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  バングラデシュ(July 2002)



ダッカより (2002/07/29)


ダッカを走るリキシャ  スリランカのコロンボから、バンコック経由でバングラデシュのダッカに来ました。昨日のバンコック発ダッカ行きタイ航空は、出発が1時間半くらい遅れ、さらに悪いことには、ダッカの空港で僕のスーツケースがなかなか出てきませんでした。今まで2度、スーツケースが出てこなかった経験があるので、またかと思って諦めかけました。荷物が到着しなかったのは、いつもどこかで乗り継ぎをしたケースです。今回もバンコックで乗り継ぎをしたので、荷物の積み替えの際に手違いがあったに違いないと、悲観していました。すると、実に最後の最後に僕のスーツケースが出てきました。待つこと約70分でした。ただただいろいろな荷物を載せたベルトコンベヤーだけを見つめて、1時間以上突っ立っていたので、かなり疲れました。

 いつものようにフリーパスの税関を抜けると、待っているはずのホテルの送迎バスが、既に出発した後でした。僕の荷物が出てこなかったせいで、バスは僕を待たずに行ってしまったのです。仕方がないので、タクシーでホテルまで行くことにしましたが、ちょっと不安でした。ダッカにはもう何十回と来ていますが、ダッカの空港からホテルまでは、いつもホテルの送迎バスを利用するので、タクシーに乗ったことがなかったからです。僕は、途上国ではなるべく一人ではタクシーに乗らないことにしています。以前、パキスタンのカラチで誘拐されかけたことがあるし、一人でタクシーに乗ってどこかに連れて行かれたらアウトだからです。昨日のタクシーが、通い慣れた空港からホテルまでの道をそれて知らない道に入った時は、本当にドキリとしました。結局そのオンボロのタクシーは、ガソリンを入れるために道を外れたのでした。無事にホテルに辿り着いたので、こうして書いています。「変なヤツじゃないだろうか」と疑ったりして、昨日の運転手さんには悪いことをしました。



VIPよりワン・ランク上のVVIP (2002/07/30)


 今回ダッカに来て驚いたのは、僕の宿泊しているホテルのセキュリティの厳しさです。ホテルに入る際は、その都度全ての荷物をX線で調べられ、おまけに金属探知機をくぐらないとなりません。まるで、空港のセキュリティと同じです。ホテルの正面玄関前には、「VVIPの滞在のため、セキュリティの強化にご協力ください」というような掲示がありました。「VIP(Very Important Person)」ではなくて、「VVIP」です。「VVIP」というのは初めて目にする言葉ですが、「Very Very Important Person」の略だというのは容易に想像できます。要するに、「VVIP」は「VIP」よりワン・ランク上というわけです。

 その「VVIP」が、今日このホテルに到着しました。そのため今日は一段とセキュリティが厳しく、ホテル中で銃を抱えた軍人やら警官やらを数多く目にしました。ホテルの玄関からエレベーターまでは、普段は見ない赤いカーペットが敷かれていました。彼が到着する頃、僕も彼をひと目見ようと、ホテルのロビーに張り込んでいました。ところが、彼の到着時刻寸前に、僕を含めた一般の宿泊客は、ロビーから追い出されてしまいました。仕方がないので、僕はロビーから少し離れたカフェでお茶を飲んでいました。すると、けたたましいサイレンを鳴らした護衛車に先導されて、その「VVIP」を乗せた車がホテルに到着しました。数分後、その人は赤いカーペットに続くホテルの正面玄関を使わず、脇にある通用門からホテルに入って来ました。万が一に備えて、入り口を変えたのでしょう。あの赤いカーペットは、敵を欺くためだったのでしょうか。彼が入って来たその通用門からエレベーターまで行くには、僕がお茶を飲んでいたカフェの横を通らないといけません。案の定、その人は僕のすぐ横を通り抜けて、エレベーターへと消えていきました。大勢の護衛に囲まれてはいましたが、がっちりとした体格と威厳に満ちた顔立ちのその人を、この目で間近に見ることができました。グレーの三つボタンのスーツをお洒落に着こなしていた「VVIP」とは、パキスタンのムシャラフ大統領その人です。



リポン君の靴磨き (2002/07/31)


 僕が宿泊しているダッカのホテルには、リポン君という靴磨きの少年がいます。いつもこのホテルに泊まるたびに、一度か二度は彼に靴を磨いてもらいます。少年と言っても彼はもう22歳になったそうです。でも、初めてダッカを訪れた5〜6年前からずうっと彼に靴を磨いてもらっているので、どうもその頃の少年というイメージが抜けないのです。靴を磨いてもらっている間、ブロークンな英語を話すリポン君と他愛のない会話をするのもちょっとした楽しみです。昨日も、彼に靴を磨いてもらいました。現在このホテルにはパキスタンのムシャラフ大統領が泊まっているということもあって、昨日の彼との会話は、もっぱらこのホテルに泊まったことのある有名人の話題に集中しました。

 彼は、「コフィ・アナン(国連事務総長)がここに泊まった時は、彼の靴を磨いたんだ。」と言うのです。「それで、コフィ・アナンはいくら払ったの?」と僕が聞くと、「10ドル」だそうです。「彼自身が払ったの?」と聞くと、「いや、秘書が払った。」と言ってました。リポン君の靴磨きには、いわゆる定価がありません。彼は靴磨きが終わるといつも、「As you like(いくらでもいいよ)」と言うのです。それに対して、コフィ・アナンの秘書は米ドルで10ドルを払ったというわけです。僕の記憶する限り、アメリカでの靴磨きの相場は3〜5ドルくらいだったと思います。確かコフィ・アナンがダッカに来たのは去年でした。その時は偶然僕もこのホテルに滞在していて、背筋がピンと伸びてとても姿勢のいいコフィ・アナンとすれ違ったのを覚えています。

 リポン君との会話は続きます。僕が、「クリントンが来た時はどうだった?」と聞くと、「クリントンの靴は磨かなかったけど、あの時はマスコミやクリントンの警備の人やその他のスタッフが大勢アメリカからやって来て、その人たちの靴磨きで大忙しだった。クリントンはいいビジネスを運んできたよ。」ということでした。実はこのクリントンが数年前にダッカにやって来た時も、僕はこのホテルに泊まっていました。その時はクリントンには会いませんでしたが、クリントン一行は飲料用にハワイから大量にミネラル・ウォーターを運んできて、彼らがダッカを去った後、僕達は余ったハワイのミネラル・ウォーターをホテルの人からただで貰いました。  リポン君は続けます。「日本の首相が来た時も、大勢スタッフを引き連れていた。でもあの時は、誰一人として靴磨きに来なかった。」ということです。ダッカを訪れた日本の首相とは、森前首相です。リポン君は、「モリ」という名前も覚えていませんでした。

 そんな会話を交わしているうちに、僕の靴もきれいに磨きあがりました。「さて、いくら払おうか。」と思って、手持ちの「タカ(バングラデシュの通貨)」を出してみました。すると、彼は「できればドルで払って。」と言うのです。「OK。でもいくらにしようかな。」と少し悩んだ揚句、コフィ・アナンの10ドルを意識して結局8ドル払いました。コフィ・アナンが払った金額よりはちょっと少ないですが、相場よりはかなり高いはずです。彼も満足そうでした。さて、現在このホテルに滞在中のムシャラフ大統領一行は、このリポン君にいいビジネスをもたらすでしょうか。



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