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WASHINGTON 通信(March 2004)



ワシントンに春が来た。 (2004/03/01)


 今日から三月。ワシントンは昨日からようやく春めいてきました。昨日、今日と日中は16〜17℃くらいまで上がり、今日は今年に入って初めてオーバー・コートなしで通勤しました。今年の冬は特に寒さが厳しかっただけに、春の到来は嬉しいですね。一月、二月とほとんど氷っていたポトマック川にも、水鳥たちがたくさん戻ってきました。このままどんどん暖かくなってほしいものです。



幼稚園は義務教育の一環 (2004/03/02)


 先月の初旬に長女が5歳になりました。今年の9月からは、「キンダーガーテン」と呼ばれる幼稚園に入学することになります。アメリカではこのキンダーガーテンがとても重要視されていて、ほとんどのキンダーガーテンが小学校に併設され、義務教育の一部のようになっています。要するに、幼稚園と小学校の一環教育が行われており、幼稚園選びは、すなわち小学校選びなのです。

 僕は娘たちを公立の小学校に入れるつもりですが、公立でも選択肢がいくつかあります(僕が住んでいるヴァージニア州アーリントン郡の学校選びについては、2002年11月の「ワシントン通信」より、「公立小学校はオプション付き学区制」を参照下さい)。入学願書の提出期限が4月15日に迫っているので、先日いくつかの学校説明会に行ってきました。

 一番印象に残っている学校は、「アーリントン・トラディショナル・スクール」という学校でした。ここは公表されている標準テストの成績では、毎年ヴァージニア州で一番か二番なのだそうです。この学校で何が印象的だったかというと、ダイナミックな校長先生の言動です。50歳くらいのホートンさんという女性の校長先生でしたが、「この学校の優秀さの秘訣はこの校長先生なんだ」とすぐに分かるような、溌剌とした知的なリーダーでした。他の学校の校長先生とは比べ物にならないくらい最高でした。

 ホートンさんは教育学修士を持つ教育の専門家です。もう10年以上も「アーリントン・トラディショナル・スクール」の校長先生をしているそうです。日本の公立小学校は、どこに行ってもほとんど違いがないという印象がありますが、アメリカの公立小学校はピンからキリまであり、それは校長先生の質によって決まると言っても過言ではありません。いい学校には、教育や学校経営の専門家としての素晴らしい校長先生がいて、ひとつの学校に長く留まるということです。日本のように年功序列で校長になり、数年おきに学校から学校へ転任するということはないのです。

 さて、うちの長女ですが、当然ながらこの「アーリントン・トラディショナル・スクール」に願書を出すことに決めました。でも、入れるかどうかは抽選次第なのです。公立の学校なので、このあたりも公平にということでしょうか。



スーパー・チューズデーと大統領への立候補条件 (2004/03/03)


 昨日は「スーパー・チューズデー」でした。「スーパー・チューズデー」とは、大統領選の候補者を選ぶ各州の予備選挙が集中する火曜日のことです。昨日は、民主党の指名競争でこれまで圧倒的優位に立っていたケリー氏が、10州のうち9州を制して民主党大統領候補としての指名を確定しました。これで今年11月の大統領選挙は、ブッシュ対ケリーということになりました。

 合衆国の憲法によれば、アメリカの大統領に立候補するには以下の三つの条件を満たすことが必要です。

(1) 出生によるアメリカ国籍を有していること。
(2) アメリカに14年以上住んでいること。
(3) 年齢が35歳以上であること。

 この国は多くの移民で成り立っているはずなのに、一番目の条件はちょっとアメリカらしくないと思いませんか。この条件が変わらなければ、移民後に帰化してアメリカ人になった人たちは大統領に立候補できないことになります。例えば、つい最近カリフォルニア州知事になったアーノルド・シュワルツェネガー氏も、知事にはなれても、現行憲法では大統領には立候補すらできないのです。シュワちゃんの手腕はともかく(シュワに引っ掛けた駄ジャレです!)、僕なんかは「アメリカ大統領の世界への影響力は大きすぎるので、アメリカ人だけには任せていられない」とさえ思いますけど。

 実は、この立候補条件を変えようという新たな動きがあります。「出生に関わらず20年以上アメリカ国籍を保有していれば、大統領選挙への立候補を認める」ように改憲しようという法案が提出されたのです。シュワちゃんは既に20年以上アメリカ人をやっているそうなので、もしこの改憲が実現すれば、2008年の大統領選挙への立候補が可能になります。とすると、2008年の大統領選はヒラリー・クリントン対アーノルド・シュワルツェネガーの対決になるかもしれません。おっと、その前に2004年があります。ブッシュ対ケリーを忘れてはいけませんね。



バービーとジャスミン (2004/03/04)


バービー人形 先月うちの長女が5歳になりました。誕生会の日、彼女はクラスメイトのエレナちゃんから「ジャスミン」という名の人形をプレゼントされました。この「ジャスミン人形」は、どうやら「アラジン」というディズニーのアニメに出てくる女の子らしいのですが、何ともエキゾチックな顔をしています。「アラジン」に出てくるのですから、当然イスラム教の女の子です。実はうちの長女は、去年も誕生日にクラスメイトのアレクサンドラちゃんから人形のプレゼントをもらいました。去年もらったのは、ご存知「バービー人形」でした。

ジャスミン人形 去年もらったバービーと今年もらったジャスミンを見比べると、全く対照的です。バービーの方はスラリとしていて、まるでモデルのようです。八頭身くらいもあります。ちょっと痩せすぎのような気もしますが、バストやヒップはきれいな曲線美を描いています。

 一方、ジャスミンの方は、顔が大きく、体形もずんぐりむっくりしています。ざっと見て、三頭身といったところでしょうか。胸はぺちゃんこで、手足は太くてたくましいです。

 モダンで裕福な白人女性を代表するかのようなバービーと、イスラム少女のジャスミンという対照的な二つの人形は、アメリカの多様性を反映していると言えるかもしれません。しかしながら、「アメリカに移民してきたイスラム系の母親たちの間では、セックス・アピールの強すぎるバービーは不人気だ」と聞いたことがあります。自分の娘にバービー人形を持たせたくないと思うのだそうです。アメリカで生まれたうちの長女はといえば、ジャスミンよりバービーの方が好きなようです。僕は別に娘にバービーを持たせたくないとは思いませんが、日本の文化を教えるためにも、着物を着た日本の人形も買い与えようかなあとは思います。



技術サポートはインドから (2004/03/05)


 先月、「EarthLink社」のブロードバンドを利用し始めたので、ネット環境がかなり快適になったと書きました。とは言っても設定がまずかったのか、時々調子が悪くなり、インターネットに繋がらない時が今までに何回かあったのです。その都度、フリー・ダイヤルでかけられる「EarthLink社」のテクニカル・サポートに電話をしていました。電話をする度に、何とか問題は解決するのですが、ちょっと気になることがありました。どうも電話口の相手の英語が変なのです。いつも違う相手なのに、みんな同じような訛りの強い英語です。しかも、夜遅い時間に電話をかけているのに、最後に「Have a nice day!」なんて言われたりします。

 数日前にも、その「EarthLink社」の電話での技術サポートを利用した後、思い切って「この電話はどこに繋がっているのですか?」と聞いてみました。するとやっぱり、「インドのバンガローです」という答えでした。世銀にはインド人職員がとても多いので、実は「あの訛りはインド人の英語に違いない」と確信していました。なるほど、アメリカは夜でもインドは朝なので、「Have a nice day!」となるのです。

 という訳で、「EarthLink社」は技術サポート部門をインドにアウトソーシングしていたのです。アメリカの「EarthLink社」に加入しているアメリカ人が、何かトラブルがあって電話をすると、インドに繋がってしまうのです。インドは、アメリカのIT産業への人材供給国として注目されるほど、優秀なIT関連の技術者を多く生み出しています。 インド人は英語もできるし、しかもアメリカ人より安い労働力を考えると、「EarthLink社」の選択は当然のことなのかもしれません。

 でも、日本のインターネット・プロバイダーには、こういうことは不可能ですね。なぜって、日本人の顧客への技術サポートは日本語でしか行えないからです。インドや他の国からの技術サポートは、まずもって無理でしょう。このあたりが企業の国際競争力にどう影響を与えるのかは、ちょっと面白いテーマですね。



幻のパキスタン (2004/03/07)


 実は今日からパキスタンへ出張の予定でしたが、パキスタン政府側の意向で直前にキャンセルになりました。パキスタンへは1996年から1999年くらいまでは年に数回ずつ訪れていました。今回が約5年ぶりの訪問で楽しみにしていただけに、ちょっと残念です。

 出張は相手があることだけに、こういうこともたまにあります。いつも、出張の日程は自分の思いのままにならないことの方が多いのです。僕らの出張日程は、その国の政治日程など相手側政府の都合や、プロジェクトの進捗状況、訪問国の治安の安定度、上司や一緒に行く同僚の都合などなどに左右されます。なので、妻の誕生日だから、娘のピアノの発表会だからワシントンにいたいと思っても、そうはうまく日程が合わないことがほとんどです。

 今回、パキスタンの出張が中止になったので、来週の妻の誕生日にワシントンにいられることになりました。妻の誕生日を一緒に過ごすのはいつ以来だろうか。去年はブータンに出張していたし、おととしはブリスベンに単身赴任していました。その前の年はどうだったか、ちょっと覚えていません。ともあれ、パキスタン行きが幻になったので、ようやく暖かくなってきたワシントンの早春を家族で楽しもうと思います。



ワシントンへようこそ。でも水は飲めないよ。 (2004/03/08)


 ワシントンの水道水に含まれる鉛の濃度が許容範囲を超えているということが、最近、ワシントン・ポストのスクープで分かりました。子供の体内に蓄積された鉛は、脳の発育に悪影響を及ぼすことが知られています。この程度の鉛では大人の健康に影響を与えることはまずないそうですが、子供と妊娠している女性は水道水を飲まないようにということです。我が家では、飲み水はボトルに入ったミネラル・ウォーターを使用しています。

 水中の鉛の濃度上昇の確固たる原因は分かっていませんが、大方の見方は、数年前からアメリカ環境保護庁の規制強化で始まった新しい浄水方法が原因だろうということです。この新たな浄水方法で使われる化学薬品が、古い鉛の配水管から鉛を水の中に溶解させたのではないかということです。鉛でできた全ての配水管を取り替えるには、少なくとも数年はかかるでしょう。

 驚いたことにワシントンの水道局は、水道水中の鉛の濃度上昇という事実を数年前から知っていながら隠していたということです。現在、ワシントン水道局とアメリカ環境保護庁は、互いに責任をなすりつけ相手を非難し合っています。さらには、ワシントン水道局の水質担当課長が、この件をめぐって数年前に解雇されていたことが分かり、水道局の幹部と解雇された課長のバトルが今も繰り広げられています。全く、市民不在の泥仕合です。世界一の超大国アメリカの首都が、市民や観光客に安全な水も提供できないとはどういうことでしょうか。何かが狂っていると言わざるを得ません。



バイリンガルの女の子 (2004/03/09)


 アメリカのテレビ番組で、「ドラ」という名前のバイリンガルの女の子が出てくるアニメがあります。子供たちにとても人気がある番組で、当然うちの娘たちも大好きです。アニメとは言っても、とても教育的な内容なのです。正式な番組名は、「Dora the Explorer(ドラの冒険)」で、「ドラ」が英語とスペイン語の両方を駆使して、いろんな所に冒険に行くというストーリーです。スペイン語の部分も全く通訳もなしですが、子供たちはこの番組を見ていると自然にスペイン語の単語を覚えてしまうのでしょう。

 先日も我が家の娘たちと「ドラ」を見ていたら、面白いクイズが出てきました。「ドラ」がいつものように冒険をしていて、高い山の麓まで来ました。そして、「あの山より高くジャンプできるか?」と聞くのです。僕は「あんなに高くはジャンプできないだろう」と思っていたら、「ドラ」は「できるよ。ほら」と小さくジャンプしました。分かりますか?「ドラ」いわく、「山は地面にくっついたままでジャンプできないから、どんな小さなジャンプでも、あの山より高く飛んだことになる」のだそうです。なるほど、そう言われてみればそうですね。



アメリカの肥満とCM (2004/03/10)


 以前もゲストブックでアメリカ人の肥満が話題になりましたが、今日のアメリカの新聞はどれも「肥満が死因のトップに」というショッキングな記事を取り上げていました。それによると、アメリカでは今までの死因のトップは肺ガンなど喫煙が原因とされるものだったのですが、ここ10年で肥満による健康障害が原因の死者が急激に増えているのだそうです。2000年には肥満が原因で約40万人が命を落としており、このまま行けばあと数年で肥満がアメリカ人の死因のトップになるというのです。ちなみに、この数字は「preventable deaths(予防可能な死)」を比べたものだそうで、全ての死因を網羅した上でも肥満がトップになるのかどうかはちょっと分かりません。

 こういう肥満社会のアメリカですが、アメリカでテレビを見ていると、ある二つの商品のCMがやたらに多いと気づきます。その二つとは「家庭用エクササイズ器具」と「胸焼けの薬」です。僕が思うに、これらのCMが多いという事実は、肥満社会を象徴しているような気がします。エクササイズ器具は当然ながら体重を落とすためのものですが、胸焼けと肥満には相関関係があるのでしょうか。医学的なことは分かりませんが、アメリカの高カロリーで量が多い食事が胸焼けを引き起こしているのではないかと思うのです。エクササイズ器具を購入したり、胸焼けの薬を飲む前に、この国はやっぱり食生活を改善するしかないでしょうね。



スキルの更新が資格の更新 (2004/03/11)


  先日、僕が現在持っている唯一の資格が更新されました。その資格とは、「Solid Waste Association of North America(北米廃棄物協会)」から認定されている「都市廃棄物管理者」としてのものです(認定証はこちら)。要するに、ゴミの収集・処理事業の運営に関する専門性を証明されたことになります。僕はもう10年近くに渡って、途上国の自治体に水道事業やゴミ事業といったいわゆる都市サービスの改善のためのアドバイスをしてきました。水道事業に関する適当な資格は見つからなかったので、ゴミ事業の方の資格試験を受けたら、まんまと合格したのです。

 この資格が今回更新されたと書きましたが、最初にこの資格を取ったのは3年前でした。一度試験に受かると資格は3年間だけ有効で、3年おきに更新しなければならないのです。更新するには、3年の有効期間内に、この分野に特化した研修やセミナーなどを受けて30単位分を稼がなければなりません。つまり、スキルを更新しなければ資格は更新されないという訳です。

 アメリカにもいろんな資格がありますが、大抵の資格は期限付きです。そしてその資格の更新には、専門的スキルをアップデイトしたという証明が必要なのです。ワシントンで僕が以前通っていた歯医者さんも、歯科医としての資格を更新するために、大学の集中講座を時々受講すると言っていました。テクノロジーや社会情勢が急激に変化する現代では、今日習ったことは、数年たつと全く使い物にならないということもありえます。そのために、このような資格の更新が必要なのでしょう。これは全くもって妥当な制度だと思います。少なくとも、10年前に取った資格で仕事を続けているような、時代遅れの専門家のアドバイスには耳を貸さないほうがいいでしょう。ということで、できれば今年はもうひとつ、アメリカの都市計画に関する資格も取ろうと狙っています。



ワシントンの景観を壊す新聞の自動販売機 (2004/03/15)


新聞の自動販売機 日本は街のあちこちに様々な自動販売機がありますが、アメリカの自動販売機は大抵の場合は屋内にあります。これは、「外に自動販売機を設置すると、壊されて中の商品とお金を盗まれるから」というのが通説のようです。実はアメリカでも、ある商品の販売機だけは、必ず屋外にあります。それは、新聞の自動販売機です。新聞はたかだか25セントくらいなので、盗まれても被害が少ないということでしょうか。

 何を隠そう、僕はこの新聞の自動販売機が大嫌いです。それは、至る所に置かれているこの新聞販売機が、街の景観を著しく阻害していると思うからです。日本の夥しい数の自動販売機もそうですが、そもそも日本は、ビルの色がマチマチだったり、商売優先で景観に全く配慮しない突出看板がビルの横や上からニョキニョキ出ているように、街の景観に対する意識が低いのです。そういう所では、路上に自動販売機が林立していても、仕方がないなあとある意味で納得できます。

 でも、ここはワシントンです。突出看板なんて見たことないし、中心部は歴史的なビルが多く建ち並んでいるのです。そういう美しい街並みに無雑作に置かれている新聞の自動販売機は、はっきり言って許せません。しかも、色合いがごちゃごちゃなのです。僕は、景観という観点から、こういった販売機の設置を規制すべきだとかなり本気で思っています。



三月中旬のみぞれ (2004/03/16)


 一旦は春のように暖かくなったワシントンでしたが、最近はまた冬に逆戻りしたように寒い日が続いています。今日もとても寒く、みぞれ混じりの冷たい雨が降りしきる一日でした。お陰で体調が優れませんので、今日は早めに寝ることにします。では、Good Night.



手錠をかけられたIMF職員 (2004/03/17)


 先週3月11日にスペインのマドリッドで起きた連続テロは、あの2001年9月11日にニューヨークとワシントンを襲った同時多発テロから丁度2年半後のことでした。通勤電車が標的にされたということは、僕が恐れていた通りです。警備が厳しくなる一方の飛行機より、侵入が容易な地下鉄や電車などの都市交通機関が狙われるのは時間の問題だと思っていました。僕も通勤でワシントンの地下鉄を利用していますが、乗るたびにやっぱり多少の不安を感じます。

 実は、あのマドリッドのテロの数日前に、IMFのスペイン人職員がワシントンのダレス国際空港で拘留されるという事件がありました。そのスペイン人のSさんは、セネガルへ出張した帰りで、パリ経由のエア・フランスでワシントンに戻ってきたのです。そのエア・フランス機がダレス空港の滑走路に着陸するやいなや、アメリカ当局の二人の武装警官が機内に乗り込み、Sさんにいきなり手錠をかけ、空港内の施設に連れて行ったそうです。IMFの職員だと言っても、レセパセという国連職員のパスポートを提示しても、全く無駄だったそうです。そして、3時間ほど取り調べをされた後、疑惑が晴れたということでSさんは解放されました。しかし、拘留の理由については、セキュリティ上の機密ということで全く明らかにされなかったそうです。

 その後、この件がワシントン・ポストで報道されました。その記事によると、Sさんと同姓同名の人物が、テロリストとしてアメリカ当局のブラックリストに記載されていたそうです。Sさんにしてみれば全く迷惑な話ですが、アメリカ当局の報道官は、例によって「あのミステイクは不幸なことだった」と述べるだけで、人違いで手錠までかけておきながら、Sさんに対する謝罪の言葉はなかったようです。それにしても、手錠までかけるとは、行き過ぎた行為だったと言わざるをえません。でも、アメリカの政府当局はテロリストの入国にかなり神経質になっていますから、こういうことがいつか自分にも起きないとも限りません。ちなみにSさんは、「もうアメリカをホームだとは思えなくなった」と言っているそうです。



あれから僕たちは... (2004/03/19)


 あれから一年だそうです。アメリカがイラクを爆撃して、戦争に突入してから丁度一年です。こういう記念日はイヤですね。僕は去年のこの日は、京都で「世界水フォーラム」に参加していました(「戦うべき相手はイラクではなく、水問題」)。戦争が始まったので、予定を変更して早めにワシントンに戻って来たのです。

 あれから僕たちは、何かを信じてこれたかな...
 夜空のむこうには、明日がもう待っている

 今日は何故か、頭の中でずうっとスマップの「夜空ノムコウ」が鳴り響いていました。あれから一年、世界はどうなったのか。ただひとつ確実に言えることは、「世界は一年前より、はるかに危険な場所になった」ということです。どこに行っても警備が厳しくなり、アメリカの入国審査に指紋採取や顔写真撮影が導入されたように、国家がますます個人を監視するようになりました。「どこにテロリストが潜んでいるのか」、「あいつは、テロリストじゃないか」と、他人を信じられない時代になりました。21世紀は、パスポートのいらない時代になるはずじゃなかったのか。明日という日は、明るい日のはずじゃなかったのか。どんどんどんどん暗くなるばかりじゃないか。

 夜空のむこうに明るい明日が見える日を、取り戻さなければいけません。



教育委員会に殴り込む (2004/03/21)


 先週の木曜日、僕が住んでいるバージニア州アーリントン郡の教育委員会の会合に殴り込みをかけました。とは言っても、フィジカルな暴力は当然ながらいっさい使わず、もっぱら「言葉の力」に頼りました。

 事の顛末を簡単に紹介しておきます。我が家は、今年一月の中旬に、ワシントンDC近郊にあるアーリントンの今の住居に引っ越しました。家のすぐそばに、「ワシントン・リー高校」という大きな公立高校があるのですが、その高校の建て替え問題が突如として浮上したのです。より正確に言うと、建て替えの話があることは前々から聞いていたのですが、最近その新しい校舎のデザインが、教育委員会に雇われた建築会社から提示されたのです。そしてそのデザインが、どう見ても近隣のコミュニティへの配慮に著しく欠けたものだったのです。従って先週の木曜日は、早い話が、教育委員会に対して文句を言いに行ったのです。近所の数人で連れ合って行きました。

 アメリカの教育委員というのは、大抵の自治体では住民の選挙で選ばれる政治家です。アーリントン郡の教育委員会も例外ではなく、選挙で選ばれた5人の委員で構成されています。従ってこちらの教育委員会の会合というのは、いわば日本の市町村の議会のようなものなのです。アーリントンの場合、その教育委員会の会合は一般市民に公開されており、ケーブル・テレビでも放送されます。多くの市民が議場で傍聴したり、テレビで視聴できるように、教育委員会の会合はいつも決まって夜の7時半から始まります。さらに、アーリントン郡の教育委員会の会合の最初には、住民なら誰でも教育委員に対して意見を述べられる「住民発言の時間」というのがあるのです。一人3分以内と決められていますが、これは本当にいい制度だと思いました。

 ということで、先週の木曜日、アーリントン郡の教育委員に対して、議場で3分間の意見を述べてきました。その日は10人くらいの市民が発言に立ちましたが、僕は4番目くらいでした。ほんの一時間ほど前に、近所の人たちにそそのかされるようにして発言を決めたので、ほとんど勢いだけでした。当然、原稿もなしです。それでもまあ、「もう少しきちんと手続きを踏んで、近隣の住民も納得できる校舎を建てようぜ」という思いは伝わったはずです。また次回も、この件についてもう少し書きたいと思います。



住民のネットワークを支えるメーリング・リスト (2004/03/22)


 昨日の続きです。アーリントン郡の教育委員会で発言しようと決めたのは、あるEメールがきっかけでした。僕たちの町内会では、住民相互の情報交換や議論のために、Yahoo Groups のメーリング・リストを使っています。メーリング・リストとは、指定されたアドレスにメールを送ると、リストに加入している全員に自動的にメールが送られるという便利なツールです。そのメーリング・リストには、現在60人くらいの町内の住民が加入しています。

 先週の木曜日、教育委員会の会議開催当日の午後になってから、そのメーリング・リストを通じてある投稿がなされました。それは、「今日7時半から教育委員会の会合があるので、皆で押しかけて『住民発言の時間』に高校の建て替え問題について訴えよう」というものでした。その投稿があってから、続けざまに何人かが「自分も行く」という意思表明がメーリング・リスト上で行われ、結局町内から8人くらいが議場に集まり、僕も含めて4人が発言に立ったのです。メーリング・リストならではの、まとまりの早さでした。

 町内会のこのメーリング・リストは、とても活発に使われています。我が家はこの町内会に引っ越して来てまだ2ヶ月くらいですが、僕も妻も「ワシントン・リー高校」の建て替え問題では、メーリング・リスト上でかなり積極的に発言しています。そのお陰で、僕たち夫婦のことは町内会に一気に知れ渡ってしまいました。今回の高校建て替え問題が、町内の人たちと深く知り合えるきっかけを作ってくれたことは、まあ良かったのかもしれません。アーリントン郡の教育委員会との戦いはまだ始まったばかりですが、今後も町内のメーリング・リストを武器にして立ち向かいたいと思います。

 この高校の建て替え問題、それでは具体的に何が問題なのか。次回は、それについて書こうと思います。



アメリカの学校建設は土地利用規制に縛られない。 (2004/03/23)


 我が家のすぐそばにある「ワシントン・リー高校」の建て替え問題の続きです。近隣の住民たちが怒っているのは、建て替えそれ自体についてではなく、新しい校舎のデザインがあまりにも住民への配慮を欠いたものだからです。具体的に言うと、現在は2階建ての校舎なのに、建て替え後は5階建てか6階建てになること。スクールバスや、カフェテリアへの搬入車やゴミ収集車などのサービス車両の動線計画が大幅変更になり、これらの大型車両が住宅地を通るようになること。そのゴミ収集車などが停留するサービス・ヤードが、住宅地に面していることなどです。これでは近所の住民は、高層の校舎による圧迫感、採光の問題、大型車両の増加による騒音やほこり、交通安全の問題、毎日ゴミ溜めを見ながらの生活などなどを余儀なくされるのは明らかです。

 アーリントン郡の教育委員会に対する僕の論点の主要な部分は、「この校舎建て替えに伴うEnvironmental Impact Assessment(環境影響評価)をやってくれ」というものです。そうすれば、上に述べたような近隣住宅地への影響がより明らかになり、デザインの変更かあるいは悪影響を緩和する措置を導入しなければならないことが立証されるはずだからです。この校舎建て替えは、30億円以上もかかる巨大プロジェクトです。こんな巨大プロジェクトをやるのに環境影響評価もしないとは、どういうことでしょうか。先週の木曜日にこのことを教育委員会の会議で発言したあと、金曜日には教育委員会あてに、もっと論点を整理した手紙を書いて追い討ちをかけておきました。

 実はアメリカでは、こういった学校建設に伴う問題が結構多いんだそうです。というのは、各地の教育委員会は選挙で選ばれた委員からなるいわば独立した自治組織のため、教育委員会が行う学校建設は、市役所など各自治体が行っている土地利用計画の規制を受けないことになっているからです。要するにアメリカの教育委員会は、早い話がどこにどんな学校を建ててもいいことになっているのです。それが嫌なら、その教育委員を選挙で落としなさいということなんでしょう。

 でもこれは、明らかに何かが間違っています。その証拠にフロリダ州やカリフォルニア州などでは、最近この問題を巡る新たな州法が次々に誕生しています。その州法とは、学校建設が地域の土地利用計画に一致するように、州内の教育委員会と市役所などの自治体との間で協定を結ぶよう義務付けるものです。



避難しない避難訓練 (2004/03/25)


 おとといのことです。僕の勤めるワシントンDCの世銀本部で、避難訓練がありました。その避難訓練は、いつもの訓練とはちょっと違ったものだったのです。午前11時くらいに、「これからシェルター内避難の訓練をしますので、窓やドアは全て締め切って、外気に接している窓からは離れてください」というアナウンスが全館に流れました。そして皆が各自のオフィスからぞろぞろと出てきて、廊下に集まって来たのです。僕も仕方がないので、窓のある自分の個室から廊下に出ました。

 今まで何回か避難訓練をやりましたが、いつもの避難訓練は、エレベーターを使わず階段で一階まで降りてビル外に出るというパターンでした。しかし今回は、ビル内での訓練だったのです。訓練とは言っても、窓を閉めて窓から離れるだけでした。いわば、「避難をしない避難訓練」です。20分くらいして「訓練を終了します」というアナウンスがあり、みんな各自のオフィスに戻りました。

 今回の訓練は、明らかに生物・化学兵器を使ったテロに備えるものでした。ワシントンの中心部に毒ガスが撒かれたり、空中に危険な病原菌を放たれた場合を想定し、外気との接触を遮断してビル内にこもるという避難です。なるほどこういう場合には、外に避難するより、ビル内にいた方が安全でしょう。世銀本部では最近、オフィスに食糧や飲料水を蓄えておくようにという指示も出されています。毒ガスや病原菌の効果が消えるまで、何日もオフィス・ビルから出られないことを想定しているのかもしれません。今回の避難訓練は実に簡単な訓練でしたが、この訓練が役に立つ日が来ないことを心より願っています。



通勤はBMW (2004/03/28)


 世銀では数ヶ月前から、メトロ(地下鉄)での通勤者に限って通勤手当が支給されるようになりました。とは言っても毎月20ドルだけです。我が家から職場まではメトロの駅が6つあり、片道1ドル20セントかかります。従って一日往復で2ドル40セント、月に20日出勤するとして、毎月48ドルかかる勘定です。要するに、通勤手当は実費の半分以下なのです。

 メトロの利用者に通勤手当を支給するのと同時に、世銀のビル内や世銀と契約している職員用駐車場の利用料金が少しだけ値上げになりました。値上げ後のこれらの駐車場利用料は、確か毎月150ドルだったと思います。駐車場を値上げしてメトロには手当てを出すというこの新しい施策は、環境に配慮するために、自家用車での通勤を抑制してメトロ利用を促進しようというもくろみなのです。

 でも、いくらメトロの方が安いからといって、自家用車からメトロに転換させるのは、なかなか難しいかもしれません。特に、ワシントンのメトロは故障が日常茶飯事で全く信頼性がないし、世界でも珍しく渋滞する地下鉄なのですから。アメリカの首都ということで、ワシントンの地下鉄はテロの標的になるという可能性も否定できませんし。

 さて、通勤に関して最近面白いジョークを耳にしたのでちょっと紹介しておきます。

A:「何で通勤しているの?」
B:「自分はBMWで通勤しています。」
A:「高級車で通勤とは羨ましいです。」
B:「勘違いしないでください。BMWとはBus(バス)、Metro(地下鉄)、Walk(徒歩)です。」



階段にカーペット (2004/03/29)


階段のカーペット 我が家の階段にカーペットを敷きました。正確に言うと「敷きました」というよりも、きちんと金具で取り付けてあるのです。当然ながら業者にやってもらいましたが、工事は3時間ほどで終了しました。

 僕の記憶では、こういう階段のカーペットは日本ではほとんど見たことがないような気がします。でもアメリカの家では、結構見ますよ。このあたりも文化の違いでしょうか。

 我が家が階段にカーペットを付けた理由は、ひとえに安全上のものです。木造の階段は、靴下を履いて上り下りするとツルツル滑って危ないなあと思っていました。うちは子供がまだ小さいので、万が一を考えて滑らないようにカーペットを付けたという訳です。



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