。 このMLB機構側のSARS対策に、ワシントン・ポストのサリー・ジェンキンズさんというコラムニストが噛み付いたのです。サリーさんの主張は、そもそもMLB機構は野球ファンを全く無視しているというのです。ちょっと彼女の文章を引用すると、「人ごみを避けろだって。野球場の観客席は人ごみ以外の何物でもない。従って、野球を見に来るファンは、人ごみを避けられない」という、もっともな論理展開です。そもそも誰のための野球なのか。選手のことばかりでなく、もっとファンのことも考えろという正論でした。 そして今日のワシントン・ポストには、昨日トロントで行われたブルージェイズとロイヤルズの試合における、ある写真が大きく載っていました。その写真は、内野席の最前列に座るファンが、ファウル・ボールを捕ろうとしている場面でした。何故そんな写真が大きく載っていたのかというと、そのファンはしっかりとマスクをしていたからです。今のトロントを象徴しているシーンだったのです。野球場にマスクとは、何とも似合わない取り合わせです。一日も早く、トロントの人たちがマスクをせずに球場に来れるようになってほしいものです。 ( http://www.keicho.com ) |