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  スリランカ(December 2002)



コロンボ到着 (2002/12/04)


 先ほど無事にスリランカのコロンボに到着しました。今年の6月にブリスベンから世銀に復帰以来半年が過ぎましたが、この半年間で3度目のスリランカです。

 今朝トランジットの成田空港で読んだ朝日新聞に、「スリランカ〜この和平を実らせたい」と題する社説が載っていました。なんという偶然。スリランカでは、シンハラ人の政府軍と少数派タミール人の組織「タミールの虎」が20年近く紛争を続けていました。しかし、今年の2月にノルウェーの仲介で停戦合意が調印されて以来、和平プロセスが進んでいます。朝日の社説にあったように、本当にこの和平を実らせたいです。



ユナイテッド航空倒産不可避で帰路不安 (2002/12/05)


 報道によると、ユナイテッド航空の倒産が事実上決まったようです。実は、今回の出張の帰路はユナイテッドで飛ぶ予定なので、ちょっと不安です。アジア方面への出張の時は、大抵成田を経由して全日空の成田〜ワシントン直行便を利用することにしていました。しかし今回は、クリスマス前の成田空港の混雑を避けようと、いつものパターンを変えて、日本に立ち寄らずにユナイテッドで帰ることにしたんです。報道によると、倒産しても当分は飛行を続けるようなので、まあ飛ぶことは飛ぶようです。倒産しても、きちんと機体整備はしてくれるだろうか。サービスは最初から期待していませんが、安全性への影響が心配です。

 サービスは期待していないと書きましたが、先ほどチェックしたワシントン・ポストのウェブサイトには、この件に関してかなり能天気な誰かのコメントが載っていました。「倒産したら、サービスはこれ以上悪くなりようがない。あとは改善するのみだ」ということです。う〜ん、そういう考え方もあるんですね(僕が思うに、アメリカの航空会社のサービスは初めから最悪なので、倒産しなくてもあれ以上悪くなりようがない)。さてこの倒産、僕にとって吉と出るか凶と出るか。



政治のノルウェー、経済の日本 (2002/12/07)


 僕がスリランカに着いた今週の火曜日に、スリランカのウィクラマシンヘ首相は日本に着きました。ここ数日のスリランカの英字新聞「デイリー・ニュース」では、ウィクラマシンヘ首相の日本訪問のニュースが目立ちます。昨日の一面には、そのウィクラマシンヘ首相と天皇陛下が握手している写真が載っていましたし、今日は彼と小泉首相が並んでいる写真がフロント・ページを大きく飾っていました。

 このウィクラマシンヘ首相、ハンサムで長身で非常に格好いいんです。容貌は、なんかクリントン前大統領を彷彿とさせるものがあります。年齢も50代半ばということで、若々しいです。しかも外見だけではありません。報道で知る限りでは、リーダーシップも抜群です。現在進行中の「タミールの虎」との和平交渉がうまく行っているのは、なんとしても内戦を終わらせようというウィクラマシンヘ首相の強い決意によるところが大きいんだそうです。

 さて、今回のスリランカの首相の訪日を機に、内戦終結後のこの国の復興援助を話し合うドナー会議が、日本で開催されることが決まりました。来年の5月頃のようです。日本は、スリランカの復興援助そして経済発展に主導権を発揮したいようです。

 それはそれで結構ですが、ドナー会議を主催して援助資金を出すだけではちょっと物足りないなあというのが、僕の感想です。と言うのは、今年2月のスリランカ政府とタミールの虎との停戦合意、その後の数度に渡る和平交渉の成功は、全てノルウェーの仲介によってもたらされたものなのです。お金を出すだけではなく、日本もノルウェーのような、積極的な平和外交ができないものなんでしょうか。特にアジアの紛争地域の解決に、日本はもっと関与すべきです。少なくとも今回のノルウェーのやり方から、日本は何かを学ぶべきでしょう。まあ今の日本の政治と外務省じゃあ、無理なんでしょうけど。

 今朝の「デイリー・ニュース」のウィクラマシンヘ首相と小泉首相のツーショットの写真の下には、次のような記事がありました。「スリランカの和平達成に向けて、ノルウェーと日本という2つの国が大きな役割を果たしている。政治はノルウェーが、経済復興は日本が。」

 いつか、「政治の日本」と呼ばれる日が来てほしいです。



多国籍軍を率いる。 (2002/12/08)


 今回のスリランカ出張の目的は、農村部の水供給に関するプロジェクトの準備を進めることです。このプロジェクトは、スリランカ中央州、北西州、そして内戦の主戦場となった北東州で実施する予定です。スリランカでは、今まで都市部・農村部とも国が水供給を担当していました。今度のプロジェクトでは、このシステムを分権型のサービス提供に転換し、州政府の監督のもと地方自治体に水供給の機能を委譲させます。さらに農村部の住民組織を強化し、住民組織が主導して水供給設備の選択(井戸にするか、簡易水道にするか、雨水利用にするか等)を行えるようにするのです。要するに、今まで全て国がやっていたことを、住民主導と自治体の支援によってやってしまおうという目論みです。そういう構造改革の伴うプロジェクトなんです。

 今回の出張のメンバー構成は、僕の他にイギリス人、オーストラリア人、ネパール人、バングラデシュ人と、それに数人の地元スリランカ人が加わっています。一応、僕がチーム・リーダーとしてこの多国籍軍を率いています。



憎しみは憎しみによって止まず、愛によって止む。 (2002/12/09)


 以下のような歴史の話をご存知だろうか?第二次大戦終了後の1951年、各国が参加して「サンフランシスコ平和会議」が開かれました。この会議では、戦後の日本の独立問題や日本への制裁について話し合われたんだそうです。会議の中でソ連の代表は、日本を独立国とすることを認めず、独立国としての自由を制限する何らかの措置を日本に科することを執拗に主張したといいます。西側諸国の中には、この考えに同調するものもあったと聞きます。その中で、スリランカのジャヤワルデネ代表の演説が日本を救ったというのです。

 ジャヤワルデネ代表は、同じアジアの仏教国という立場から、「憎しみは憎しみによって止まず、愛によって止む。」というブッダの言葉を引用して、強く日本を擁護したのです。そして、日本に対するいかなる制裁にも反対し、日本の完全独立を認めて国際社会の一員として迎えるべきだと説いたといいます。このスリランカ代表の演説が効を奏して、日本が独立国として認められたというわけです。

 「サンフランシスコ平和会議」で日本を救った、このスリランカ代表の演説について、僕は最近まで全く知りませんでした。初めて聞いたのは、今年10月にスリランカを訪れた際に、スリランカ政府のある役人に聞かされたときでした。今回のスリランカ訪問でも、同じ話を別の人に聞かされました。どうやらこの話は、スリランカ人の間では結構有名な話みたいなんです。あるスリランカ人は、日本はあの時の恩を感じているから、今スリランカに多額の経済援助を与えてくれるんだろうと言っていました。

 日本でこの話を知っている人は、果たしてどれくらいいるんでしょうか。少なくとも、僕はこれを歴史の時間に習ったという記憶がありません。誰かこの話を学校で習ったという人がいたら、教えて下さい。こういう話は知っておくべきですよね。少なくとも、スリランカを訪れる日本人には知っておいてもらいたいです。そうでなければ、僕のように恥かしい思いをすることになるかもしれません。



連邦国家への道 (2002/12/10)


 スリランカは和平への道を着々と進んでいます。20年近く続いていたシンハリ人政府と「タミールの虎」との内戦状態も、どうやら過去の遺物となることが確実になってきたようです。先週までノルウェーのオスロで行われていた第三回和平交渉も、成功のうちに終了しました。今回の和平交渉では、今までスリランカからの分離独立を求めていた少数民族のタミール人居住地域に自治権を与え、統一スリランカを維持することで両者合意に至りました。これは画期的なことです。

 最終的にどのような統治形態になるかはまだ不透明ですが、各州政府にかなりの自治権を与え、ゆるやかな連邦統一国家を目指すというのが現在のシナリオのようです。参考にできる国はないかと、スリランカ政府と「タミールの虎」双方が、連邦制をしいている様々な国の統治形態を調査し始めた、と最近のスリランカの英字新聞は伝えています。調査の対象になっているのが、カナダやスウェーデン、スイスといった国なんだそうです。個人的にも、国家の統治形態と自治のしくみにはとても興味があります。時間があれば、各国の例を僕もいろいろ調べてみたいです。



体のバランスと心のバランス (2002/12/13)


 ハードな日々が続いています。スリランカ中を駆け回り、タフな交渉とミーティングの連続、その合い間を縫って現場に足を運んでいます。今日も先ほど車で5時間ほどかかって、南部州から戻ったばかりです。

 先日、中央州のキャンディで州政府とのミーティングを終えた後、「ブッダの歯」がまつられているという仏教寺院を訪れる機会がありました。「ブッダの歯」なんて珍しいので、この寺院は観光の名所だそうです。しかしながら、この「ブッダの歯」が一般公開されるのは、毎年8月にひと月ほどだけで、この期間は見物人の長蛇の列ができると聞きました。ということで、「ブッダの歯」にはお目にかかれませんでした。僕は、「そのブッダの歯は、奥歯ですか、前歯ですか、上の歯ですか、下の歯ですか」と聞いたんですが、「左の歯」ということしか分かりませんでした。本物なんだろうか?

 この寺院に入るには、入り口で靴と靴下を脱いで、裸足にならなければいけません。ひと通りの見学を終えて、靴と靴下を受け取った後、僕はすぐその場で靴下を履きなおしました。まず右足一本で立ちながら、左足の靴下を履き、次に左足一本で立ちながら右足の靴下を履く。それを見ていたあるスリランカ人がかなり驚いて、「どうしてそんなに体のバランスがいいんだ?」と聞いてきました。そしてその人は、「自分は体のバランスはあまり良くないけど、心のバランスはいいんだ」と微笑みながら付け加えました。なるほど、多くのスリランカの仏教徒は、このような寺院でお祈りをすることにより、「心のバランス」を整えているようです。僕も、どんな時でも平静でいられるよう、「心のバランス」に気をつけたいと思います。



スリランカ国会に侵入 (2002/12/14)


 数日前のことです。スリランカの某大臣に面会を要求され、急遽スリランカの国会議事堂を訪れることになりました。スリランカの国会議事堂は、コロンボから車で30〜40分の新首都「スリジャヤワルデナプラコッテ」にあります。この議事堂は、日本の援助によって1980年代に建築されました。「サンフランシスコ平和会議で、スリランカ代表の演説が日本を救った」と何日か前に書きましたが、この国会議事堂は、そのお礼として日本からスリランカへのプレゼントなんだそうです。湖畔にたたずむ何とも威厳のある建築物でした。

 さて、大臣との面会を終えた後、国会審議を二階席からしばらく傍聴させてもらいました。ちょうど来年度の予算審議(スリランカの財政年度は1月から12月)が行われていました。議場は、与党と野党が向かい合って座りあうという対決型の配置で、与党側の中央最前列に首相が座り、その脇を固める様に各大臣がやはり最前列に座ります。野党側の中央最前列には、野党の党首が陣取っていました。

 運がいいことに、来年度の予算案の採決の瞬間を見学することができました。採決の様子は、各列ごとに賛成議員が起立をしていくというものでした。一列目の賛成者が起立し、その数を数え終わると次の列に移り、その列が終わるとまた次に移るというのを繰り返していました。全ての列が数え終わると、議長が結果を報告します。ということで、与党の来年度予算案が可決されました。

 もうひとつ特筆すべきは、スリランカの国会では、議員はシンハラ語、タミール語、英語のうち、どれを使って質問や答弁をしてもいいことになっているという点です。同時通訳がすぐさま訳してくれるんだそうです。こういうのも、スリランカという多民族国家ならではで、日本の国会ではちょっと考えられませんね。



エヴィアンを飲む人はナイーヴ。 (2002/12/16)


 途上国に来ると、お腹を壊したくないので、ちょっと値段が高くても飲み水はどうしてもミネラル・ウォーターになってしまいます。スリランカでは、僕はホテルのミニ・バーに入っているフランスの「エヴィアン」を飲んでいます。数ヶ月前に訪れたバングラデシュでも、やっぱり「エヴィアン」を飲みました。ホテルということもあるんですが、この「エヴィアン」がかなり高価なんです。ということで、各地の「エヴィアン(500ML)」の値段をヤフー・ファイナンスの通貨コンヴァーターを使って比較してみました。

1.バングラデシュのホテル 〜 160タカ(331円)
2.スリランカのホテル 〜 215ルピー(268円)
3.成田のコンビニ 〜 160円
4.ワシントンのコンビニ 〜 1.19ドル(143円)

 この中では、バングラデシュのホテルが一番高いんですね。日本やアメリカのコンビニで買う場合の2倍以上です。ホテルは値段を上乗せしているでしょうから、ホテルとコンビニを比較してもあんまり意味はないかもしれません。しかしながら、バングラデシュやスリランカでは、そもそもホテル以外で「エヴィアン」を見つけることが極めて難しいのです。そういう事情があるので、このような比較しかできません。悪しからず。

 さて、以前「エヴィアン」を飲んでいると、「エヴィアンを飲む人はナイーヴなんだよ」って、あるアメリカ人に言われたことがあります。「えっ、どうして?」と聞くと、「エヴィアンを反対側から読んでごらん」と言うのです。「エヴィアン」のスペルは「EVIAN」で、それを反対にすると「NAIVE」となります。なるほど、と納得しました。



将来はスリランカ大統領、今は35歳で副大臣 (2002/12/17)


 ひょんなきっかけで、スリランカ政府の某省の副大臣と親しくなりました。彼はまだ35歳ですが、エネルギッシュでかなり頭が切れ、弁舌鋭く、社会を変えたいという強い志を持ち合わせています。彼の夢は、父親を超えること。実は、彼の父親はスリランカの大統領でしたが、10年程前に「タミールの虎」に暗殺されたんだそうです。彼は、父親の選挙区であるコロンボから国会議員に立候補することを潔しとせず、全く地盤のない貧しい農村部から立候補しました。その結果、その選挙区の全投票数の92%を獲得するという圧倒的勝利で、見事スリランカ国会に送り込まれたのです。そして今は、副大臣。将来は、父親のように大統領になり、父親を超える仕事がしたいと公言して憚りません。聞いているこちらが気持ちよくなるくらい、どこまでもストレートで押してきます。この男、これからも応援していこうと思っています。

 さて、この副大臣、最近、日本大使館からスリランカの「ベスト政治家」に選ばれたんだそうです。そして、日本への研修旅行が大使館よりプレゼントされるので、来年早々にも日本を訪れる予定だそうです。それにしても、大使館っていうのは、こういうことまでしているんですね。でも、彼を選ぶとは、外務省にしては珍しく見る目があると思いました。



蚊も殺さぬスリランカの仏教徒 (2002/12/18)


 スリランカから最後の更新です。あと数時間後には機上の人となります。

 さて、「パンチャシラ」という言葉をご存知でしょうか。僕は「パンチャシラ」というと、インドネシアの建国5原則を思い出すんですが、今回のスリランカ滞在中、この言葉を何度か耳にしました。そもそも「パンチャシラ」とは、サンスクリット語で「5つの徳」を意味するんだそうで、そういうところからインドネシアの建国5原則も「パンチャシラ」と呼ばれているんでしょうね。

 スリランカでは、「パンチャシラ」とはブッダの教えのことなんです。身も心も人間らしくあるために、この「パンチャシラ」は、日々の生活で5つの行いを禁じています。その5つとは、以下のとおりです。

1.殺すな。
2.盗むな。
3.嘘つくな。
4.不倫するな。
5.酒飲むな。

 毎日毎日これを実践すれば、敬虔な仏教徒ということになるんでしょう。

 ところで先日、仕事でスリランカのある街を訪れるために車に乗っていた時のことです。車内に蚊が何匹もいたので、僕は蚊を退治しようと、必死に両手で蚊を叩いていました。ところが、一緒に乗っていた仏教徒のピヤセナさんは、蚊が車の窓に近づくのを見計らったように素早く窓を開けて、蚊を車から逃がしたのです。正に、「パンチャシラ」の教えを実践したわけです。というのは、「パンチャシラ」の一番目の教え、「殺すな」というのは、虫や動物など全ての生き物にあてはまるからです。

 しかし、さすがのピヤセナさんも、「飲むな」という教えだけは守れず、ついついアルコールを飲んでしまうんだそうです。でも、それ以外の4っつは、生まれてから今まで忠実に実践しているということです。僕はといえば、酒は飲むし、虫は殺すし、時々嘘もついてしまいます。やっぱりまだまだ修行が足りません。



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