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WASHINGTON 通信(May 2003)アメリカには「Take Our Daughters to Work Day(娘を職場に連れて行く日)」というのがあります。毎年4月の第四木曜日です。今年も先週の木曜日が、この日にあたりました。そもそも、どうして女の子を職場に連れて行くのかというと、小さい頃からいろんな職業があることを知ってもらい、女性の社会進出を促進する狙いがあるんだそうです。ということで、僕の職場である世銀も、4月のこの日は毎年多くの女の子たちで賑わっていました。 「女の子たちで賑わっていました」と過去形で書いたのは、今年から少しこの日の様子が変わったからです(去年はオーストラリアにいたので、もしかしたら去年からかもしれません)。どう変わったかと言うと、女の子だけでなく男の子も連れて来ていいことになったのです。どこかから、逆差別だと苦情があったのでしょうか。それとも、もうアメリカでは十分に女性の社会進出が進んだからでしょうか。 子供を職場に連れて来て何をさせるかは、その職場次第です。世銀では、この日、様々なイベントが行われます。今年はウォルフェンソン総裁と子供たちの対話や、国際機関だけあって様々な国籍の子供たちが参加して「模擬国連総会」も開かれたそうです。こういった行事に参加できるのは、1年生から9年生までです。日本でいうと、小学生と中学生が対象と言えるでしょう。うちの娘達はまだ小さいので、このような行事には参加できませんが、とりあえず妻の職場に来て遊んでいたようです。 この日になるといつも思うんですが、職場に子供を連れて行くなんて、日本ではほとんど考えられないことですよね。それをアメリカでは、全米で一斉にやってしまうんです。逆に言えば、一斉にやらないと、子供たちが通う学校の関係で問題があるのかもしれません。もしかしたら、日本こそこういう行事が必要なのかもしれませんよ。女性の社会進出があまり進んでいない日本ですので、アメリカを見習ってまずは「娘を職場に連れて行く日」を制定してみてはどうでしょうか。 遅ればせながら、アカデミー賞を受賞した「千と千尋の神隠し」を見てきました。この映画、アカデミー賞を受賞する前は、全米でたった7つの映画館でしか上映されていなかったものが、アカデミー賞を受賞した途端に、全米800箇所の映画館で上映されるようになったといいます。という訳で、我が家のそばにあるコートハウス映画館でも上映されるようになったのです。 金曜日の夕方だったんですが、映画館の館内はかなり空いていました。僕以外のお客さんは、全てが小さな子供連れのお母さんでした。普通のアメリカ人にとっては、アニメというのはやっぱり子供向けだと思うんでしょうね。 こちらでの上映は、当然ながら英語による吹き替えでした。「千尋」は「チヒ〜ロ(ヒに思いっきりアクセントがある)」と呼ばれていました。「ユバーバ」も「カマージ」も第二音節に思いっきりアクセントが置かれていました。映画を見ている最中は、まさか「ユバーバ」が「湯婆婆」で「カマージ」が「釜爺」だとは、想像さえもしませんでした。映画を見た後、インターネットでいろいろ検索していてなるほどと納得しました。どちらも映画の内容どおり、お風呂屋に関係する名前だったんですね。こんなのが分かるアメリカ人は一人もいないでしょう。 でも、この映画でアメリカ人にとって最も分かりにくいのは、「千尋」が「千」と呼ばれるようになった理由ではないでしょうか。「荻野千尋」から三文字取られて「千」だけになっちゃう場面です。スクリーンを見ていても、漢字が分からなければあのシーンは絶対に理解不可能でしょう。 この映画を見た後の僕の感想は、はっきり言って「えっ、こんなもん?」でした。日本でも大ヒットしたと聞いていたし、アカデミー賞もとったんだから、さぞかしすごい映画だろうと、見る前の期待が大きすぎたのでしょうか。でも、もしこの映画を日本語で見ていたら、大分印象が違っていたのかもしれません。 昨日に続いて映画の話です。日本では確か、あらゆる映画は2分類のうちのどちらかに入るはずですよね。その2分類とは、「成人指定(18歳未満お断り)」と「それ以外」です。少なくとも、僕が日本にいた頃はそうだったと思います。しかしながら、こちらアメリカで上映される映画は、もう少し細かく分類されていて、5つのカテゴリーがあります。 その5つとは、「G(誰が見ても良い)」、「PG(保護者同伴が望ましい)」、「PG13(13歳未満の子供には不適切な場面あり)」、「R(17歳未満は保護者同伴のこと)」、「NC17(17歳以下はお断り)」です。最後のNC17というのは、ほぼ確実にポルノなんでしょうが、あとの区分はよく分かりませんね。13歳未満の子供に不適切な場面とは、どんな場面なのでしょうか。17歳未満でも、親が同伴していれば許されて、親がいなければ見てはいけない映画とは、どんな映画なんでしょう。この分類は、おそらく暴力と性描写に関係しているんでしょうが、詳細は分かりません。今度、機会があったら調べてみます。ちなみに、「千と千尋の神隠し」は「PG」に指定されていました。どうして保護者同伴が望ましいのか、これもよく分かりません。どなたか、教えてくれませんか。 今日は世界銀行の理事会で、僕の手掛けてきたスリランカのプロジェクトが承認されました。このプロジェクトは、僕が去年6月にブリスベンから復帰以来チーム・リーダーとして準備を進めてきたもので、スリランカの農村部への水供給に関するプロジェクトです。 世銀の理事会は、180以上の加盟国を代表する24人の理事により構成されています。アメリカや日本、イギリス、フランスなど拠出金の多い国は、一国で一人の理事の座を持っていますが、拠出金の少ない国は数カ国(場合によっては10カ国以上)がひとつの議席を共有しています。 今日の理事会では、まず最初に僕がプロジェクトの概要をスピーチし、その後に質問を受けました。予想に反してとても多くの質問があり、面食らってしまいました。8人くらいの各国代表の理事が、次々に細かい質問を浴びせてくるのです。ああいうのを、「針のむしろ」と呼ぶんでしょうね。僕は、質問の内容をノートに書き留めながら、同時に答えを考えるということを数十分間していて、半分パニックになりそうでした。質問してきたのは、アメリカ、ドイツ、アルゼンチン、そしてアフリカのどこかの国の代表理事で、残りはどこの国の代表だったかを認識する余裕さえありませんでした。中国の代表は、プロジェクトを褒める内容のコメントだけで質問が無かったので、とても有難かったです。日本の代表は、コメントも質問も何も無かったので、これまた助かりました。 どういう質問を受けたかというと、水質の検査の方法などといった技術的なことから、プロジェクトの進捗度を測る数値目標などのプロジェクト管理に関することまで、実に多岐に渡るものでした。質問が全て出尽くした後、僕がひとつずつの質問にまとめて答えたのですが、はっきり言ってあまりうまく答えられない質問もあり、不本意でした。 とにかく今日の理事会は緊張しまくりでした。あんなに緊張したのは、いつ以来でしょうか。ちょっと記憶にありません。とりあえず、プロジェクトが承認されてホッとしています。これでクライアントにも顔向けが出来ます。質問の受け答えは不本意でしたが、まあ、いい経験をしたと思うことにします。でも、この次はもう少し落ち着いて、今日よりはうまくやってやろうと思っています。 昨日はシアトルで松井がホームランを打ったんですね。さっきインターネットを見るまで、知りませんでした。と言うのは、今朝のワシントン・ポストには、昨夜のマリナーズ対ヤンキース戦の結果が載っていなかったからです。 アメリカの東海岸と西海岸には、ご存知のように3時間の時差があります。メジャー・リーグのナイトゲームは大体7時に始まることが多いので、シアトルの7時はワシントンの10時なのです。おそらく、試合終了はワシントン時間の午前1時頃になります。従って、翌日の朝刊の印刷に間に合わないのでしょう。シアトルやロサンジェルスやサンフランシスコなど西海岸で行われるナイトゲームの結果は、ワシントン・ポストには載らないのです。 似たようなことを、故郷の八戸で経験したことがあります。以前、八戸で売られているスポーツ新聞には、前日のナイターの結果が載っていなかったのです(今はそんなことはないでしょうね)。まあ、写真週刊誌の「フライデー」が八戸では「マンデー」に発売されていた当時ですから、ナイターの結果が翌日に届かなくても仕方がなかったのかもしれません。今はリアルタイムで何でも分かるインターネットの時代ですから、スポーツの結果を新聞に頼る方が間違いですね。さて、松井とイチローの対戦で、今日も日本は今頃盛り上がっているんでしょうね。防御率が零点台と、今季も安定している渋い長谷川にも僕は期待しています。 うちの長女は半年に一度、歯の定期検査のために子供専用の歯医者さんに行きます。先日そこの歯医者さんに、「アップル・ジュースは歯に悪いので飲まないように。オレンジ・ジュースを飲みなさい」と言われてきたらしいのです。確かにアップル・ジュースはオレンジ・ジュースより甘いので、糖分が多く虫歯の原因になりやすいのかもしれません。でも、ヨーロッパのどこかの国には「毎日リンゴひとつで医者知らず」という諺があるくらいで、リンゴは健康にいいはずです。歯医者さんだから「歯」のことしか考えていないんでしょうが、もっと身体全体の健康を考えてアドバイスをしてほしいものです。 僕が思うにアメリカ人は、妙にオレンジ・ジュースが好きですね。スーパー・マーケットには、実に多くのオレンジ・ジュースの種類があるし、ホテルやカフェでも朝は必ずオレンジ・ジュースです。まさかアメリカ中が歯のことを考えて、「アップル・ジュースよりはオレンジ・ジュース」と決めているわけではないでしょうが、アメリカの朝はオレンジ・ジュースで始まるのが定番のようです。 朝はオレンジ・ジュースですが、昼は必ずコーラです。これは誇張ではないのですが、見ているとほとんどのアメリカ人はコーラを飲みながらランチを食べますね。ハンバーガーにコーラ、サンドウィッチにコーラ、まあこの辺りは良しとしても、寿司にもコーラ、中華にもコーラ、麺類にもコーラです。僕はコーラは飲みません。小さい頃から、親に飲まないように言われて育ちました。アメリカで育っている娘達にも、コーラは飲んでほしくないですね。寿司には緑茶、中華にはウーロン茶、そういう食文化を教えたいです。あの歯医者さんも、子供にアップル・ジュースを飲まないようにと言うくらいなら、コーラも絶対飲まないようにと言うべきだと思います。 おとといの日曜日は母の日でした。アメリカの母の日は、僕が知る限りカーネーションとは全く関係がないようです。母の日にカーネーションを贈るという日本の習慣は、どうやって始まったんでしょうか。 さて、その日のワシントン・ポストに、40代前半の母親が自分の赤ん坊を抱いていてお祖母さんに間違えられたという話が載っていました。これはちょっと酷いですよねえ。そのお母さんは実際の年齢より老けて見えるのかもしれませんが、自分の子供を抱いていて、「可愛いお孫さんですね」と言われた日にゃあ、かなり腹が立つと思います。 そういう話を妻としていたら、彼女が言うには「アメリカには姉妹のように見える母娘が結構多い」らしいのです。母親が若作りをしている場合もあるでしょうが、その理由のひとつは、社会問題にもなっている10代の女性の妊娠かもしれません。例えば、17歳で妊娠して子供を産めば、その子が17歳になった時、母親は34歳です。こういうケースは母娘が姉妹に見えないこともないでしょう。 子供との年齢差のいかんに関わらず、お祖母さんに間違われるよりは、お姉さんに間違われた方が気分がいいでしょう。男性だって、お祖父さんに間違われるよりは、お兄さんに間違われた方がいいでしょう。我が家の場合は、どっちにも間違われません。妻は娘達の母親に見えるし、僕はお兄さんに見えてほしいけど、どう見たって父親にしか見えません。 ということで、母の日は過ぎたけれど、娘達の母である妻と、故郷にいる年老いた僕自身の母に、この場を借りて感謝の気持ちを伝えたいと思います。ありがとう。 最近、「ワシントン通信」の更新頻度が落ちてきました。はっきり言って、スランプ気味です。何を書こうか迷っている時は、ダメですね。こういう時は、じっと我慢。あのイチローだって4月はスランプだったんだから。 イチローが4月はスランプだったと書きましたが、5月も中旬を過ぎてようやく本調子になってきたようです。昨日の2安打で打率を3割に乗せ、今日もホームランを含む3安打の活躍でした。 そのイチローが、珍しく昨日のワシントン・ポストのある見出しに使われていました。「みだしなみ英語」の方に書こうかとも思いましたが、あんまり英語の勉強になる見出しではなかったので、こっちに書きます。ワシントン・ポストと言えども地方紙なので、スポーツ面は野球に関しては隣のメリーランド州にあるボルチモア・オリオールズの記事ばかりです。イチローも松井も、普段はほとんど記事になりません。しかも、昨日のイチローの記事はスポーツ面ではなく、社説や論評が掲載される見開き最終面に載っていたのです。 「Ichiro Can't Do It Alone(イチローひとりでは無理)」と題されたその論評は、シアトルのあるワシントン州の州経済の話でした。ワシントン州は現在失業率が7%で、全米50州の中ではオレゴン州に次いでワースト2位だそうです。「イチローの人気で日本人観光客が約12%も増えているけれども、それでもイチローひとりではワシントン州の経済は救えない。ブッシュさん何とかして」というのが記事の内容でした。もうひとつのワシントンを扱ったこの論評を、ワシントンDCのブッシュ大統領は果たして読んだでしょうか。野球好きで知られる彼のこと、当然イチローのことは既に知っているはずです。 世銀には、いわゆる労働組合のような「スタッフ・アソシエーション」という組織があります。この「スタッフ・アソシエーション」の最近のニューズ・レターに面白い記事が出ていました。それは、世銀内部で途上国への融資を直接担当する「オペレーション」と呼ばれる部署にいる女性職員の話です。僕もこの「オペレーション」に所属していますが、「オペレーション」の職員は途上国への出張が多く、人にもよりますが大体年間で3分の1くらいは海外出張です。子供をこれから産もうと思っている女性、妊娠中の女性、小さな子供がいる女性にとっては、こういう職場はかなりの困難が伴うはずです。仕事を続けるか、出張の少ない部署に異動するか、子供をあきらめるかという選択に迫られる女性も少なくないでしょう。 そのニューズ・レターの記事によると、そういう女性が「オペレーション」を続けるためには、上司や同僚そして何よりも夫の支持が不可欠だというのです。まあ、これは当たり前ですが、面白かったのは人種によって自分の夫に対する評価が異なるという点です。世銀に勤務している西洋人の女性は、夫のサポートが足りないと感じている人が多く、アジア人やアフリカ人の女性は、夫のサポートに満足しているという統計が出たらしいのです。 この結果は何か信用できませんね。僕が思うには、おそらく実際は、西洋人の男性の方がアジア人やアフリカ人より、自分の妻をサポートしているのではないでしょうか。しかしながら、西洋人の女性は要求度が高いため、もっとサポートしてくれないと満足しないのでしょう。一方アジアやアフリカの女性は、元々男性にはあんまり期待していないので、少しくらいのサポートを受けると満足してしまうのではないでしょうか。というのが、アジア人の妻を持ち、アジア人の夫である僕の分析です。 もう大分前ですが、僕が世銀に入った当初、ある先輩がこんなことを言っていました。「世銀の職員にはある特徴があって、それは寿命が短いことだ。」 これは、とても嫌な特徴でね。世銀の職員の寿命が、何に比べて短いのかはよく分かりませんが、おそらくアメリカ人の平均に比べてそういうことが言えるんでしょう。この理由は、仕事のプレッシャーや組織内ポリティクスから来るストレスでしょうか。出張の多さもやはり影響しているでしょう。年中時差ボケだし、疲労も溜まります。それに途上国で病気になったりすることも多いです。 仮に一年の3分の1を途上国で過ごし、3分の2をアメリカで過ごすとしましょう。そして、その途上国の平均寿命を60歳と仮定し、アメリカの平均寿命を75歳としましょう。この場合、60X1/3+75X2/3=70となり、計算上はアメリカ人の平均より5歳も寿命が短くなるのです。まあ、日本は世界一の長寿国ですので、日本人は日本を離れることによって確実に寿命を縮めているということが言えるでしょう。 何か、世銀に入ろうと思っている人を思いとどまらせるような内容になってしまってすみません。でも、仕事は面白いですし、やりがいがありますから、どんどん来てください。何よりも、きちんと自分で健康管理をしていれば大丈夫でしょう。何事も自分次第ですから。 アメリカでは今度の月曜日が「メモリアル・デー」の休日なので、今週末は3連休です。ワシントン界隈では、今日がプール開きでした。5月の第4月曜日が「メモリアル・デー」で、ワシントン周辺のプール開きは、その週末の土曜日だと毎年決まっています。ちなみにプールが終わるのは、9月の第1月曜日と決まっていて、その日はやはり「レイバー・デー」という休日です。要するに、「メモリアル・デー」から「レイバー・デー」までがワシントンの夏なのです。 ということで、暦の上では夏が到来したはずのワシントンですが、今日は雨模様で肌寒い一日でした。僕が住んでいるアパートのプールも今日がプール開きでしたが、この天気のせいで、泳いでいる人は一人もいませんでした。でも、アパートの隣にあるホテルのプールでは、雨が上がった夕方、宿泊客が何人か泳いでいました。 実はこの愚図ついた天気は、ここのところずうっとです。2週間くらい毎日のように雨が降っています。週間予報では、来週もほとんど雨みたいです。まるで日本の梅雨のようです。こんなのは、ワシントンに来て初めての経験です。僕の記憶では、毎年5月のこの時期は、ワシントンで一番いい季節のはずでした。スリランカでは先週50年ぶりの大洪水が起きたし、世界中で天候異常が起きているようです。あなたの所はどうでしょうか。 ワシントン・ダレス国際空港のラウンジからです。これからスリランカへ出張します。今回はSARSが恐いので、太平洋まわりではなく、大西洋を渡ってヨーロッパ経由で行くことにしました。でも帰りは太平洋まわりの予定なので、引き続きSARSの状況にも注意を払っていたいと思います。では行って来ます。 ( http://www.keicho.com ) |