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  スリランカ(December 2003)



スリランカの農村部を周る。 (2003/12/11)


 今週火曜日の早朝6時にコロンボを発ち、二泊三日の強行軍でスリランカ中央州と北西州の農村部を周って来ました。先ほど、木曜日の深夜ちょっと前にコロンボに戻りました。やはりコロンボ以外では、インターネットは使えませんね。

 この三日間に渡り、僕が担当しているスリランカ農村部の「水と衛生プロジェクト」の現場を訪問し、住民や自治体との対話を重ね、プロジェクトの進捗状況の把握と現場での問題点の発掘に努めてきました。道中の話題はまた改めて書くことにして、今日はもう寝させてください。実は昨日のホテルでは、部屋の壁を這うヤモリの鳴き声のため、あまり眠れませんでしたので。



衛生より衛星 (2003/12/13)


スリランカの紅茶プランテーション スリランカ中央州のヌワラエリアという地域には、紅茶のプランテーションが数多くあります。かつてスリランカがイギリスの植民地だった時代、そういった紅茶プランテーションで茶摘みをさせるために、インドから大量のタミール人が連れて来られました。今も、紅茶プランテーションで茶摘みをしているのは、インドに起源を持つタミール人の女性達です。これら茶摘み労働者とその家族達は、大抵プランテーション内で団体生活をしていますが、その住環境が劣悪なのです。そこで、僕が担当している「スリランカの水と衛生プロジェクト」では、いくつかのプランテーション内の住環境を改善すべく、上水道施設とトイレ建設のための資金を提供しています。

 火曜日にコロンボを出発したフィールド・トリップで、そのプロジェクトが行われている紅茶プランテーションを二つ訪問してきました。プロジェクトは資金を提供するだけではなく、組織の育成や技術面などであらゆる支援を行っています。具体的には、プロジェクトの実施主体となる住民団体の組織化、住民に対する環境や衛生意識の啓蒙と研修、計画・設計・工事・維持管理など技術面の支援、住民組織と自治体との橋渡しなどなどです。まだ始まったばかりのプロジェクトですが、住民達の熱意と、プランテーション会社の経営陣やこの街の市長さんの意気込みで、プロジェクトの成功を確信しました。

 さて、茶摘み労働者の住宅地を歩いていると、大きなパラボラ・アンテナが屋根から突き出ている家がありました。このアンテナは、衛星放送テレビのアンテナだそうです。「劣悪な住環境」と書きましたが、この地域の住宅には水道は絶対にないし、トイレもない家がほとんどなのです。トイレがないのに、衛星放送がある。つまり、「衛生」より「衛星」の方が優先順位が高いんですね。これには、情報に対する人間の欲求の強さを思い知らされました。



演劇で衛生概念を喚起する。 (2003/12/14)


 先週、僕が担当している「水と衛生プロジェクト」が実施されているスリランカ中央州と北西州の村々を訪れました。行く先々で、住民達に大歓迎を受けました。実際の受益者が喜んでくれる姿を見るときこそが、この仕事をやっていて良かったと感じる瞬間です。

スリランカ農村部の少女達 中央州のある村では、いきなり道端で住民達の手づくりによる演劇を見せられました。演じていたのは、みんなこの村の子供や若者達です。シンハラ語は分かりませんが、少しの通訳で大体の劇の内容は把握できました。それは、衛生概念を喚起するための演劇だったのです。劇の中で、不衛生な池の水を飲んだ子供が病気になります。医者に運ばれ、やがてその子は元気になりますが、そういった劇の過程でいろいろなメッセージが発せられるのです。そのメッセージとは、生水は煮沸してから飲むことや、水源にゴミやし尿を流さないこと、トイレの後や食事の前には手を洗うことといったものです。彼らは既にこの演劇を何度も練習し、三度ばかり村のいろんな集会で上演したそうです。僕も、この若い役者さん達に最大級の賛辞を送りました。

 いくら水道施設やトイレを作っても、それだけではなかなか住民の健康状態の改善にはなりません。大事なのは、水源を保護したり、手を綺麗に洗ったりという住民ひとりひとりの身近な生活態度を変えていくことです。そのためには、衛生概念を喚起するこういう草の根の活動が不可欠なのです。でも、識字率の低いこの様な村では、紙に書いたメッセージを回覧しても、どれだけの人が理解するか分かりません。その代わりに演劇の活用です。これなら、みんなが容易にメッセージを受け止められます。

 この演劇を見ながら、子供達の熱演とそれを頼もしげに見る住民達に、僕も大いに勇気づけられました。このような活動を通して、衛生概念はもとより、コミュニティ・スピリットが芽生えていると感じたからです。大人も子供も参加して、みんなが自分達の村のことを考える。このコミュニティ・スピリットの高揚こそが、正にこのプロジェクトが目指しているものなのです。



立つ仏陀、座る仏陀に寝る仏陀 (2003/12/15)


 スリランカの多数派民族シンハラ人の大部分は仏教徒です。ですから、スリランカを旅していると、いろんな所で仏像に出くわします。観光名所となっているような大きな仏像から、街角や道端にひっそりと佇む小さな仏像まで、実に様々な仏陀がいるものです。

 その中で、先日は突っ立ている仏陀を見つけました。思えば、日本の仏像は座っているものばかりですよねえ。だから僕には、立っている仏陀は実に新鮮に見えました。まだ写真でしか見たことがありませんが、スリランカには横たわって休んでいる仏陀の像もあるそうです。シンハラ人の運転手チュダンさんによると、立っている仏陀は人々に説教をしているもので、座っている仏陀は瞑想をしているものだそうです。そして横たわっているのは、やはり休んでいる仏陀だそうです。

 そう言えば僕が小さい頃、「奈良の大仏はいつたったでしょう?」というなぞなぞがありました。皆さんご存知のように、このなぞなぞの答えは「奈良の大仏は座ったままで、まだ立っていない」というものです。これは、「建った」と「立った」が同じ読み方だから成立するなぞなぞですね。それでは、直立していたスリランカのあの仏陀はいつ「たった」のでしょう。こっちの方は「建った日」と「立った日」が同じはずですから、歴史の問題にはなっても、なぞなぞにはなりませんね。



スリランカのクリケット・フィーバー (2003/12/17)


 クリケットというスポーツをご存知でしょうか。日本やアメリカでは全く人気のないスポーツですが、イギリスの旧植民地国を中心に一部の国では熱狂的なファンの多いスポーツです。以前よく訪れたパキスタンやバングラデシュでもとても人気があり、テレビのスポーツ中継はクリケットばかりでした。こういった国では、よく道端や広場で子供達がクリケットをして遊んでいるのを見かけました。僕が一年間住んでいたオーストラリアでもこのクリケットは大人気でした。

 さて、現在僕が滞在しているスリランカでもクリケットは凄い人気です。スリランカの多くの男の子達の夢は、将来クリケット選手になることだそうです。スリランカは以前クリケットのW杯で優勝したこともあり、現在も世界ランキング第3位ということで、実力の方も世界トップクラスなのです。そのスリランカに、現在イギリスのクリケット・チームが来ています。テレビでは連日、ご本家イギリスと地元スリランカのクリケットの試合を放送していて、どこに行ってもクリケット中継ばかりやっています。スリランカ政府のカマールさんの話では、スリランカ人の実に50%がこのテレビ中継を見ているはずだそうです。

 僕はこのクリケットのルールが全然分かりません。何度テレビで見ても、分かりません。ボールを投げてバットで打つところは野球に似ているような気もしますが、打っても走ったり走らなかったり、四角いダイヤモンドもないし、野球とは全く違うようにも思えます。カマールさんの説明によると、クリケットでは前後左右に360度、どの方向に打ってもいいんだそうです。テレビで見ている限りでは、投手の投げるボールは野球より全然遅いし、バットも平べったく幅の広いものなので、クリケットのボールを打つのは野球でバットにボールを当てるよりはかなり簡単そうに見えます。いつか機会があれば、スリランカでクリケットをやってみたいです。この次来た時は、世銀チームとスリランカ政府チームのクリケットの試合でも企画してみようか。



スリランカを救う忍者 (2003/12/18)


 コロンボの街を車で移動していると、時々「NINJA」と書かれている看板を目にします。「NINJA」=「忍者」ですから、これは日本に関係するある商品の宣伝看板なのです。ちょっと強そうな名前ですが、何の商品名か想像できますか?

 その商品とは、あの昔懐かしい渦巻状の「蚊取り線香」です。日本の蚊取り線香が、スリランカでは「NINJA」という商品名で売られているのです。「忍者が蚊を退治する」とは、悪くない命名だと思いませんか。

 ご存知のようにスリランカなど熱帯の国々では、マラリアやデング熱など蚊を媒体とした病気に感染して命を落とすことも珍しくありません。地元の新聞によると、今月に入ってからコロンボ市内でもデング熱の患者が報告されているそうです。日本では夏しか使わない蚊取り線香ですが、年中暑いスリランカでは、蚊取り線香の需要は一年中途切れないはずです。「忍者ハットリ君」ならぬ「忍者カトリ君」の大車輪の活躍が必要なゆえんです。



メリー・クリスマス in コロンボ (2003/12/19)


 ようやくスリランカでの仕事が終わりました。いつもながら最後の数日はレポートの追い込みとミーティングの連続で、これを書いている今は疲労困憊です。でも、疲労の中にも我ながらいい仕事をしているなあという充実感があります。

 今日の最後のミーティングでは、僕の担当しているプロジェクトの政府レベルの関係者を集めて、プロジェクトの現状と問題点、その問題解決の方向性を提示しました。ミーティング後には、出席者ひとりひとりと握手をし、感謝の言葉と別れの挨拶を交わしました。この時期の別れの挨拶は、コロンボでも「メリー・クリスマス」です。そう言われて、「ああ、今は12月なんだ」と改めて思い出しました。暑いスリランカで季節感もなく、すっかり忘れていましたが、もうすぐクリスマスなのですね。せめてクリスマスは家族とゆっくりしたいです。ということで、これからワシントンに帰ります。



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