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  スリランカ(June 2005)



雨のコロンボより (2005/06/06)


 昨夜遅くスリランカのコロンボに着きました。空港に着いたときは熱帯地方特有の大雨。今朝も激しい雨がありました。スリランカは雨季に入ったばかりだとのこと。それを聞いたら、スリランカの島の形が雨粒に見えました。津波で家を失った人たちにとっては、厳しい季節の始まりかもしれません。




スリランカがモデルの国連ゲーム (2005/06/08)


Food Force スリランカに来る途中の機内で読んだ「ファイナンシャル・タイムズ」によると、WFP国連世界食糧計画)が製作した「Food Force」というゲームが大ヒットしているそうです。このゲームはWFPの食糧援助をテーマにした教育用のゲームで、「Sheylan(シェイラン)」という架空の島国が舞台になっています。天災と内戦によって引き起こされたシェイランの食糧危機を、WFPの援助チームの一員として救済するシミュレーション・ゲームです。

 このシェイランというのは、セイロンを想起させる名前からしても、明らかにスリランカがモデルになっているとしか思えません。世銀でスリランカを担当している僕としては、「一度このゲームを体験しておく必要がある」と感じ、早速挑戦してみました。その感想は、実際の国際機関のオペレーションと、途上国への援助活動の複雑さをよく現したゲームだと思います。もうちょっと詳しく書くと、ゲームは六つの異なるミッションで構成されていました。この全てを成し遂げなければシェイランの飢えた人々を救えません。その六つのミッションとは、次のようなものです。

1.AIR SURVEILLANCE (空からの調査)〜プレイヤーは、航空機を操縦して、食糧援助を必要としている難民の数や位置を空から把握します。

2.ENERGY PACS (栄養のある補給用食糧の製造)〜プレイヤーは、一定の資金制約のもとで、穀物、豆、食用油などを組み合わせて栄養価の高い補給用食糧を作ります。

3.AIRDROP (空中からの食糧投下)〜プレイヤーは、他の輸送手段が遮断されている遠隔地に、空から狙いを定めて食糧を投下します。

4.LOCATE AND DISPATCH (食料の調達と搬出)〜プレイヤーは、輸送コストや食糧需要などを考慮して、世界中から食料を調達します。

5.THE FOOD RUN (食糧の輸送)〜プレイヤーは、反政府ゲリラや地雷などに対処しながら陸路により食糧を運送します。

6.FUTURE FARMING (長期的食糧自給)〜プレイヤーは、シェイランの食糧自給を長期的に確立するために、教育、農業、雇用などの総合的プログラムを作ります。

 どうですか。実に面白そうでしょう。ちなみに僕のスコアは、39,563,582点でした。「Food Force」のサイトで紹介されているハイスコアに比べたら、はるかに低い点数です。一番難しかったのは、ミッション3の空中からの食糧投下でした。興味があるひとは、「Food Force」のサイトからダウンロードして挑戦してみてください。英語のゲームですが、是非とも日本語版も作ってほしいですね。

Food Force



食器を使わないスリランカの農村 (2005/06/09)


 昨日、今日とスリランカの北西州、中央州の農村部を周って来ました。昨日のお昼は、北西州のポラサクラマという村の人たちが用意してくれた、スリランカの伝統的な農村の食事をいただきました。メニューは、魚のカレー煮、カボチャ風野菜のカレー煮、豆のカレー煮、ジャックフルーツのカレー煮、そして白い御飯。どの料理もカレー味で、しかも激辛なんです。コロンボから同行したスリランカ政府のランジットさんも辛いと言っていたから、相当に辛かったはずです。ランジットさんによれば、スリランカ料理はどれも辛いけれど、都会よりも農村部の料理の方が、より辛いのだそうです。

 さて、その農村の激辛ランチでびっくりしたのは、全く食器を使わないこと。上記の料理は、皿の代わりにバナナの葉かハスの葉に載せて食べるのです。スリランカ人は、右手でこねるようにカレーと御飯を混ぜ合わせ、そのまま右手を口に運んで食べます。彼らはスプーンもフォークも使いません。でも、僕はちょっと抵抗があったので、特別にお願いしてフォークを貸してもらいました。飲み物もコップを使わず、直接ココナッツの切り口に唇を寄せて飲みます。こうすると、食器なんて全然使わなくて済むのです。食事のあとは、空になったココナッツの実とハスの葉を捨てるだけ。これらは有機物だからやがて土になるでしょう。こうすると、食器を洗う水も必要ないし、やっかいな排水も出ません。実に自然と一体化した食事でした。この次は自分も手で食べてみようか。

ハスの葉に載せたスリランカのランチココナッツで喉を潤す



EBONY & IVORY (2005/06/10)


象の頭蓋骨

 おとといの夜に泊まったスリランカ中央部のホテルのそばに、野生の象がいる「ミネリヤ・ナショナル・パーク」があります。せっかく来たのだからと、プロジェクト現場を訪れる前に早起きして、昨日の早朝このパークに行きました。パークの入り口には、何故か象の頭蓋骨が陳列されていましたが、改めて象の頭の大きさを思い知らされました。頭蓋骨だけで僕の娘たちの背丈くらいはあるのです。

 ガイドによると、今は雨季なので象たちはジャングル奥深くに潜んでいて、なかなか姿を現さないそうです。水を求めて池や湖まで出てくる乾季には、象の群れを見ることも可能だそうです。ということで、パーク内のジャングルを一時間半くらいジープで走りましたが、たった一頭の象を見ただけでした。まあ、一頭でも見られただけ幸運だったのかもしれません。その象に10メートルくらいまで接近すると、小さな小さな牙が生えていることが分かりました。長い鼻の付け根に「Ivory(象牙)」が輝いていたのです。

 さて、象は一頭しか見られませんでしたが、このナショナル・パークには沢山の「Ebony(黒檀)」が生息していました。象と黒檀の共生というのは、正に「Ebony & Ivory」の世界なわけです。ポール・マッカートニーとスティービー・ワンダーが「Ebony & Ivory」をデュエットしていたのは、もう何年前のことでしょうか。確かあの曲は、EbonyとIvoryを黒人と白人に例え、人種間のハーモニーを訴えた曲でした。スリランカは今、その人種融和を通して津波復興と恒久平和を成し遂げられるかどうかの重大な局面を迎えています。

Ebony(黒檀の木)ミネリヤ・ナショナル・パークの野生の象ミネリヤ・ナショナル・パークの野生の象



ビールを飲んで津波復興 (2005/06/11)


 スリランカで最もポピュラーな地元のビールと言えば、「ライオン・ラガー」です。味もまずまずなので、僕も毎日のように飲んでいます。このビールのラベルには勇ましいライオンの顔が描かれていますが、先日ふとビンの裏側を見てみたら、裏ラベルには以下のように書いてありました。

HELP US TO HELP THEM REBUILD (彼らの復興を助けるために協力を)
Donation of Rs. 1 to Tsunami victims (津波被害者に1ルピーの寄付)

 要するに、ライオン・ラガーが一本売れるごとに、このビール会社は1ルピー(約1円)を津波被害者に寄付するということです。仮にスリランカで年間一千万本のライオン・ラガーが飲まれたとしたら、一千万円の津波復興資金が集まる計算です。スリランカでは、ハイネケンやカールスバーグといった外国のビールも手に入りますが、この裏ラベルを見てからは、僕はライオン・ラガーだけを飲むことに決めました。

スリランカのビール「ライオン・ラガー」津波被害者に1ルピーの寄付をするという「ライオン・ラガー」の裏ラベル



スリランカの後ろ姿美人 (2005/06/13)


サリーを着たスリランカ女性の後ろ姿

 スリランカ女性の民族衣装はサリー。前を歩く二人の後ろ姿があまりに美しかったので、思わず撮影してしまいました。特に、素肌をさらした背中が綺麗ですね。この二人、前から見ても凄〜く美人でした。



スリランカを東奔西走 (2005/06/15)


 先週末からスリランカのあちこちを走り回っています。農村地方の水供給プロジェクトの現場めぐりや津波復興状況の把握で、コロンボと地方を行ったり来たりの日々が続きました。北西州、中央州、南部州、また中央州と、文字通りの東奔西走、南船北馬。疲労もピークに達しています。

 南部の津波被災地では、あの悲劇から5ヶ月以上経った今でもテント暮らしの人々がたくさんいるという現実に、少なからぬショックを受けました。一方、津波被害を受けなかった地方にも貧困が存在しており、僕は引き続きそういったスリランカ農村部の水道整備を担当しているのです。こっちのプロジェクトは、かなりうまく進んでおり、今までは水汲みに毎日何時間も費やさなければならなかった人たちの家々に、初めて水道が引かれています。農村部の水道普及は、住民の健康状態を改善するだけではなく、今までの水汲み時間を経済活動に充てられるので貧困削減にも繋がるのです。このプロジェクトの受益者たちのような笑顔が、一日も早く津波被災者たちにも戻りますように。

農村部水供給プロジェクトの受益者たち水道が来た来た



スリランカに溢れる日本の中古車 (2005/06/16)



 何年か前にスリランカで、「八戸東洋(株)」と車体に書かれた古いマイクロバスを見かけたことがありました。そのことを記事にしたら、しばらくして僕の故郷・八戸のある新聞記者からメールをもらったのです。その記者さんは、八戸にある「八戸東洋(株)」という会社のお偉いさんに、このマイクロバスのことを尋ねてくれたそうです。そうしたら、その会社の方は、自社の古いマイクロバスがスリランカで利用されていることにとても驚いたそうです。


 スリランカでは、日本から来たとしか思えないこのような中古車を、頻繁に目にします。特にトラックやバスなどの業務用車両は、日本で使われていた当時の社名を車体に残したままでスリランカを走っている場合がとても多いのです。今回もスリランカのあちこちで、そんな中古車をたくさん見かけました。おそらく、日本のどこかの中古車買取業者が、こういった車をスリランカに輸出しているのではないでしょうか。




ランの花咲くスリランカよさらば (2005/06/17)


 ここ数日のコロンボ中心部は暴動続きで、泊まっていたホテル周辺の道路が閉鎖され、車でホテルに帰れない日もありました。それというのも、LTTE(通称「タミールの虎」)が支配している北東部の津波復興を、政府と LTTE が協同で進めるいわゆる「Joint Mechanism」という提案をめぐって政治が紛糾しているからです。昨日は、この「Joint Mechanism」に反対している連立政権内の政党が政権を離脱し、さらなる暴動で夜間外出禁止令が出されるのではないかという憶測が飛び交っていました。そんな中、コロンボを脱出してきたのです。この国はどうなっていくのでしょう。「Joint Mechanism」の行方は、今後の僕の仕事に大きく影響を及ぼす可能性があるため、しばらくはスリランカの政治から目が離せません。

 さて、今回の「スリランカ通信」の最後は、例によって「花シリーズ」です。今回も、スリランカのあちこちで咲いていた花々を撮影してきました。珍しい花もありますよ。中でも上段の一番左は、とても珍しいランの一種だとスリランカ人が言っていました。このランは、椰子の木に寄生するように咲いていました。花の名前に詳しい方、どの花でもいいのでまた教えてくださいね。





スリランカの夜明け? (2005/06/28)


 大勢の命を一瞬にして奪ったあの津波から半年が過ぎました。被災者のための義捐金が世界中から集まったものの、復興事業それ自体はこの半年の間に順調に進んだとは言えないでしょう。ただ、この6ヶ月目を記念するかのように、スリランカから大きなニュースが飛び込んできました。スリランカ政府とLTTE(タミールの虎)が、協同で津波復興を進めるという「Joint Mechanism」に調印したのです。これに反対している政治勢力の存在や、第二のマイノリティであるイスラム系住民の処遇を巡ってまだまだ紆余曲折が予想されるものの、これは大きな大きな一歩です。これを機に、今後のスリランカの津波復興と和平プロセスの進展に拍車がかかることを期待します。僕自身も忙しくなるかもしれません。

 数日前のニューヨーク・タイムズには、「Six Months After (あれから6ヶ月)」と題したビル・クリントン氏の投稿が載っていました。ご存知のようにクリントン氏は、国連の津波復興特別大使としてアナン事務総長から任命を受けました。その投稿の中でクリントン氏は、最近インドネシアのアチェで訪れた津波被災者のキャンプでのエピソードを紹介しています。そこで彼は、被災キャンプで生まれたばかりの赤ん坊の名付け親になってくれと頼まれたそうです。クリントン氏がつけた名前は Dawn (夜明け)。彼は、「力を合わせて、この子に新しい夜明けを与えなければいけない」と結んでいます。これはアチェの話ですが、「Joint Mechanism」が調印されたスリランカでも、夜明けが近いことを願っています。



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